ワールドカップ 2023.10.27

NZも充実布陣で頂上決戦へ。レタリック先発復帰で2度のW杯優勝知るホワイトロックは控え。

[ 編集部 ]
NZも充実布陣で頂上決戦へ。レタリック先発復帰で2度のW杯優勝知るホワイトロックは控え。
アーロン・スミスのリードでハカを舞うオールブラックス。いざ、ファイナルバトルへ(Photo: Getty Images)


 ラグビーワールドカップの王座奪還を狙うニュージーランド代表“オールブラックス”が、いよいよ頂上決戦に臨む。相手は、100年以上の長い歴史の中でいくつもの名勝負を繰り広げてきた宿敵で、前回大会のチャンピオンでもある南アフリカ代表“スプリングボックス”。どちらも過去3度の優勝を誇り、パリ郊外サンドニのスタッド・ド・フランスで現地時間10月28日、勝った方が最多優勝記録更新となる。ラグビーに対して並々ならぬ情熱と誇りを持つ偉大な2強だ。

 ワールドカップでは過去5度対戦し、オールブラックスの3勝2敗。しかし、決勝で激突したのは1995年大会の1度だけで、地元のジョハネスバーグで戦ったスプリングボックスが延長にもつれた激闘をジョエル・ストランスキーのドロップゴールで制し、人種問題を乗り越え新たな未来を目指そうとする南アフリカの国民に歓喜と希望をもたらした。

 オールブラックスは、2015年大会の準決勝でリベンジして先に3度目の優勝を果たしたが、国民的に、28年前のジョハネスバーグの悔しい光景は忘れていないはずだ。1995年大会で準優勝を経験しているオールブラックスに対し、スプリングボックスは過去3回の決勝進出で一度も負けたことはなく、まさに難敵となる。

 オールブラックスのイアン・フォスター ヘッドコーチは、「この2チームは長い間宿敵だ。ワールドカップの決勝で激突するのは2度目であり、前回(1995年)の決勝は壮絶なものだったことは誰もが覚えているし、今回もすばらしい試合になることを願っている。私たちはお互いを大いに尊敬しており、国として彼らのプレーぶりに多大な敬意を払っている」とコメントした。

 準決勝からのスターティングメンバー変更は1人だけで、先週のアルゼンチン戦で4番をつけたオールブラックス歴代最多キャップ保持者のサム・ホワイトロックはベンチで待機となり、同じく世界最高峰LOのブロディー・レタリックが替わって先発となる。

 リザーブには、ベテランのタイトヘッドPRネポ・ラウララが新たに名を連ねた。

サム・ホワイトロック(中央)など何人かの選手にとってNZ代表でプレーする最後の試合になる(Getty Images)

 決勝はセットピースが大きな鍵となりそうだが、オールブラックスは今大会これまで、スクラム成功率93.9%、ラインアウト成功率97.2%と安定している。対する南アフリカも屈強な男たちをそろえてセットピースには自信を持っており、死闘をにらんでリザーブには7人のFWを入れてきた。
 相手のベンチ構成を受けてフォスター ヘッドコーチは、「人々はさまざまな戦略を試みる。彼らには彼らのプレー方法があり、我々には我々の方法がある。おもしろくなりそうだ。(セットピースは)我々はパワーで対抗するというよりテクニックで対処しなければならないと思っている。ネポは非常に強力なスクラメイジャーであり、経験豊富だ。サム・ホワイトロックのような選手もベンチにいるので、我々は大きな自信を持っている」とコメントした。

 BKに変更はなく、これまで8トライを挙げてレジェンドたちの記録に並び、ワールドカップ1大会最多トライの新記録樹立が期待されるウィル・ジョーダンも先発する。テストマッチ通算30試合出場で31トライを挙げている25歳のWTBは、準決勝のハットトリックを含め4試合連続でトライを決めるなどノッている。

 10番で先発予定のリッチー・モウンガが負傷しているとの一部報道があったが、指揮官は「メディカルスタッフからはそのようなことは聞いていない。彼は大丈夫だ」と答えた。

 先発15人の合計キャップ数は「981」(平均約65キャップ)で、同「987」の南アフリカとほぼ同じ。試合登録メンバー23名の中に100キャップ到達者は4人おり、レタリック、ホワイトロックのほか、SHアーロン・スミスとFBボーデン・バレットもセンチュリオンズだ。これに主将のFLサム・ケインを加えた5人は、2015年のワールドカップ決勝でもプレーした選手たちである。もし今週末の決勝でオールブラックスが勝てば、2011年大会でも活躍して金メダルに輝いたホワイトロックは史上初めてワールドカップで3回優勝した選手になる。

 ディフェンスコーチのスコット・マクラウドは、相手のフィジカルの強さを認め、「南アフリカの脅威のひとつはターンオーバーからすばやくプレーする能力であり、彼らにその機会を与えたくない」と警戒する。また、南アフリカが得意とするキッキングゲームにうまく対処することも勝利への重要ポイントとみており、「彼らは空中にボールを上げて取り返すのが非常にうまい。ボールを奪うとワイドに展開してスペースへ運び、一気に攻め込む。我々は空中戦で勝つ方法を詳細に検討していく」とコメントした。

 今週末のパリは雨が降る可能性もあるが、オールブラックスのゲームプランに影響があるかという質問に対しては、「ノー。そうは思わない。我々は自分たちがどのようにプレーしたいのかを知っており、濡れた場所でも機能するスキルセットを訓練してきた」と自信を持つ。

 そして、キャプテンのケインは、「我々は肉体的にも精神的にも多くの準備をしてきた。自分たちを信じて決勝に臨み、良いプレーをするだけだ」とコメント。世界ランキング1位だったアイルランドを準々決勝で倒したときと同等のパフォーマンスを発揮する必要があるかどうか訊かれ、「正直に言えば、もっと良くなる必要があると思う。毎週、我々は勢いを増しており、土曜日にはディフェンスでもアタックでも最高の状態で臨む必要がある。今年最高のパフォーマンスを出せれば、良いチャンスが得られるだろう」と語った。

批判も浴びた苦しい時期を乗り越え、オールブラックスを力強くけん引してきたサム・ケイン主将(Getty Images)

<ニュージーランド代表 決勝 登録メンバー>
1.イーサン・デグルート
2.コーディー・テイラー
3.タイレル・ロマックス
4.ブロディー・レタリック
5.スコット・バレット
6.シャノン・フリゼル
7.サム・ケイン(主将)
8.アーディー・サヴェア
9.アーロン・スミス
10.リッチー・モウンガ
11.マーク・テレア
12.ジョーディー・バレット
13.リーコ・イオアネ
14.ウィル・ジョーダン
15.ボーデン・バレット

16.サミソニ・タウケイアホ
17.タマティ・ウィリアムズ
18.ネポ・ラウララ
19.サム・ホワイトロック
20.ダルトン・パパリィイ
21.フィンレー・クリスティー
22.ダミアン・マッケンジー
23.アントン・レイナートブラウン

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