ワールドカップ 2023.10.28

死闘が予想されるNZ×南アのW杯決勝 新たな歴史的ショットは生まれるか

[ 編集部 ]
死闘が予想されるNZ×南アのW杯決勝 新たな歴史的ショットは生まれるか
2015年W杯の決勝、ドロップゴールを決めるNZのダン・カーター(Photo: Getty Images)


 ラグビーワールドカップではこれまでいくつもの名勝負やドラマが生まれ、過去9回の決勝のうち4試合は、最終スコアが6点差以内の接戦だった。そして、1995年と2003年のファイナルは延長にもつれる死闘となり、熱く語り継がれてきた。

 2023年大会の決勝、ニュージーランド×南アフリカも手に汗握る歴史的一戦になりそうだ。

 激しいフィジカルバトル、スクラム、空中戦、衝撃のカウンター、スピードスターの躍動……、見どころはたくさんあるが、勝敗を分けるかもしれないキーポイントのひとつは、ゴールキックの出来だ。

 連覇を狙う南アフリカのハンドレ・ポラードはゴールデンブーツの持ち主で、前回大会の得点王。今大会はけがの影響でオリジナルスコッドの33人枠には入っていなかったが、チームに負傷離脱者が出たため追加招集され、3試合で9本のゴールキックをすべて成功している。準決勝では2点ビハインドで迎えた残り時間約2分の場面で約50メートルのショットを決め、劇的な逆転勝利をチームにもたらした。対ニュージーランド戦では史上3番目に多い得点(149点)を記録しており、決勝の会場となるスタッド・ド・フランスでは2017年に失敗したのを最後に14回連続ゴールキック成功という安定ぶりだ。

常に冷静で経験豊富な南アフリカのハンドレ・ポラード(Photo: Getty Images)

 一方、ニュージーランドの10番をつけるリッチー・モウンガは今大会これまで、ゴールキック成功率50%と調子が悪い。それでも、鮮やかなパスや鋭い走りのブレイクで何度もチャンスを生み出し、ピンポイントのクロスキックでも仲間のトライを演出してきた。ニュージーランドはBKのバレット兄弟(15番のボーデン、12番のジョーディー)も優秀なキッカーであり、息詰まるショット合戦になっても役者はいる。モウンガは「これまで何度もプレッシャーがかかる試合を経験してきた。チームのために自分の仕事をするだけだ」とコメントした。

 キックティーを使わず、歴史的なショットが生まれる可能性もある。
 ワールドカップではこれまで、優勝を引き寄せる劇的なドロップゴールがいくつかあった。

今大会期間中、キック練習をするNZのリッチー・モウンガ(左)とボーデン・バレット(Photo: Getty Images)

 1995年大会は南アフリカとニュージーランドの決勝で延長にもつれ、ジョエル・ストランスキーの伝説的ショットで南アフリカ中が熱狂となった。1999年大会で優勝したオーストラリアは準決勝で南アフリカと死闘になり、スティーブン・ラーカムが約48メートルのドロップゴールを決めて延長戦を制し、その勢いのまま頂点に立った。2003年大会は開催国オーストラリアとイングランドが決勝でぶつかり、17-17で迎えた100分(延長)、イングランドのジョニー・ウィルキンソンが利き足ではない右のブーツで劇的なドロップゴールを決め、母国に初めての優勝カップを持ち帰った。そして、2015年大会の決勝では、ニュージーランドのダン・カーターが4点差だった終盤の70分に40メートルのドロップゴールを決めてオーストラリアを突き放し、優勝している。

 ちなみに、南アフリカのポラードはテストマッチで過去4度ドロップゴールを決めており、そのうちの3回はワールドカップで記録したもの。一方、ニュージーランドのモウンガはクラブシーン(スーパーラグビー)では決めたことはあるが、テストキャリアでは一度もドロップゴールを蹴ったことがない。仲間のボーデン・バレットはテストマッチでは3度ドロップゴールで得点している。

 2023年10月28日(フランス時間)の大勝負、どんなドラマが生まれるだろうか。

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