その他 2023.06.04
デフラグビー日本代表「クワイエット・ジャパン」、大会7位に。第2回世界デフラグビーセブンズ大会 (2)

デフラグビー日本代表「クワイエット・ジャパン」、大会7位に。第2回世界デフラグビーセブンズ大会 (2)

リポート:柴谷 晋(日本聴覚障がい者ラグビーフットボール連盟)

[ 編集部 ]

 

 大会3日目。

 最終戦の相手は、初戦と同じバーバリアンズ。初戦は大勝しているが、PRのブラジル人選手はスクラムが強く、警戒が必要。日本チームは、前回のスコア(46点)を上回ることを目標に試合に臨んだ。序盤から日本のペースで試合が進むが、警戒していたブラジル人選手のピックゴーからバーバリアンズが大会初トライを奪い、会場が沸いた。一方の日本も攻めの姿勢を崩さず、52-5の大勝。7位で大会を終えた。

 男子決勝戦は、ウエールズ対オーストラリアの対戦となり、20−5でウエールズが快勝。女子もウエールズがイングランドを29-0で破り、ダブル優勝となった。

 今回のデフラグビー日本代表「クワイエット・ジャパン」はリザーブ無しでの戦いとなったが、岸野、小林、大塚など強豪大学出身選手が3人も所属しており、他国と比較しても質の高いプレーを見せてくれた。監督を務めた落合孝幸(三機工業)は、デフラグビー日本代表の初代キャプテンであり、前回大会に続いてチームを率いた。落合は、緊密に選手とコミュニケーションを取り、日本独自の戦術を継続的に落とし込んできた。

 また、日本は距離的に最も遠い場所からの参加であり、コンディション調整が難しい中、怪我人を出さずに戦い抜いた。平田昻大アスレティックトレーナー:AT(慶大勤務)、総務の三好菜々子(キャタピラージャパン)らの努力が報われた。

 閉会式では、日野理事長らが、今大会に参加しなかったデフニュージーランドの代表団と協議し、来年、パシフィックセブンズ大会の開催を目指すことを決めた。また、大会期間中に開催されたワールド・デフラグビーの会議では、将来における日本での国際大会開催を表明している。

 今後のクワイエットジャパンは、今大会に参加できなかった若手選手たちを育成しながら、引き続き世界一を目指す。また強化活動と同時に、普及活動にも力を入れていく。ラグビーを通して多くの人と触れ合い、海外へも出向くことで、聴覚障がい者の可能性を広げ、聴覚障がいに対する社会全体の理解につなげていく。活動理念は「ラグビーを通した平等」である。賛同するスポンサー企業や個人支援者のおかげで、今回の遠征も実現された。

 日本のデフラグビーは、1994年、写真家長田耕治氏が、ニュージーランドにおけるデフラグビーの活動を、ラグビーマガジン誌に紹介したことから始まった。まもなく30年を迎える本活動は、これからも多くの若者たちに活躍の機会を与えていくことになるだろう。

 なお、今大会では、日本から鮫島功生レフリーが参加し、日本初のデフレフリーとしてピッチに立った。次に、鮫島氏の大会回想録を紹介する。

NPO法人 日本聴覚障がい者ラグビー連盟オフィシャルウェブサイト

https://deaf-rugby.or.jp/
前回大会(2018年)のレポート

https://deaf-rugby.or.jp/special/world-deaf-rugby-7s/wdr7_2018/

筆者PROEILE/柴谷晋 (しばたに・すすむ)
元デフラグビー日本代表、今大会は英語通訳、分析として遠征に同行。著書に「静かなるホイッスル」(新潮社)など。同書は、日本デフラグビー創設から2002年の世界大会での初勝利、セブンズ大会準優勝までを描いたノンフィクション作品。大田東京ラグビーアカデミー代表、’23年4月より武蔵野横河アトラスターズ アカデミーヘッドコーチ。リーグワンチームでアナリストを務めた経験を元に、ラグビーマガジン誌上での分析記事や、チーム向け分析指導もおこなう。

大会を終えたクワイエット・ジャパン。悔しい結果だが、力を出し切った充実感が見える(撮影:JDRFU)
2大会連続でチームを率いた落合孝幸監督(中央)と平田昻大AT(左)。平田ATも手話で選手とコミュニケーションを取る(撮影:JDRFU)

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