代表監督に関する面談は12月にずれ込み。スピアーズのフラン・ルディケは「言い訳なし」。
話題の人が集まっている。
国内リーグワンで昨季王者のクボタスピアーズ船橋・東京ベイが12月4日、千葉・船橋市内で取材機会を設置。2人の新外国人選手との契約、フラン・ルディケヘッドコーチの参加する次期日本代表指揮官の選考過程について、当事者たちが話した。
チーム主催の記者会見では、ウェールズ代表95キャップ(代表戦出場数)でFBのリアム・ウィリアムズ、ニュージーランド代表90キャップでHOのデイン・コールズが出席した。その脇に座ったルディケは、両選手への期待を口にした。
「スピアーズのシステムに合っていて、スキル、リーダーシップがあり、Xファクターとなりうる選手(を探していた)。2人とも経験値があり、判断力も長けている。スキル、スタンダードが高い。確実にチームを助けてくれます」
リーグに「カテゴリーC」と区分される他国代表経験者の3枠が、様変わりした。
指揮官に名前を出されたオーストラリア代表76キャップでSOのバーナード・フォーリーが5シーズン目を迎えるなか、元ニュージーランド代表48キャップでCTBのライアン・クロッティが昨季限りで退団。入れ替わるように加わったのがウィリアムズだった。ルディケはこう見る。
「リアムは相手からすれば何をしてくるかわからない。ライン参加がうまいし、カウンターアタックもしっかりしてくれる。彼はハイパントを捕るのもうまい。フォーリーなどからのキックをしっかり掴んでもらいたい」
かたやコールズは、いわば緊急補強の形だ。
2021年からプレーする南アフリカ代表64キャップでHOのマルコム・マークスが、今秋のラグビーワールドカップフランス大会で負傷。勝負を左右するスクラムの要がリーグワンで登録できなくなったのを踏まえ、石川充ゼネラルマネージャーが動いた。
コールズが在籍していたニュージーランドのハリケーンズとは、長らく協調関係を結んでいた。同クラブにいるダン・クロノ氏を客員コーチに招いてスクラムを教わったり、現地へ指導を受けに行ったり。
その流れから、石川はクロノを介してコールズの状況を確認。フランス大会出場後に現役を退きそうだったのを踏まえ、クロノへ「(コールズに)アプローチを」と頼んだ。
コールズとのサインにより、強化予算はやや膨らんだと石川は言う。ただ、こうも述べる。
「(予算管理は)シミュレーションを作ってやっているので(問題はない)」
ルディケは「HOのイメージを変えた選手。セットプレーの要になると言われるHOにあって、彼はFW第3列のように動く。アタックを教える田邉淳アシスタントコーチは、彼をプレーシートに混ぜ込むことを楽しみにしているのではないか」と喜ぶ。
コールズは1シーズン限りの契約だ。リーグワン発足からここまでの2年間で、単年契約を結んだ「カテゴリーC」の選手を擁して優勝したクラブはひとつもない。
前例を覆し、連覇を果たせるか。
それがスピアーズに課されたチャレンジだ。
ルディケが答えた。
「確かに外国人選手には継続して滞在してもらい、その人の持つ経験、価値を見出せるのが理想です。短期契約の選手には、チームへのコミットメントが完ぺきではなくなる恐れがあります。ただ、ずっと我々のスクラムを見てくれているダン・クロノは、コールズがスタンダードを高く保つのに重きを置く、何があってもチャンピオンの振る舞いをする、周りをドライブする選手だと教えてくれました。単年でも全く問題ないです」
ルディケは2016年就任。南アフリカのブルズを率いてスーパーラグビーで優勝した実績を持つ。普段は誠実さと大らかさで知られ、この日は会見後もメディアに応じた。
話題は、日本代表の次期ヘッドコーチ候補となっている件だ。
統括団体の日本ラグビーフットボール協会から選考業務の一部を委託されたマーケティング会社は、今夏、ルディケに連絡をした模様。まもなくオンラインでミーティングを実施。続けて対面での面談が11月に予定も、それが12月にずれ込んでいた。
当該の面談は、リーグワンの開幕直前になるという。ルディケが説明した。
「協会とのコミュニケーションはクリアです。まずスピアーズのシーズンに集中したうえで面接ができることに感謝しています。面接は試合日とは違う日にあります。他の候補者がいる。面接から24時間以内に結論が出ると聞いています」
この秋のルディケは、公の場に顔を出すたびにこの件を聞かれている。その都度、煙たがらずに思いを述べる姿には、チームの岩爪航広報も「助かっています」と感心する。
ルディケは微笑む。
「メディアの皆様にも感謝しています。私がスピアーズに集中している旨も書いてくれていますから」
石川は、ルディケのミーティングの日取りが変わった経緯にやや首を傾げながら「色々な想定はしています」。ルディケが日本代表のヘッドコーチとなった際の人事についても、先んじで考えていると語った。
「いつかこういう時(体制を見直す)は来るので、次のこともしっかり考えています。本人(ルディケ)も国代表を率いたいと思っている。次のヘッドコーチは大変だとは思いますが、彼はハードワークする人ですから大丈夫」
オレンジのジャージィをまとうスピアーズは、10日に開幕を迎える。ホストとして東京・秩父宮ラグビー場に登場する。
東京サントリーサンゴリアスは、スピアーズにとって昨季のレギュラーシーズン、プレーオフで計3度、勝った相手だ。
旧トップリーグ時代から通算して5度も日本一に輝き、一昨季まで2シーズン続けて決勝の舞台に上がっている名門でもある。こちらも日本代表の新ヘッドコーチの候補と目されるエディー・ジョーンズは、このクラブのディレクター・オブ・ラグビーとして在籍する。
ルディケは強調する。
「(頭の切り替えは)イージーです。スピアーズに集中する。大事なのはしっかりと開幕節をスタートさせること。協会側ともそのようにコミュニケーションが取れています。言い訳なしで、どちらにも注力できています」