新コーチ、リキ・フルーティが見る日本代表の進歩。
天王山への準備が始まった。
ラグビー日本代表がトゥールーズの練習拠点に訪れたのは、現地時間9月30日の昼頃だ。
施設内のポールが立っていない芝に三々五々、集まり、楽しげに身体を動かす。
規定により冒頭15分のみとされた報道陣への公開時間中は、選手が列をなして歩きながらの準備運動、寝転びながら深く筋肉を伸ばす動き、2人ひと組になってのストレッチに時間を費やした。
10月8日には、スタッド・ド・ラ・ボージョワールでアルゼンチン代表とぶつかる。
参戦しているワールドカップ・フランス大会での、プールDの最終戦にあたる。ここまで2勝1敗の日本代表にとっては、勝てば2大会連続での決勝トーナメント行きを決められる一戦となる。
「ゲームプランについて話すのは難しい」
報道陣に応じるのはリキ・フルーティ。技術指導を担当するアシスタントコーチだ。
大会前まで好調だった南米の雄にどう挑むか。作戦に触れない範囲で答えた。
「アルゼンチン代表は素晴らしいチーム。世界のラグビーチームのなかでも、防御面のスタッツ(数値)が高い。ただ、いわば『ファイナル』の舞台で勝ち切りたい。自分たちのやることにフォーカスし、自分たちの考えるプランを遂行できるようにしたいです」
この日のトレーニングへの参加選手は、33名中32名だった。流大の姿はなかった。
初戦からSHとして2試合続けて先発した副将は、9月28日のサモア代表戦の直前に出場を回避。ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの説明によれば、ふくらはぎのけがが診断されていた。
現在の状態やいかに。フルーティはそう聞かれ、周りに目配せする。
会見場の隅に立っていた広報担当者が首を横に振るのを受け、スマートに応じる。
「自分も見なかったので、ちょっとわからないです」
ニュージーランド出身で現役時代は日本でもプレーしたフルーティは、日本代表へは今年、入閣した。
意識するのは、「ディテール」。圧力下でもパス、タックルのテクニックが正しく遂行できているか、つぶさに見る。トニー・ブラウン アシスタントコーチによる攻撃戦術を遂行しきるための、基盤を整えている。
28日のサモア代表戦では、28-22で勝利。ハイテンポに攻めながら、相手にボールを渡す割合が「30パーセント台」だったと話す。
8月まで6戦あった強化試合ではミスが多かったため、その数値は「40~50パーセント台」。ただし、この時期から果敢にチャレンジしてきた結果、素早く正確な組織的アタックの完成度が高まりつつあるという。フルーティは続ける。
「キッキングゲームをしっかりして相手を背走させる。速いラグビーをする。そうして大きな選手を疲れさせる。サモア代表戦ではそんなプランがありました。結果、スピードを上げながら精度よくプレーできた。選手が自分たちの役割、責任を理解しているのが大きいです。セットプレーからのファーストフェーズも各自が動きを理解していたことで、精度が上がっています」
歩んだ道のりは正解だったと胸を張るべく、アルゼンチン代表戦への準備を進める。