【コラム】ない、ない、の希望。玉川大、夏合宿で飛び級の腕試しへ
平日の通常練習は火水金の18時から2時間ほど。部員はマネージャー5人を含めて49人。部員には、玉川学園高校からの内部進学者は多くなく、ほとんどがラグビー経験のある外部の高校からの入学生だ。
「幸い、有名校の出身者は多いんです」と田島主将。小柄なフランカーはリーダーとして実直に部の様子を見つめている。茗溪学園、日川、仙台育英、明和県央、昌平、大分東明…。しかし高校時代の熱を下部リーグで高めるのは人が思うほど簡単ではない。
たとえば練習の強度だ。
「これまではリアルのコンタクトをおこなうのは週に1回でした。僕自身は、毎回ぶつかり合うのが当たり前だと思っていたので、初めは驚いた。今シーズンからは2回、3回に増やすように働きかけていて」
回数の問題ではなく、グループの習慣や習性を変えることの難しさだ。変化を嫌うのはある意味で自然なこと。ただ「それでも変えなくては」の理由が、今年の玉川にはあった。
「まず3部復帰して、後輩に部を託したい。それは4年生で一致しています」
目の前の後輩たちと戦っているわけではなくて、変化に挑戦している。
もう一つ、チームの話。個々ができることと、集団で遂行できることとは違う。田島主将は今年、ディフェンスをチーム強化の最初に持ってきた。この分野でも、それまでとは違うやり方を採用した。リーグ戦4部で有効な、圧力を前面に押し出すディフェンス。個々には高校までさんざん取り組んできたことでも、チームでやり切るのは難しい。微妙なずれ、間合いの違い。新しい玉川のディフェンスの完成へは、今まで、ではなく、今がすべてだ。ここでやるべきことをやらなければ、チームには何も生まれない。
「だから、大学でも基礎からやる。これは体に染み込ませるしかないので」(田島主将)
リーグ戦開幕まではあと1か月のタイミング。4年生を中心に話し合い、菅平での夏合宿に、一つの試金石を用意した。8月19日に、東農大とのマッチメークを試みた。
東農大はリーグ戦3部で、今年リーグでの対戦はない相手だ。
「昨年まで、3部でライバルと考えてきたチームでした。僕らとしては基準をそこに置き続けて、夏までを過ごしたかった。強い相手です。スタンドオフに『コウキチ』と呼ばれている上手い選手がいます。その名前は僕らもみんなで覚えていて。彼を自由にさせないことがキーになる」
3部、2部への意識を保つこと、それまでの成果を「格上」のライバルを向こうにぶつけること。東農大戦はシーズン前のビッグマッチだ。試合の勝敗はもちろん、そこに試合を据えたことに意味があった。