【トップイーストリーグ】日々前進のマインドで、連覇を。東京ガス・鈴木達哉主将が引っ張る
世界の目がフランスに集まるこの週末。
ワールドカップの始まりに合わせるかのように、トップイーストリーグ(社会人)も開幕する。
昨シーズン同リーグを制し、トップウェスト、トップキュウシュウの王者との3地域社会人リーグ順位決定戦でも優勝したのが東京ガスだ。
王者は、9月10日の秋田ノーザンブレッツ戦で2023-24シーズンのスタートを切る。
見つめているのは、2季連続での2タイトル奪取だ。
今春のトップイーストリーグ春季交流戦トーナメントでも頂点に立ち、好調を維持しているチームを率いているのは、昨年に続いて鈴木達哉主将(FL・NO8)。今季が加入7年目で、攻守にパンチあるプレーを連発する好選手だ。
手にしたい結果を得た昨季は、多くのベテラン選手が前季限りで引退したシーズンだった。
戦力面、経験値を考えれば、苦しい状況があった。
しかしその中で優勝を手にした足跡を振り返り、鈴木主将はチームのマインドセットの変化について話す。
「少なからず、年長者に頼ってきたところがあったと思います。しかし、その方たちが引退し、若手も含めて誰もが『変わらなければ』と意識を変化させたのが良かったと思います」
その前年(2021-2022シーズン)、ヤクルトレビンズに勝てなかった悔しさも、選手たちの闘争心に火をつけた。
最初からうまくいったわけではない。
主将は、「経験の少なかった選手たちが春シーズンから試合に出て、経験を重ねることで力をつけたことと、意識の変化が重なりました」と、階段を一段ずつ昇った日々を回想する。
攻守両面で、より攻撃的に。『アグレッシブアタッキング』を掲げたチームは、シーズンの深まりとともに結束した。
自身もチームの先頭に立つのは初めてという難しいシーズン。主将は、空気を大事にした。
ラグビーが好きで取り組んでいる選手ばかりだ。グラウンドに来る時間が憂鬱なら、良い成果は得られない。
「ラグビーを楽しめる空気を作ろう、と。その中で本気で競争する。そして、勝つことでもっとモチベーションをあげていこうと考えました」
ピッチに立てば、中瀬真広氏(前監督)が自分を主将に指名した理由を体現し続けた。
「体を張れる選手の象徴としてプレーしてほしい、と言われたので、そういうプレーを徹底しました」
28歳のリーダーのそんな姿勢に、「自分も頑張らなきゃ、と思ったよ」という先輩がいた。
「俺も頑張る」と体を張ってくれた先輩、仲間、後輩も。
「山岡さん(篤樹/SH)、宗像さん(仁/SO)や、鈴木健也(PR)らも、すごくサポートしてくれました」
みんなでチームを走らせている感覚が心地よかった。
鈴木主将は茗溪学園、慶大と活躍してきた実力者だ。
前へ出るパワーは一級品。大学卒業時はトップリーグチームからも勧誘を受けた。
そんな逸材が東京ガスに入社したのは、高校、大学の先輩にあたる阿井宏太郎さんから、「ラグビーも仕事も100でやれるチーム」と聞いたからだ。
「どちらか、でなく、どちらも、という環境に惹かれました」
「実際、ラグビーでリフレッシュすることで仕事にもいいマインドで取り組めているし、仕事をしているから、ラグビーにより集中できる面もあります」と話す。
年齢を重ねるごとに、ラグビーと仕事の責任は増す。成長し続けないと、押しつぶされることだってある。
だから鈴木主将は、日々の練習で、少しずつでもいいから前へ進み続けられるようなマインドを持ち続けてきた。
「自分自身、パスは学生時代よりうまくなりました」と笑う。
チームにも日々前進の意識は浸透している。つまりグラウンドでの時間の充実が成績に直結している。
連覇を狙う今季は『Build』をスローガンにチーム作りを進めてきた。
戦っている舞台は、組織的にリーグワンには繋がっていない。しかし機が熟したときに、国内最高峰のリーグで戦っていける実力を持っていられるように積み上げていこう、という思いがこもっている。
京産大でSOを務めていた西仲隼らルーキーたちは、チームに勢いを与えてくれる存在になっている。
ライバルたちの強化のスピードが高まっている情報も聞こえてくるが、地に足をつけて強化を続けてきた。
キックオフのホイッスルが鳴れば、あとは、持てる力を出し切るだけだ。
9月に入り、昨季までクリタウォーターガッシュ昭島の司令塔として活躍したアンドリュー・ディーガンの加入も決まった。
自ら走り、周囲の力も引き出す存在は、チームがさらに上へ走るトリガーとなりそうだ。