目指すは「卒業」。日本に縁も。オールブラックスXVの思い。
季節は真逆だ。冬のニュージーランドから夏の日本へやってきたオールブラックスXV(フィフティーン)のブラッド・ウェバー共同主将は「タフな時間を過ごしています」と笑った。
「ただ、身体は徐々に慣れてきています。試合を楽しみにしています」
来日から約1週間後にあたる7月8日、東京・秩父宮ラグビー場で「JAPAN XV」名義の日本代表とぶつかる。話をしたのは6日。両軍のメンバー発表を受け、千葉県内での練習後に取材に応じた。
「JAPAN XV」のメンバー構成について聞かれれば「まだ見ていない」とし、臨席するレオン・マクドナルド ヘッドコーチに「とても強いメンバーだよ」と耳打ちされる。
「リーチは出る?」
所属するチーフスで一緒にプレーしたことのある、リーチ マイケルの出場可否を気にする。
「そうみたいだよ」と聞く。
共同主将兼FLでメンバー入りのリーチとのマッチアップを「友人でもある。ぶつかりあえる機会があれば」と心待ちにし、こうも続ける。
「日本代表はスピードもあり、よくコーチングがされたチームです。私たちのチームには初めて国際試合に出る選手もいます。そんななか、どのレベルにあるかを知るいい機会です」
このチームは、ニュージーランド代表の予備軍的な位置づけにある。日本でおこなわれる今度の2連戦次第で、通称オールブラックスへ昇格する選手も現れうる。
通算4度目の優勝が期待されるワールドカップは今秋、フランスで開かれる。FLのアキラ・イオアネ、CTBのジャック・グッドヒューら2桁のキャップ(国代表戦出場数)を持つメンバーが並ぶ一方、ノンキャップのメンバーも16名いる。
18キャップで今回SHとして先発のウェバーは、こう意気込む。
「ここには非常にレンジの広い選手が集まっている。オールブラックスでもっと頭角を現したい人もいれば、このレベルで経験を積みたい若手もいます。ここでの働きで視線を集め、このチームを卒業してオールブラックスに入りたい…そういう目標があります」
チームを率いるマクドナルドは、2004年にヤマハ発動機(現・静岡ブルーレヴズ)、2009年に近鉄(現花園近鉄ライナーズ)でプレーしたことがある。
日本代表は2015、19年のワールドカップで通算7勝。マクドナルドは、日本の進歩を認める。
「自分がプレーしていた頃よりも選手のサイズ、自信が大きくなっている。いまのリーグワンのトップチームは、世界のどのクラブともいい勝負ができるでしょう。私たちは彼らに飲み込まれず、それ以上のラグビーがしたい」
ニュージーランド協会に編まれたという今度の隊列には、日本にゆかりのある人が他にもいる。
アシスタントコーチのスコット・ハンセン、S&C部門に携わるサイモン・ジョーンズは、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いるいまの日本代表でスタッフだったことがある。
指揮官は「スコットにジャパンのプレーブック(戦い方のガイド)を見せてもらったよ。…これは冗談」と微笑んだ。
「スコットもジョーンズも日本代表に精通している。彼らがどんなチームかについての見解を教わっています」
日本代表にとっての今季初戦は、簡単なゲームにはならなそうだ。