その他 2023.06.04

デフラグビー日本代表「クワイエット・ジャパン」、大会7位に。第2回世界デフラグビーセブンズ大会 (2)

リポート:柴谷 晋(日本聴覚障がい者ラグビーフットボール連盟)

[ 編集部 ]
デフラグビー日本代表「クワイエット・ジャパン」、大会7位に。第2回世界デフラグビーセブンズ大会 (2)
大会終了後のトーマス選手と、手話通訳の西尾香月。事前練習なしのチーム合流だったが、すぐにチームに馴染んでくれた(撮影:JDRFU)

 2023年4月5日から9日まで、アルゼンチン 第2の都市コルドバにて、第2回世界デフラグビーセブンズ大会が開催された。

 デフラグビーとは、聴覚に障がいを持つ人のためのラグビーである。障がいの幅が広いのが特徴で、手話を日常言語とする「ろう者」や、補聴器をつけて口話で話す難聴者が混在する。今回のコルドバ大会は、2018年のシドニー大会に続き2回目。

 本大会は男女ともに実施され、各出場チームは、以下の通り。

◉男子(8チーム):日本、アルゼンチン、ウエールズ(前回優勝)、イングランド(前回準優勝)、オーストラリア、フィジー、南アフリカ、バーバリアンズ

◉女子(4チーム):ウエールズ、イングランド、オーストラリア、バーバリアンズ

*バーバリアンズは、混成チーム。香港、ブラジル、アルゼンチン、ウェールズなどの選手で構成された。

 試合会場は、コルドバ市北西にあるクラブ・ラ・タブラダ。1943年創立の名門クラブで、多くのピューマ(アルゼンチン代表)を輩出している。6面あるラグビー場の中の第1グランドが大会会場となった。

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 大会2日目。

 クワイエット・ジャパンに、ウィリアム・トーマス選手が加わった。

 初日に活躍したベテラン川上能壽(ニチリン)が体調不良により欠場。ウエールズのバックアップ選手だったトーマス選手をレンタルすることとなった。同選手は24歳。母校のろう学校で教員アシスタントを務めている。5年前からラグビーを始め、ふだんはウエールズのクラブ「エクセター」で聞こえる選手たちとプレーしている。なお、難聴者の多い男子デフ・ウエールズでは、トーマス選手が唯一のろう者とのことだった。

 初戦の相手は、前回準優勝のイングランド。

 試合序盤はイングランド・ペース。2本のトライで0-12とされるが、ここから日本の反撃が始まる。FW日野敦博(JDRFU理事長、大成建設)のオフロードパスから、岸野がトライを返し、7-14。前半残り1分でイングランドが退場者を出して、1人少ない状況のままハーフタイム。

 後半のキックオフでは、小林が転がしたボールを相澤がセービングで確保。小林が素早く拾うと、すかさずディフェンスラインの裏へショートパントを上げる。これがイングランドのオブストラクションを誘い、2人目の退場者を出す。日本の戦いぶりに会場からは大きな歓声が上がる。特に、トーマス選手の所属するウエールズは、イングランドの永遠のライバルであり、ウエールズベンチからの応援の声は一際大きい。

 クワイエットジャパンが、イングランド陣深くのスクラムをターンオーバーすると、相澤が抜け出して逆転(14−12)。相澤は東松島市出身。宮城水産高でラグビーを始め、今も県内の健聴者クラブでプレーしている。その相澤のトライでイングランドを追い詰めるが、数的優位のなくなった残り3分で2トライを許し、14−26でノーサイドとなった。

 2日目第2戦は、地元アルゼンチンとの対戦。

 前半から、ジャパンは果敢に攻めた。トーマスのキャリーでゴール前に迫ると、福井拓大(大阪府立堺聴覚支援学校勤務)がピックアンドゴー。トライかと思われたが、惜しくもノックオンに終わる。しかし、続くプレーで、小林が得意のステップから抜け出してトライ。その後、ペナルティから2トライを奪われ、5-14で前半を終える。後半も一進一退の攻防が続くが、自陣ゴール前から隙を突かれて、トライを許し5-21。試合終了前にもトライを追加され5-26で敗れた。

 この試合で、ジャパン側はレフリーと意思疎通が取れず、ペナルティを重ねてしまった。手話の分からないレフリーとデフラガーとのコミュニケーションは、デフラグビー全体にとって、今後の大きな課題だ。

 日本は予選を1勝4敗で終え、大会3日目の最終戦は7/8位決定戦に回ることとなった。

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