各国代表 2023.07.07

目指すは「卒業」。日本に縁も。オールブラックスXVの思い。

[ 向 風見也 ]
目指すは「卒業」。日本に縁も。オールブラックスXVの思い。
オールブラックスXVのレオン・マクドナルドHC(左)とブラッド・ウェバー共同主将(撮影:向 風見也)


 季節は真逆だ。冬のニュージーランドから夏の日本へやってきたオールブラックスXV(フィフティーン)のブラッド・ウェバー共同主将は「タフな時間を過ごしています」と笑った。

「ただ、身体は徐々に慣れてきています。試合を楽しみにしています」

 来日から約1週間後にあたる7月8日、東京・秩父宮ラグビー場で「JAPAN XV」名義の日本代表とぶつかる。話をしたのは6日。両軍のメンバー発表を受け、千葉県内での練習後に取材に応じた。

 「JAPAN XV」のメンバー構成について聞かれれば「まだ見ていない」とし、臨席するレオン・マクドナルド ヘッドコーチに「とても強いメンバーだよ」と耳打ちされる。

「リーチは出る?」

 所属するチーフスで一緒にプレーしたことのある、リーチ マイケルの出場可否を気にする。

「そうみたいだよ」と聞く。

 共同主将兼FLでメンバー入りのリーチとのマッチアップを「友人でもある。ぶつかりあえる機会があれば」と心待ちにし、こうも続ける。

「日本代表はスピードもあり、よくコーチングがされたチームです。私たちのチームには初めて国際試合に出る選手もいます。そんななか、どのレベルにあるかを知るいい機会です」

 このチームは、ニュージーランド代表の予備軍的な位置づけにある。日本でおこなわれる今度の2連戦次第で、通称オールブラックスへ昇格する選手も現れうる。

 通算4度目の優勝が期待されるワールドカップは今秋、フランスで開かれる。FLのアキラ・イオアネ、CTBのジャック・グッドヒューら2桁のキャップ(国代表戦出場数)を持つメンバーが並ぶ一方、ノンキャップのメンバーも16名いる。

 18キャップで今回SHとして先発のウェバーは、こう意気込む。

「ここには非常にレンジの広い選手が集まっている。オールブラックスでもっと頭角を現したい人もいれば、このレベルで経験を積みたい若手もいます。ここでの働きで視線を集め、このチームを卒業してオールブラックスに入りたい…そういう目標があります」

 チームを率いるマクドナルドは、2004年にヤマハ発動機(現・静岡ブルーレヴズ)、2009年に近鉄(現花園近鉄ライナーズ)でプレーしたことがある。

 日本代表は2015、19年のワールドカップで通算7勝。マクドナルドは、日本の進歩を認める。

「自分がプレーしていた頃よりも選手のサイズ、自信が大きくなっている。いまのリーグワンのトップチームは、世界のどのクラブともいい勝負ができるでしょう。私たちは彼らに飲み込まれず、それ以上のラグビーがしたい」

 ニュージーランド協会に編まれたという今度の隊列には、日本にゆかりのある人が他にもいる。

 アシスタントコーチのスコット・ハンセン、S&C部門に携わるサイモン・ジョーンズは、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いるいまの日本代表でスタッフだったことがある。

 指揮官は「スコットにジャパンのプレーブック(戦い方のガイド)を見せてもらったよ。…これは冗談」と微笑んだ。

「スコットもジョーンズも日本代表に精通している。彼らがどんなチームかについての見解を教わっています」

 日本代表にとっての今季初戦は、簡単なゲームにはならなそうだ。

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