満点はつけない。冨岡周[関西学院大/CTB]
関西学院大は関西リーグを第3節まで終え、5年ぶりに開幕3連勝。ここまで昨季の下位チームと戦い、取りこぼしはない。
第2節では、同志社大を破った立命館大にも快勝した。
チームの好調を支えるのは、12番の松本壮馬、13番の冨岡周(とみおか・あまね)の両CTBによるディフェンスだ。
就任3季目の小樋山樹監督は言う。
「2人のディフェンスの貢献度は飛び抜けて高いです。松本は前に出られるタイプで、冨岡はスペースを埋められるタイプ。良いバランスです」
最終学年を過ごす冨岡はしかし、秋のパフォーマンスに納得がいかない。
「個人としては春の方がディフェンスは上手いことできていたと思うので」
理由は明確だ。
「春は詰めるべきところで詰められたり、ディフェンスで前に出ることにチャレンジできてました。でも秋はどうしても抜かれたら嫌やなという気持ちがあって…。最後のシーズンだし、それでピンチになったらと思うと、あまり前に出られない」
それでも、松本が飛び出した際のスペースを埋める動きや味方が抜かれた時のバッキングなど、高い危機察知能力を武器に渋く光る。
「自分が目立つというより、いかに点を取られないようにディフェンスできるか。味方の動きを見て、抜かれそうなところがあれば遠くても走る。止める可能性を少しでも増やしたいと思ってます」
目立たずとも、チームに貢献する。その信条は、1学年下の相棒を語るときにも垣間見える。
「松本は良い選手ですし、できる限りのびのびやって欲しいと思ってます。コミュニケーションを取らなくても、松本がいけると思って前に出たら自分がリンクして詰める。まだまだできてないことが多いので、対応したいです」
ディフェンスに強みを見出したのは御所実のときだ。もともと得意ではなかったが、「自分は足が速かったり、特別な能力があったわけでもないので、できることが少なかった。御所はディフェンスのチームなので、そこを磨こうと」。タレント揃いの御所にあって、自分が生きる道を探した結果だった。
しかし、大学ではそのディフェンスに苦しんだ。2年、3年とシーズン中に足首の不調と手の中指骨骨折でいずれも手術を要し、試合に出られない日々は長かったが、レギュラーを掴みきれない根底の課題はそこだった。
「御所は詰めるディフェンスではなくて、流して流して外で止めるというのを繰り返す。なので、ここ(関学)のディフェンスに慣れるのに時間がかかりました。それで出られない期間が長くなってしまった」
克服して迎えたのがこの春。それだから、秋にまた同じ課題に直面しているのは納得いかないのだ。
そもそも、冨岡はいつでも自分に厳しい。「今日は良いプレーだったなと思うことはない」とハッキリ言う。
「周りからどんなに良い評価を受けても、自分に満点つけることはないです。その(良い)プレーがその日だけで終わってしまったら意味がない。常に成長できるように。足りない部分はたくさんあるので満足はしないです」
「自分はU17の近畿代表にも選ばれてません。高校代表に選ばれたのも最後の最後。周りの人たちが常に自分よりも良いプレーをしていた。それは大学に入っても同じで、石岡(玲英/法大)や稲葉(聖馬/大東大)だったり、高校代表で仲良くなった廣瀬(雄也/明大)や谷口(宜顕/東海大)だったり。みんなキャプテンになりましたし、刺激をすごくもらってます。その人たちに負けたくない。だから満足はしないです」
この競技を始めたのは、3歳上の兄・青(あおい)の影響だ。青は関西学院高等部でキャプテンを務め、関西学院大でもプレーを続けた。
ちなみに妹の日和は流経大の1年生。石見智翠館ではキャプテンだった。
「兄は運動音痴で野球やサッカーの体験入部で何もできなかったそうで(笑)。ただ、ボールを持って走ることは誰でもできる。それでラグビーを始めて、自分も自然とやるようになりました」
高校は、兄とは別の道に進んだ。
「関学に行きたかったけど、賢くなくて(笑)。それならラグビーの強い学校に行こうと。その時に花園で見た御所の竹山くん(晃暉/現埼玉WK)がすごくカッコよかった」
2年時から主力に。3年時は全国選抜大会と花園で準優勝を遂げた。
全国舞台で結果を残してきただけに、大学選手権に一度も出場できていない現状はもどかしい。
昨季のチームは終盤に失速した。下位に位置した関西大、摂南大に連敗し、ほぼ手中に収めていた全国行きを逃した。
スタンドで見ていた冨岡は「慢心や奢りがあったと思います。もう関大に負けるのは嫌です」。
10月15日の第4節は、その関西大とぶつかる。
チームを全国に連れて行くまで、関西制覇を成し遂げるまで、自分に満点はつけない。