日本代表ジョネ・ナイカブラ、母国との試合でワールドカップ行きをアピールへ。
滑り込んだ。
ワールドカップ・フランス大会の開催年になり、ラグビー日本代表の先発勢に加わったのがジョネ・ナイカブラだ。
身長177センチ、体重95キロの29歳は、今年7月からの対外試合でここまで4試合連続で先発し続ける。そのうち3戦目となる22日のサモア代表戦(札幌ドーム/●22-24)で、栄えある初キャップを得た(正規の代表戦に出場)。
「ラグビーテストマッチ 2023 サマー・ネーションズシリーズ」
「イタリア vs 日本」をはじめ、強豪国が対戦する全16試合を放送・配信!
29日には東大阪市花園ラグビー場で、トンガ代表に21-16と僅差で勝った。持ち場のWTBでスターターとなったナイカブラは、動きをスコアに直結させた。
前半20分の先制トライでは、サインプレーからの仕留め役を担った。無人のスペースで快足を飛ばした。
8-5とリードして迎えた前半40分には、攻守逆転からの攻めでグラウンド中盤左から前方へキック。転がる球をLOのアマト・ファカタヴァが押さえ、13-5と点差を広げた。
さらに21-16とわずかに先行して迎えた後半28分頃には、自陣ゴール前左で相手のキックパスに反応。ほぼノーマークだった捕球役に迫り、ミスを誘った。
その他の場面でも、両軍の蹴った球を追いかける場面が多かった。運動量を要した。試合後に笑った。
「キックチェイスをたくさん。いま、すごく疲れています」
フィジー出身だ。ニュージーランドのケルストンボーイズ高を経て2014年に来日した。
摂南大の学生になって感じたのは、日本人の「正直さ」だという。道中で財布を落とし、中身が入ったまま戻ってきたことが2度もあったからだ。
徐々に愛着を覚えたこの国で、スピードランナーとして頭角を現してゆく。
2017年に7人制日本代表となり、2018年には現・東芝ブレイブルーパス東京と契約した。
2021年に初選出された15人制の日本代表では、キャンプに招集されながら試合に出られない日々を過ごした。その悔しさも糧に、ワールドカップイヤーに日の目を浴びるようになった。
「何回か合宿を経験しながらテストマッチ(代表戦)でプレーできなかった時は、チャレンジングに感じました。ただその都度コーチ陣からフィードバックをもらい、スコッドに戻るために頑張り続けようと意識しました。代表でプレーできるチャンスを逃さないよう努力し続ける。そこにフォーカスしました」
いまは、試合を重ねるごとに手応えを感じる。同時に、試合を重ねて再確認する課題もあるようだ。
現代表が目指すプレースタイルと各人の職務内容を整理するなか、「パス、キャリーといったベーシックなことをしっかり遂行しなければ」。ワールドカップでの対戦国が多く蹴り込んでくるであろう、高い弾道のキックへも首尾よく対応したい。
「相手がたくさん蹴ってくることは想定しています。毎週、毎週、たくさん、(捕球を)練習しています」
周りと連係するのも大切だと感じる。特に守備面では、WTBと最後尾のFBからなるバックスリー陣で声を掛け合い、後ろでキックに備えるか、前方の防御網へ入るかの判断を間違えないようにしたい。
「他のバックスリーとコミュニケーションを取り、一緒にプレーする、という部分では、もっと努力しなければいけないと感じます」
目指すは、ワールドカップ初出場だ。
前回大会で5トライの松島幸太朗、故障離脱中のシオサイア・フィフィタや木田晴斗、同じフィジアンのセミシ・マシレワと限られた椅子を獲り合う。
「ワールドカップに向け、バックスリーのスポットは競争が厳しい。まず自分たちにとってのベーシックをしっかりとやる。仲間と一緒にハードワークし、成長していけたらと思っています」
8月5日、ワールドカップ登録メンバー発表前最後の試合がある。
サモア代表戦から続く「リポビタンDチャレンジカップ2023 パシフィックネーションズシリーズ」のラストゲームは東京・秩父宮ラグビー場であり、相手はフィジー代表となる。ナイカブラの母国だ。
「母国と戦えることにわくわくしています。自分たちのゲームプランを遂行してゆく。ハードワークして、ベストを出せたらいいなと思います」
故郷のチームを打ち負かすべく、異国の仲間とつながる。