スピアーズの木田晴斗は「純粋に、活躍する」のを目指す。今季初白星へ強気に勝負。
自分も、相手も、過大評価をしなければ過小評価もしない。等身大の視線で物事を捉える。それが木田晴斗というラグビー選手なのだろう。
12月10日、東京・秩父宮ラグビー場。所属するクボタスピアーズ船橋・東京ベイの11番をつけ、リーグワン1部の開幕節に臨んだ。
昨季直接対決で3勝の東京サントリーサンゴリアスに、26-52で敗れた。
その4日後、自身やチームのパフォーマンスについて正直に振り返る。
「試合の週の身体のコンディションはよかったんですけど、一言で表すと、(当日は)硬かったです。いろいろ考えすぎる、自分がよくないパフォーマンスをする時のメンタル状況でした。クボタがしんどいラグビーをしてしまい、そのなかで自分も体力を使い、焦りにつながって…と。もうちょっと落ち着いて、身体の力を抜いてプレーすればよかったかなと」
悔やまれるシーンは、14-40と差をつけられて迎えた後半8分頃にあった。
この時、木田は、敵陣ゴール前でパスを受けて左端を快走。日本代表でもある相手WTBの松島幸太朗のタックルに身体を当て、振り切り、インゴールへ滑り込もうとした。
しかし最後の最後に、身体の一部をタッチラインにつけてしまった。トライを獲り損ねた。
身長176センチ、体重90キロの24歳は、その皮膚感覚を明かす。
「ボールを持った瞬間、(松島との)1対1になると思いました。内(中央方向)ではなく外で勝負。(タックルは)外せた感じではあったのですが、後から思ったより身体のバランスが崩れて、足をつけたい場所につけられなかった。それと、トライになる寸前に『いけたかな…』と思ってしまった部分が…。(今後は)そこで気を抜かず…というところを意識したい。また、自分の強みのフィジカルを活かして内に行っても、トライできたかな、とも思います。次の試合では、もっと強気に、縦に、勝負したいです」
話題は対戦チームにも及んだ。サンゴリアスのFBには、新加入でのチェスリン・コルビがいた。身長172センチ、体重80キロと小柄ながらも、ばねと加速力を長所に南アフリカ代表に入ってワールドカップ連覇。世界を駆ける30歳と同じフィールドに立った木田は、何を感じたのだろうか。
そう問われればまず「きれは、テレビで観ている方がすごかった」と切り出しつつ、「ハイボールが、すごかった」。高い弾道のキックを空中で奪い合うシーンにあって、相手との身長差を覆して捕球するコルビに感銘を受けた。
「空中にボールがある間にどちらが速くボールにたどり着くか、というところで、(コルビには)ジャンプの素早さがあるんじゃないですか。到達点(の高さ)ではなく、ボールに対して素早く跳ぶことが大事かなと。下(落下地点)に行ってから跳ぶより、斜めに(遠い間合いから)跳んだほうが、速い」
昨季は初めてフル参加したリーグワンで、ベストラインブレイカーを受賞。プレーオフ決勝では勝ち越しトライを決め、チーム初の日本一に喜んだ。そのまま日本代表へ初選出された。
参加した代表合宿は、足首のけがと感染症の影響で途中離脱。9月にワールドカップ・フランス大会が始まる頃には「切り替えていた。もう、次に進んでいた」。いまはシーズン後の日本代表入り、来年6月に予定されるイングランド代表戦への出場を念頭に置きながら、まず、チームでのパフォーマンスアップに集中する。
「目の前の試合で、純粋に、活躍する。去年もそれがあって、いい活躍ができた。ひとつひとつに集中し、チームで任されている役割をこなしていけば、結果はついてくる」
チームを率いるフラン・ルディケ ヘッドコーチは、13日まで日本代表次期ヘッドコーチの選考レースに参加していた。木田が取材に応じたのは、エディー・ジョーンズが新指揮官となったと発表された翌日のことだった。練習前にあったミーティングでは、ルディケ自らその件に言及したという。
ボスの合否が決まるまでの日々について、木田は述懐する。
「そこまで気にはしていなかったのですが、(選考過程について)耳には入ってくるので『どうなんだろう』と、意識が向いてしまったところは正直、ありました。でも、本当に目を向けるべきはそこじゃない。ジャパンは後からついてくるもの。そう、改めて思い直し、プレーしていきます」
16日には三重交通Gスポーツの杜鈴鹿で、三重ホンダヒートとの第2節に先発。今シーズン初白星を争う。