国内 2023.11.06

奮闘の早大、「色んな形でアタックができた」。15点差に迫るも、帝京大が全勝キープ。

[ 向 風見也 ]
奮闘の早大、「色んな形でアタックができた」。15点差に迫るも、帝京大が全勝キープ。
後半、帝京大PR平井半次郎が突き進む。タックルするのは早大SO久富連太郎(撮影:松本かおり)

 11月5日の秩父宮ラグビー場(東京)、2試合目は全勝同士の注目カードだった。昨季1位で大学選手権2連覇中の帝京大が、同3位の早大を迎えた。帝京大は前年度の選手権決勝で、早大を73―20と下していた。ただ、この日の最終結果は36―21。帝京大が勝利したなか、早大も手応えを掴んだ。

 14点差を追っていた前半終了間際、早大は相手のノータッチキックを自陣22メートルライン付近右で処理する。FBの伊藤大祐(示に右)が中央あたりでパスを受けると、前方のスペースへキック。弾んだ球を自ら掴んで再び蹴り、新人NO8の松沼寛治のフィニッシュを促した。直後のコンバージョン成功で14-7とした。

 総じて、中盤からの攻撃で数的優位の場面を作った。帝京大の反則にも助けられ、多くのチャンスを生んでいた。

 後半には、注力してきたモールからのトライなどで食い下がり、28分、敵陣中盤左ラインアウトから中央、左とボールを動かした。タッチライン際で待っていた、LOの村田陣悟がトライ。直後のゴールも決まり、24−14から24−21となった。帝京大のリードを10点から3 点に縮めた。

 早大、大田尾竜彦監督の述懐。

「きょうは策に溺れないことを意識しました。色んなもの(作戦)は準備しましたが、まずは今年1年間、さらに去年の負けから積み上げて来たものを大事にしよう、と。その結果、色んな形でアタックができた」

 身体衝突でも引けを取らぬ局面を増やし、過去の対戦と比べて点差を縮めた。もっとも、目指していた白星を逃したのも確か。好機でのミスが悔やまれた。伊藤主将は、肩を落としていた。

「それなりにいい準備はしましたけど、まだまだ僕自身も、チームも100パーセントはやり切れていない。そこを自問自答しながら、仲間にも厳しい指摘をしながら、もっと高みを目指して、もう1回、(帝京大と大学)選手権でやれるように頑張りたいと思います」

 帝京大は終始エラーと笛に苦しみながら、スクラムの優位性と要所での集中力で競り勝った。

 後半31分には敵陣22メートル線右で、相手ボールスクラムをプッシュ。ペナルティーキックを獲得した。最後は同ゴール前右のラインアウトから展開し、FLの奥井章仁副将のトライ(34分)などで帝京大31-21早大とした。インジャリータイムの41分には、自陣深い位置でのターンオーバーをWTBの高本とむの2トライ目に繋げた。

 帝京大は全勝をキープした。相馬朋和監督は「早稲田大学さんが粘り強く素晴らしいプレッシャーを与えてきてくださったおかげでこういったゲームをすることができました」と総括した。

 HOの江良颯主将は猛省した。

「厳しいなか、勝ち切れたことは大きな収穫です。そのなかで僕たちの課題、修正点が見つかった。対抗戦中盤(5戦目)にこういうゲームができたことは、僕たちにとって大きく成長できる分岐点になる」

 対抗戦Aでは各クラブとも2試合を残すのみだ。

 帝京大は11月19日、秩父宮で昨季2位の明大と全勝対決をおこない、早大は23日、東京・国立競技場で慶大と対峙する。 

【筆者プロフィール】向 風見也( むかい ふみや )
1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとなり、主にラグビーに関するリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「スポルティーバ」「スポーツナビ」「ラグビーリパブリック」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)。『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(共著/双葉社)。『サンウルブズの挑戦』(双葉社)。

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