【再録・解体心書②】秋に、会いましょう。ディラン・ライリー
「当時はスーパーラグビーが目標でしたが、チャンスがなかった。次のレベルに進みたい気持ちが強かったので、トライアルの話がきたときは迷いませんでした」
当初、日本に関しての知識はそれほどなかった。
「高校時代から対戦して知り合いだったガンツ(ガンター)が日本にいたので、電話してどんな様子か聞きました。何よりガンツ自身が日本での生活を楽しんでいた。未知の場所に行く際、知り合いのアドバイスは心強いものです」
’17年11月に来日。12月に正式に契約する。
「オーストラリアでは、そこまでラグビーについて深く考えたことはありませんでした。パナソニックに来て、いろいろな選手と話してトレーニングする中で、プロとして自分がどう成長すべきか学びました。
頑健な体躯に、天性のスピード。スキルの吸収も早かった。’18年のトップリーグデビューを目指していたが、開幕直前の東芝との練習試合で膝に大ケガを負う。’19年1月から始まったカップ戦に出場し、同年秋のリーグ戦でデビューした。
昨季はダミアン・デアリエンディ(南ア代表)、今季はハドレー・パークス(ウエールズ代表)と、世界のトップクラスのCTBとコンビを組んだことで、成長が促進された。
「インターナショナルレベルの選手とペアを組めたことは、私にとって貴重な経験でした。試合に出るたび、新しい発見がありました。彼らは経験豊富で、コミュニケーションをとってくれるので、最初からやりやすかった。はじめのうちは彼らのアドバイスに徹して、徐々に自分のプレーを出していきました」
今季のトップリーグでライリーの出色のプレーを挙げるなら、決勝・サントリーサンゴリアス戦で前半5分、SOボーデン・バレットのパスをインターセプトしてそのままトライした場面だろう。
「あのときはパナソニックのラインアウトをサントリーがターンオーバーして、こちらがプレッシャーを受けている状況。サントリーはボールをワイドに動かしてくると予想していました。
ボーデンにプレッシャーをかけようと思って飛び出したら、ボールが浮いているのが見えた。自分のタイミングで取れると判断したので、思い切って奪いに行きました」
序盤でのインターセプトは、7点差以上の重圧を相手側に与えた。
「ロビーさんは“インターセプトも技術”と言います。あの場面、かなり確信を持って行っていた。バレットはランニングに長けた素晴らしい選手ですが、スタンディングパスが狙い目だったのかもわからない」と飯島GMは見る。
「決勝はいいスタートが切れましたが、その後、やらなくてはいけないことがたくさんあった。それをやったことが結果につながった」
後半に追い上げられたものの、31-26でチームとして6季ぶり、トップリーグで最後の王者に輝いた。
「優勝したのは、U20州代表の試合以来です。一流選手と一緒にプレーして優勝できた。その間隙は格別でした」