海外 2023.08.12

準決勝では日本人対決も。クライストチャーチボーイズ高校の渕上裕がクルセイダーズ地区で優勝

[ 松尾智規 ]
準決勝では日本人対決も。クライストチャーチボーイズ高校の渕上裕がクルセイダーズ地区で優勝
準決勝前のハカ。右から2人目がCBHSの渕上裕。(撮影/松尾智規)
両親と渕上裕。(撮影/松尾智規)
右から3人目がSTCの中尾一心。(撮影/松尾智規)



 ラグビー王国ニュージーランド(以下、NZ)の高校ラグビーシーズンも大詰めに入ってきた。

 8月5日にはMiles Toyota Premiership(クルセイダーズ地区の1st XVの試合)の決勝がおこなわれた。日本人高校生の渕上裕(ふちがみ・ひろ)が所属するクライストチャーチボーイズハイスクール(以下、CBHS)が昨年の覇者ネルソンカレッジに30-26のスコアで勝利し、5年ぶりの優勝を勝ち取った

 2023年の5月、6月にYear11(日本でいう高校1年生)にしてファーストフィフティーン(1軍)で活躍する渕上裕のニュースをお伝えした。

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 渕上は、その後もレギュラーとして毎試合スターティングメンバーで出場を重ねた。CTB、WTBだけでなくSHもこなすなど、ユーティリティープレーヤーとして活躍を続けていた。

◆準決勝は、日本人対決。

 渕上の所属するCBHSは、レギュラーシーズンを7勝2敗の2位で通過。同3位のセント・トーマス・オブ・カンタベリー・カレッジ(以下、STC)と決勝をかけて7月29日に対戦した。

 両チームはレギュラシーズンでも、準決勝の2週前に対戦していた。そのときは、STCの終盤の追撃を辛うじてかわしたCBHSが24-19の僅差で勝利していた。

 STCは昨年に続き、準決勝まで勝ち上がってきたチームだ。この大一番には背番号9を付けて中尾一心(なかお・いっしん)が出場。日本人対決が実現した準決勝となった。

 Year12(高校2年生)の中尾は、昨年Metro U16(カンタベリーユニオンのクライストチャーチ地区の16歳以下の代表)に選ばれており、今年からSTCのファーストフィフティーンのレギュラーSHとしてプレーしている。

 この準決勝はクライストチャーチの高校同士の対決という事もあり、両チームのサポーターがピッチをぐるりと囲んだ。そんな大舞台に日本人2人がいることを誇りに思う。

 試合はホームのCBHSがトライを取って先行する展開も、STCが個人の突破からチャンスを作ってトライを返し、食らいついた。激しい攻防がファイナルクオーターまで続いた。

 勝敗がどちらに転ぶか分からない展開に観客も興奮気味だった。
 しかし、終盤に差し掛かったところでSTCの足が止まりだす。そこで一気にギアを上げたCBHSが2トライ。27−17で試合を決めた。
 CBHSの背番号14を付けて出場した渕上は、スピードだけでなく強さも見せた。ディフェンスに捕まり掛けながらもタックルを振り切り、ゴールポスト真下に飛び込みトライを挙げて勝利に貢献した。

 STCは敗れたものの、個人の能力は高く、今後が楽しみなチームだ。
 中尾は以前CBHSに通っていた事もあり、どこよりも勝ちたい思いで挑んだ試合だった。来年の対戦が今から楽しみだ。
 中尾の正確で素早いボール捌きが印象的で今後の活躍に期待したい。

STCのSHとして活躍する中尾一心。写真はレギュラーシーズンのネルソンカレッジ戦。(撮影/松尾智規)

◆渕上がWTBで先発出場の決勝は、大接戦のシーソーゲーム。

 CBHSの決勝の相手は、昨年のチャンピオンチームでレギュラーシーズン唯一の負け知らず、ネルソンカレッジ。両チームは昨年の準決勝で対戦し、CBHSはその時、24-27で敗れた。
 今季レギュラーシーズンの敗戦(10-14)もあり、CBHSはリベンジに燃えていた。

 Year13(高校3年生)にとっては最後という事もあり、ケガが完治していなくても強行出場をした選手も多くいたようだ。
 そんな上級生と共に毎試合一緒に戦ってきた渕上は、決勝を前に「今までのラグビー人生で一番大切な試合」と語っていた。

 決勝の舞台は、クライストチャーチから車で5時間を超える距離にある、ネルソンカレッジのグラウンドだった。それでも、渕上の両親を含む多くのCBHSの保護者、同級生などがクライストチャーチから応援に駆けつけた。

 試合は、リードする側が5度も入れ替わるシーソーゲームの熱い戦いとなった。 
 先制したのはネルソンカレッジ。背番号9、オリバー・ギボンズがトライを挙げて口火を切った。そのギボンズをはじめ、スピードのあるBK、両プロップの突破力を武器に戦うネルソンカレッジが、序盤を優勢に戦った。

 しかし、ディフェンスで粘るCBHSも負けていない。前半は両チームが2トライずつを挙げ、17-14とCBHSのリードでハーフタイムを迎えた。

 後半に入ってもトライの取り合いは続きシーソーゲームが繰り返された。
 CBHSが爆発したのは終盤に差し掛かった時だった。安定感のあるラインアウトから得意のモール攻撃で2トライを奪う。30−21と9点差にして残り時間8分。この試合、初めてセーフティーリードとした。

 しかし、昨年のチャンピオンは諦めない。終盤にSHギボンズが3つ目のトライで4点差に迫る。再び、どちらに勝利が転がるか分からない熱い展開となった。

 残り時間5分、ボールを支配したのはCBHSだった。
 30-26と逃げ切り、クルセイダーズ地区の優勝を勝ち取った。

 優勝したCBHSは南島代表をかけてハイランダーズ地区の決勝、オタゴボーイズ高 × サウスランドボーイズ高の勝者と8月19日に対戦する。その先は、全国トップ4(ブルーズ地区、チーフス地区、ハリケーンズ地区、南島代表)の大会が待っている。

 南島代表決定戦も、渕上にとって再び “ラグビー人生で一番大切な試合” となるだろう。
 日本人高校生の活躍はまだまだ続く。


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