海外 2023.06.16

【スーパーラグビー・パシフィック】 激戦間違いなし! 準決勝プレビュー

[ 松尾智規 ]
【スーパーラグビー・パシフィック】 激戦間違いなし! 準決勝プレビュー
けがから復活し、準決勝ではブルーズの11番をつけるケイリブ・クラーク(Photo: Getty Images)


 2023年度のスーパーラグビー・パシフィックは、熱い準々決勝を終えベスト4が出そろった。
 準決勝の2試合は、クルセイダーズ×ブルーズ、チーフス×ブランビーズ。いずれのカードも激戦が予想される。

<準々決勝 4試合の結果>

■ブルーズ 41-12 ワラターズ
 序盤に勢いがあったワラターズが健闘するも、徐々に立て直したブルーズが後半爆発し圧勝。

■チーフス 29-20 レッズ
 終盤まで試合がもつれレギュラーシーズンの再現が頭によぎるも、残り時間5分でチーフスのLOブロディ・レタリックの突破からチャンスを作り、最後はNO8ピタ・ガス・ソワクラがインゴールになだれ込み試合を決めた。

■クルセイダーズ 49-8 フィジアン・ドゥルア
 序盤ミスが続いたドゥルアに対し、クルセイダーズが容赦なく攻め続け前半で試合を決めた。けが人が続出したクルセイダーズは、後半途中から13人で戦うも圧勝でレギュラーシーズンのリベンジ果たした。

■ブランビーズ 37-33 ハリケーンズ
 戦前の予想通り激戦となり、シーソーゲームの息をのむ展開に。ロスタイムに入り4点差を追うハリケーンズが必死にトライを狙うも、ブランビーズの堅いディフェンスに何度も阻まれた。最後はハリケーンズのFLアーディー・サヴェアがインゴールになだれ込むも、TMO判定でトライは認められず、ブランビーズが辛うじて逃げ切った。

 準決勝の直後の6月18日には、オールブラックスとオールブラックスXVの発表があることから、ニュージーランド国内のスポーツニュースは、テレビ、ラジオともにラグビーの話題で持ち切りだ。
 スーパーラグビー準決勝の2試合を展望してみたい。

連覇を狙うクルセイダーズのキャプテンを務めるスコット・バレット(Photo: Getty Images)

◆クルセイダーズ×ブルーズ

 準決勝の第1試合は、クルセイダーズがホームのクライストチャーチにブルーズを迎える(6月16日)。
 今季3度目になる因縁のライバル対決。レギュラーシーズンでの対戦は、3月18日にオークランドで34-28、5月13日にクライストチャーチで15-3、いずれもクルセイダーズが勝利している。

 ブルーズは3度目の正直で勝利することができるのか。
 注目のメンバーを見ていくと、クルセイダーズは、準々決勝から先発メンバーは据え置き。大黒柱のLOサム・ホワイトロックは、アキレス腱のけががまだ癒えず準決勝に間に合わなかった。

 先週ベンチスタートで復帰を果たしながらも、わずか5分で退場となったFLイーサン・ブラカッダーも欠場。大一番で大物2人の欠場は、オールブラックスのスコッド発表が近いだけにニュージーランド国内のスポーツニュースで大きく取り上げられることになった。
 依然としてけが人が多いものの、シーズン途中まで活躍していたLO/FLのドミニック・ガーディナーが久しぶりにベンチ入りとなった。ロック不足だっただけにガーディナーの復帰は大きい。

 一方のブルーズは、準々決勝を欠場していたWTBケイレブ・クラークが先発メンバーに戻ってきたのは嬉しいニュースだ。その他では、フィジカルモンスターのFLエイドリアン・チョートがけがから復帰でベンチ入り。相手が疲れてきた後半の途中からフィジカルバトルで大きなインパクトに期待が寄せられる。

今季最多の12トライを挙げているブルーズのマーク・テレア(Photo: Getty Images)

<注目のマッチアップ>
■タマティ・ウイリアムズ(クルセイダーズ1番)× ネポ・ラウララ(ブルーズ3番)
 今回は1番に入ったウイリアムズが、スクラムの強さを誇るラウララに対抗できるか注目。スクラム以外でも成長しているところを、この試合でも見せて代表入りをアピールしたい。

■スコット・バレット×トム・ロビンソンのLO対決
 準々決勝でロビンソンは、ラインアウトの強さ見せ相手ボールのラインアウトを何度も奪った。クルセイダーズ相手にも通用すればブルーズが勢いに乗る。

■リッチー・モウンガ×ボーデン・バレットの10番対決
 前回の対戦は、モウンガに軍配が上がった。今回はバレットが変化を見せてクルセイダーズのディフェンスを乱すことができるか注目したい。
 上記の他にも能力の高い両CTB、両WTB対決も非常に注目される。
 
 ブルーズは、前回の対戦でゲームプランとしてキックを多用してうまくいかなかった。今回は、キックを多用せず決定力のあるWTBマーク・テレアをはじめ、豪華なBK陣を活かすことができるか。司令塔バレットのゲームメイクが一番のカギになりそう。
 対するクルセイダーズは、ブルーズの豪華なFW第3列のアキラ・イオアネ、ダルトン・パパリイ、ホスキンス・ソトゥトゥに対抗できるかも見どころの一つだろう。

 クルセイダーズは、ホームでのプレーオフでまだ一度も負けていない(28連勝中)。しかし、今回は主力にけが人が多くなっている。ブルーズの勢いから行くと不敗神話が途切れることも十分考えられる。レギュラーシーズンと同じでテストマッチ並みの激しいバトルになることは間違いないだろう。

チーフス躍進の立役者となったダミアン・マッケンジー(Photo: Getty Images)

◆チーフス×ブランビーズ

 第2試合は、チーフスが地元ハミルトンにブランビーズを迎える(6月17日)。
 5月27日のレギュラーシーズンでの対戦は、31-21でチーフスが勝利している。
 ブランビーズがリベンジするのか。それともチーフスが返り討ちをするのか。

 チーフスのメンバーから見ていくと、準々決勝から3人先発メンバーに変更があった。
 LOトゥポウ・ヴァアイ、CTBアレックス・ナンキヴェルの2人がけがから復帰で準決勝に間に合った。

 先週はベンチスタートだったPRジョージ・ダイアーが大一番で3番に抜擢。速い展開にもついていける機動力が魅力でトライに絡むプレーを何度もしている。将来が楽しみなPRだ。
 ベンチも含めて強力なメンバーのチーフスに付け入る隙がないように思える。

 対するブランビーズのメンバーは、オーストラリア代表勢を中心に強力なメンバーでチーフスに挑む。
 ニュージーランド生まれのタマティ・トゥア(元U20ニュージーランド代表)、レン・イキタウのCTBコンビは、準々決勝でハリケーンズCTBコンビを上回るパフォーマンスをしているだけに注目される。
 レギュラーシーズン終盤に勢いが感じられなくなった感もあったが、準々決勝でハリケーンズ相手に激戦を制し強いブランビーズが戻ってきた。

ブランビーズで最もエキサイティングなランナーのひとりであるトム・ライト(Photo: Getty Images)

<注目マッチアップ>
■ブロディ・レタリック×ニック・フロストのLO対決
 ラインアウトだけでなく、サポートプレー、ボールキャリーが持ち味の両者の対決は見逃せない。

■ブラッド・ウエバー×ニック・ホワイトの9番対決
 経験豊富な2人の対決は見ごたえあり。プレー同様に口撃も白熱するかも知れない。

■ダミアン・マッケンジー×ジャック・デブレツェニの10番対決
 両者ともディフェンスを突破する能力があり、ゲームメイクと合わせて注目したい。

■ショーン・スティーヴンソン×トム・ライトの15番対決
 キック処理、カウンタアタックなど見どころ満載の対決は必見。

 両チームとも堅いディフェンスを持っており、いかにディフェンスを破っていくかがこの試合の最大の見所になるだろう。そしてブランビーズの最大の武器、ドライビングモールを止めることがチーフスの勝利にかかっていると言っても過言ではない。

 チームの完成度、準決勝の試合運びを見ていると、試合巧者のブランビーズにも勝機がある。しかし、今季のチーフスは、ワンランクレベルが上がっている。司令塔のマッケンジーの調子も良く、バックスリーの決定力もハンパない。苦戦した準々決勝から立て直してくるとみている。

 ホームの観客を味方につけてチーフスが決勝に行くのか、激戦になることは間違いないだろう。

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