海外 2023.05.23

日本人高校生が、クライストチャーチ(NZ)の名門校で開幕戦先発出場。

[ 松尾智規 ]
日本人高校生が、クライストチャーチ(NZ)の名門校で開幕戦先発出場。
試合前の渕上裕(ひろ)。165センチ、80キロ。(撮影/松尾智規)
試合前のハカ。(撮影/松尾智規)
開幕戦では12番で出場した。(撮影/松尾智規)
鋭く前に出る渕上裕。(撮影/松尾智規)



 ラグビー王国ニュージーランド(以下、NZ)は、まもなく冬に突入する。ラグビーシーズンが盛んになる時だ。
 NZのラグビーシーズンは、2月にスーパーラグビーで幕を開ける。続いて4月からクラブラグビー、そして5月からは高校ラグビーが開幕となる。

 嬉しいニュースが入ってきた。
 NZの南島にある、クライストチャーチ・ボーイズ・ハイスクール(以下、CBHS)のファーストフィフティーン(一軍)に渕上 裕 (ふちがみ・ひろ)が選ばれた。

 CBHSと言えば、アンドリュー・マーティンズ、ダン・カーター、ブロディ—・レタリック、ウィル・ジョーダンらをはじめ、多数のオールブラックスの選手を輩出している名門校だ。
 日本代表としてワールドカップに出場したことがある小野晃征もCBHSのファーストフィフティーンでプレーをした。

 渕上の父、賀充(よしみつ)さんは、兵庫県出身、20年ほど前に仕事の関係でクライストチャーチに来た。
 こちらで家庭を築いて4人の子宝に恵まれた。

 渕上 は、兄の陽哉(はるや)がラグビーをしていた影響で5歳からクライストチャーチ フットボール クラブでラグビーを始める。
 兄の陽哉も、高校時代、CBHSのファーストフィフティーンで、現在は、クライストチャーチのクラブチーム、サムナーのコルツ(U21 )でプレーを続けている。

 弟の暖(だん)は、二人のお兄さんの背中を追うようにラグビーを始め、現在クライストチャーチ フットボール クラブのU12でプレーしている。3人ともラグビー王国で生まれた。

 渕上はラグビーだけにとどまらず、ソフトボールでU15‐NZ代表(昨年)、タッチラグビーは現在U16‐NZ代表。柔道は、オークランドやカンタベリーの大会で優勝経験がある。
 さらには、ラグビー・リーグ(13人制)もプレーしており、先月行われた全国大会では、U16カンタベリー代表で出場し、決勝まで行った。まさに多彩な才能の持ち主だ。

 昨年はCBHSの代表でセブンズの全国大会にも出場。
 15人制でもU15の全国大会に出場し、決勝ではロスタイムで渕上がディフェンスを切り裂く。キレのあるランでインゴールに持ち込み、逆転サヨナラトライを挙げて優勝に貢献した。
 チーム内のMVPも獲得する活躍だった。

 昨年U15の全国大会でインパクトを残した渕上は、今年Year11(日本でいう高校一年生)で一人だけ CBHSのファーストフィフティーンに選ばれた。
 5月13日のMiles Toyota Premiership (クルセイダーズの地域の1st XV)の開幕戦には、先発メンバーの背番号12を付けて出場した。

 対戦相手は、ティマルボーイズ・ハイスクール。クルセイダーズのNO8、カレン・グレースの母校だ。
 試合前に両チームがハカを披露した。始めにティマルボーイス・ハイスクール。
続いてホームのCBHSのハカが行われ、渕上も気合の入ったハカを披露した。

 身長165センチ、体重80キロの渕上は、周りの選手と比べると小柄だ。
 しかしサイズのハンディをものともせず、しっかりとコンタクトし、タックル、ブレイクダウンでも身体を張った。
 体格で上回る相手に向かっていく姿は、勇ましかった。

 試合は序盤、両チームともラインアウトで精彩を欠いた。反則も多く、試合が止まる場面が多くみられた。
 開幕戦という事もあり、若干の固さがあったか。レフリーが厳しめに吹いていた影響も見られたかもしれない。

 前半CBHSは、ティマルボーイス・ハイスクールのアグレッシブなFWを前に苦戦していた。
 それでも、ひと際目を引いたNO8マーシャル・ブレイクリー、13番ボギ・キカウの個人技もあり、前半を22−15のリードで折り返した。 

 しかし、後半に入ってすぐにトライを取ったのはティマルボーイス・ハイスクール。22−22の同点に追いつかれた。
 ここでCBHSは、フィジカルの強い控え選手を次々に投入する。そして、その選手たちが効果をもたらし一気にギアを挙げた。
 後半途中からティマルボーイス・ハイスクールの選手たちの足が止まりだす。ディフェンスが乱れ始めた。
 それ以降は、CBHSペースとなりトライの山を築いた。

 最終スコアは53-22。大差となった。
 開幕戦白星で、渕上 のファーストフィフティーン公式戦デビューに花を添える結果となった。 

 試合を終え渕上からは、「初めてのファーストフィフティーンの試合だったが、特に緊張せず、普段通りにプレーができた」と頼もしい言葉が出た。

 父の賀充さんは、「まずは、ケガをしなくてほっとしています。不安というよりも本人が楽しそうにプレーしている姿を見ることができてよかったです」と息子の晴れ舞台を喜んでいた。

兄・陽哉(はるや/左=撮影・松尾智規)と弟の暖(だん)





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