【再録・解体心書②】秋に、会いましょう。ディラン・ライリー
歓喜の翌日はベスト15の表彰式に出席、数日の休みを経て日本代表の別府合宿に合流した。
ライリーにとっては、パナソニック以外で初めて参加する日本のチーム。まずは練習時間の違いに驚いた。パナソニックの全体練習長くて2時間。一方の日本代表は、1日3部練習も珍しくない。
「パナソニックより、強度も時間も激しくて長い。慣れるまで2~3日かかりました。ジャパンのスタイルはスピードを活かしたい自分の考えと似ています。もっとフィットネスを上げて、最後までスピードを落とさないプレーをしなくては」
合宿では、同じポジションのラファエレ ティモシーや中村亮土と、コミュニケーションをとった。
「今回の合宿の一番の目的は、短い時間でチームになること。私も積極的に他の選手と交流することを心がけていました」
代表入りを希望しながら、昨年のコロナ禍で帰国、居住年月を満たせず選考から外れた選手もいた。パナソニックの選手たちは、コロナ禍での厳しい環境をクリアしての代表入りだ。ライリー自身、母国には昨年3月以来、15か月帰国していない。
「きつい部分もありましたが、代表になりたいという目標がしっかりしていたし、親も応援してくれたので、問題なく過ごせました。何よりガンツ、コーニー(コーネルセン)と仲間がいたことが支えになった」
オフの時間は有効に使われた。3人で「ザ・ブランク・コレクティブ」というブランドを立ち上げたのだ。
「3人ともクインズランド出身で仲がいい。去年はたくさん時間があったので、何か始めたいね、と、ちょうど1年前の6月に立ち上げました。役割はきっちりと分かれているわけではないのですが、僕が写真を撮って、コーニーがウェブデザイン、ガンツがまとめ役」
バッグはすでにオンラインで発売され、パナソニックの選手たちも愛用している。特徴は取り外しの効く「仕切り」が何枚もついていること。遠征に出ることも多い、彼ら自身の経験をもとに考え出された。
「デザインに関しては、3人で話し合いました。試合が終わった後、東京に出かけることもある。一般の人も、出張で仕事が終わってジムに行くこともあるでしょう。仕切りを使って、自分の使いやすいようになればいいなと」
ブランド名も「買ってくれた人が自由に使えるキャンパスのように」と、ブランク(空白)という単語を入れた。現在はダッフルバックが主だが、将来的にはバックパックやアパレルにまで広げたい考えだ。
スタッフによると3人はそれぞれ個性が分かれており、最年長のコーネルセンはスマートで落ち着きある長男タイプ。ガンターはよく喋る陽気なガキ大将。同い年のライリーはシャイでもの静かな性格だという。パナソニック同様、日本代表でも揃って出場することもありそうだ。
二人が参加した今回の欧州遠征は、テレビの前で応援する側に回る。
「日本代表がどういうラグビーをするのか、実際に経験しました。厳しい練習を経てきた仲間が勝ってほしいと、心から願っています。私も今回の合宿で、ジェイミーからいくつか課題をもらいました。秋には代表として試合に出たいので、その前にまだ努力しなくては」
秋まで太田と熊谷で汗を流す日々が始まった。それでも目指していたサクラは、手の届くところにある。飯島GMも期待をかける。
「大きくて速くてディフェンスもいい。もう一つ、顔もカッコいい(笑)。すごい奴はカッコいいんです。スター性もあるし、世界でもトップレベルのアウトサイドCTBになれる可能性がある」
秋の日程発表が待ち遠しい。