情熱的な初ドロー。ポルトガル代表のパフォーマンスを主力選手が振り返る。
メインスタンド上段の記者席に、ドン、ドンと固いものを叩くような音が響く。
きっと、約3万人超のファンの多くが飛び跳ねていたのだろう。なかでもポルトガル代表のファンは、西日のさす芝へ熱唱と絶叫を届ける。
9月23日、スタジアム・ド・トゥールーズ。ロス・ロボスことポルトガル代表は、ワールドカップフランス大会の予選プール2試合目に挑んでいた。
今回は、2007年の第6回大会以来2度目の出場だった。 9月16日、スタッド・デ・ニースでの初戦では、前回4強入りのウエールズ代表に8-28と敗れた。前半のスコアは3-14と、爪痕を残していた。
トゥールーズでぶつかったのは、ジョージア代表だった。セットプレーが得意で、最近では組織的な攻撃にも活路を見出す東欧の雄だ。
いざ試合が始まったらしばらく、ジョージア代表がエリア、ポゼッションとも制圧した。
特に、FBのダヴィド・ニニアシヴィリが魅した。空いたスペースへ鋭いキックを蹴り込んだり、中盤からの攻めで鋭い走りとパスを重ねたり。
ポルトガル代表のWTBを務めたハファエリ・ストルチは、このように反省する。
「彼(ニニアシヴィリ)はいい選手。簡単にキックを蹴られてしまっていた。我々に弱みがあった」
しかし、ポルトガル代表は耐えた。ジョージア代表がミスを重ねたのにも助けられ、ハーフタイムを終えてのスコアを5-13とした。
さらに後半に入ると、ポルトガル代表がリズムを取り戻す。
前半37分に受けたイエローカードのため数的不利を強いられながら、5分からの約3分間は効果的に攻めた。敵陣10メートル線付近で、接点の周りへ果敢に仕掛けた。ラインブレイクを決め、向こうのハイタックルを誘った。8-13と追撃した。
人数を五分にして迎えた9分頃には、自陣10メートルエリア左のラックでターンオーバーを決めた。一気に右へ展開した。手薄な防御網をえぐり、敵陣22メートルエリアまで進んだ。
この時の攻撃を、ストルチは「一貫して私たちが示してきたもの」と表現する。
その攻めこそエラーで終えるも、その直後にも好機を掴んだ。ここでは鋭い仕掛けで相手防御の反則を誘った。13分、ペナルティーゴールで11-13と差を詰めた。
17分には、中盤の連続攻撃からストルチが魅する。
SOのジェロニーモ・ポルテ—ラのオフロードパスへ駆け込み、接点周辺の防御と入れ違うような形で約40メートルを駆け抜けた。これで2本目のトライを決めた。さかのぼって前半34分にも、約40メートルを走破していたのだ。
直後のコンバージョン成功もあり、ポルトガル代表は18-13と勝ち越した。ストルチは続ける。
「いつもディフェンスを突き破ろうとしている」
最後はジョージア代表に追い付かれた。18-18で迎えたラストワンプレーでは、ペナルティーゴールを外した。かくして初勝利はお預けとなったが、黒星以外の結果で終えたのは今回が初だった。進歩の証を示したと言える。
この試合で、両軍最多の18タックルを決めたのはジョゼ・マデイラ。ポルトガル代表のLOだ。
自陣ゴール前で相手に差し込む一撃を放ったり、中盤で絶ったまま相手からボールをもぎ取ったりしていた。攻めても低姿勢の突進で、防御の裏側へ抜け出した。肉弾戦で奮闘した。
殊勲のマデイラは、いい試合をしながら勝ちを逃したことを「複雑な感情だった」と振り返る。そのうえで、自身が身体を張り続けられたわけをこのように述べた。
「答えは簡単。スタジアムの応援に助けられたからです。それと、この瞬間に力を出すため、チーム全員が懸命に努力してきたのです」
取材エリアでは、元フランス代表アシスタントコーチのパトリス・ラジスケヘッドコーチらの分析と努力を讃える主力格もいた。
ポルトガル代表が示した挑戦的なスタイルの裏には、選手の首脳陣への信頼があった。