背番号16から6へ。安恒直人(早大3年)は、「求められていることに、まずフォーカス」
100回目の早慶戦(11月23日)では後半44分、試合終了直前までピッチに立ち続けた。
憧れの地、国立競技場でのプレーを振り返り、「緊張していましたが、試合に入ると楽しめました」と話す。
早大の安恒直人(やすつね・なおと)は、その試合でFLとして先発した。
11月5日の帝京大戦に続いての6番の起用。10月14日の青学大戦では2番を背負い、HOでの先発だった。
今季開幕からの3戦はベンチスタート。試合終盤にHOの位置へ入った。
福岡高校から入学した3年生。幼稚園の時、ぎんなんリトルラガーズでラグビーを始め、中学時代まで所属した。高校でSOとしてプレーしていた男は、早大入学後、FLに転向。
2年時からHOに挑戦し、昨季は全国大学選手権の3試合も含め、計6試合に出場した。
そして今季は、前述のようにHO、FLとして全試合に出場中。ポジションを問わず、プレータイムが延びているのは信頼を得ているからだろう。
12月3日におこなわれる100周年の早明戦でも6番で先発する。
背番号に関係なくチームに必要とされているのは、自分の役割を理解してプレーしているからだ。
「自分には、一つひとつのブレイクダウン、コリジョンのところで勝つことを求められています。ボールキャリーで前に出続ける、ディフェンスでも前で倒す。それを意識してプレーしています」
FLは仕事が多い。適応するのは簡単ではない。
そんな状況の中で期待に応えられている理由を、「最初からすべてのことができるわけではないので、まず、コーチから言われている自分の役目を果たすことにフォーカスしています」と語る。
BKからFW第3列へ、フロントローを経て、いま再び第3列。
大学入学時から体重は20キロ以上増えたから、運動量はもともとバックローとしてプレーする選手と比べて足りないと自覚している。
「もっと上げないといけない」と向上を誓う。
2番を背負い、先の早慶戦でも何度もボールキャリー、チームに勢いを与えた佐藤健次とは同期。2年時、同じタイミングでHOに転向したから、スローイングなど共に練習に励み、仲がいい。
それだけに、常に世代トップの選手である佐藤の力を誰よりも理解している。
これまではいつも、どちらかが先発、どちらかがベンチスタートとバトンをつないでいたから、同時にピッチに立つことはなかった。
しかし自分がFLでプレーすることになり、ふたり一緒に出場できるようになった。
「あらためて健次の凄さを感じています」と笑う。
「健次と別のポッドで動いているのですが、いつも健次の方で前へ出てくるので、僕のサイドは、相手ディフェンスが下がったところで攻められるのでやりやすい」
いろんなポジションを経験したことで、自身の知見が増えている。
例えばスクラム。HOとしての経験値が、PRのお尻に肩を当てたときに生きる。
スクラム担当の仲谷聖史コーチから教わったことに、「いつもやっていることと何かひとつ違えば押される」というものがある。
それを肝に銘じてフロントローと効果的なコミュニケーションを取り、パックをより強固なものにする。
いまも練習では、スクラムに入り、ラインアウトのスローイングに取り組む。
HOとして自分がどこまでやれるか向上心を持って日々を過ごしていたから、そこでとことんやってみたい気持ちは正直いまもある。
「でも、やっぱり長くプレーできるなら、ポジションはどこでもいい、と思っています」
自分に求められていることに徹底してチャンスと信頼を得た男は、実は、複雑さも愛している。
「例えば、HOならスクラム、スローイングなど、いろんな仕事がある。任されることが多いと嬉しいんです」
172センチ、97キロ。
ムチムチした体躯と笑顔が躍動した早慶戦同様、早明戦でも、赤黒の背番号6が国立競技場のピッチを駆け回る姿が見られるか。
紫紺の重戦車相手に、スクラム、フィールドプレーと、働く場所は多い。