海外 2023.05.02

【欧州チャンピオンズカップ 準決勝】レンスターの壁、厚く。トゥールーズまたも敗れる

[ 福本美由紀 ]
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【欧州チャンピオンズカップ 準決勝】レンスターの壁、厚く。トゥールーズまたも敗れる
タックルを受けるトゥールーズのFBトマ・ラモス。(Getty Images)



 チャンピオンズカップ準決勝(4月29日)、トゥールーズはまたもやレンスター(アイルランド)の壁を越えることはできなかった。

 22-41というスコアだけ見ると、昨年の17-40、また2019年の12-30のリメイクのように思うかもしれない。試合後の会見会場に現れたユーゴ・モラ ヘッドコーチ(以下、HC)も「ちょうど1年前のこの日、この場所で、皆さんに言ったことと同じことを言っているような気がする」と漏らした。

 しかし、内容は明らかに違った。
 昨年は一方的な試合だったが、「今年はラインブレイクも多くできた。ボールを持てば相手に相手ディフェンスをかき乱し危険を感じさせることができた」(アントワンヌ・デュポン)。少なくとも15人でプレーしていた60分間は。
 2枚のイエローカードで14人だった20分が致命的となった。

「レンスターと戦うためには、15人が100パーセントでなければならない。どんなミスも許されない」と試合前に全員が口を揃えていっていた。
 14人になったチームのそれぞれが120パーセントの力を出して勝利することもあるが、現時点で世界ランキング1位のアイルランド代表の選手が並ぶチームを相手にそれは難しい。
 前半、FBトマ・ラモスが不在の間に2トライを、後半、PRロドリグ・ネティが不在の間に2トライと、合計28点を与えてしまった。

 また、前半14分でCTBピエール=ルイ・バラシが負傷退場したこともトゥールーズにはアンラッキーだった。
 この日のベンチの布陣は、FW6人+BK2人。BKでは、ユーティリティーのアルチュール・ルチエールとSHのポール・グラウが入っていた。

「そのあと何が起こるかわからなかったから、ユーティリティーのアルチュール(ルチエール)を残しておきたかった」とモラHC。

 グラウとデュポンは今季トップ14で2度HBを組んでおり、うまく機能していた。グラウとデュポンは、デュポンの方が1歳上だが、オーシュというクラブのユースチームで3年間一緒にプレーしていたこともあり、「2人の息も合っていることから、ポール(グラウ)を入れることを選んだ」(モラHC)

 グラウがSHに入り、デュポンがSOへ。ロマン・ンタマックがCTBに入った。
 しかしグラウは今季2部リーグのアジャンからトゥールーズに加入したばかり。シーズン前半は負傷でプレーできず、今年の1月から連戦し、デュポンが不在のシックスネーションズの期間中にチームにも馴染み、デュポンの控えとして認められたところだった。
 2週間前のトップ14のリヨン戦でも、WTBに入っていたアンジュ・カプオッゾが12分に負傷退場した後、この布陣で残りの時間を戦ったが問題なく機能していたのだが。

 しかし、チャンピオンズカップの準決勝。試合開始からスピードもインテンシティーもテストマッチレベルの試合を初めて経験するグラウには厳しい経験となった。
 できる限りのことはした。しかし、終始レンスターのプレッシャーを受け、思うようにボールを捌くことができなかった。

 今年こそは、と万全を期して準備をしてきた。
 昨年はトップ14でプレーオフに進出するために、シックスネーションズで疲労が溜まっていた代表勢も歯を食いしばって連戦しなければならなかった。
 今年は主力選手のコンディションを整えるために、先週のトップ14の試合は全員を休ませることができた。

「今年はコンディションも良く万全だと思っていたが、壁は高かった」とWTBマチス・ルベルは落胆する。

 とはいえ、トゥールーズのシーズンが終わってしまったわけではない。

「今後のトゥールーズに期待してほしい。失敗は、成長し、さらにハードになるためにあるのだから」とモラHCは前を見る。

「イエローカード2枚、さらにミスで相手に得点を与えた。レフリングやプレー、戦術という次元じゃない。40点取られているんだ。そんな話できるわけがない。チャンピオンズカップは終わり、もちろんトップ14に集中する。それ以前に自分達により厳しくなって努力を続けなければならない。このレベルでは許されないミスをしているんだ。同じことを繰り返してはいけない」とデュポンも言っている。

 ラ・ロシェルはエクセターに快勝し(47-28)、3年連続の?決勝進出を決め、決勝は昨年と同じカードとなった。

 準決勝は、本来ならラ・ロシェルのホームスタジアムで行われるはずだったが規模が小さいため、約4万2000人収容できるボルドーのマトムット・アトランティックで行われた。

 180キロ離れたラ・ロシェルから応援に駆けつけたサポーターでラ・ロシェルのカラーの黄と黒で埋め尽くされたスタンドを見て感動しながら、キャプテンのグレゴリー・アルドリットは試合後のインタビューに答えた。
「ダブリンでレンスターと対戦するなんてとんでもないチャレンジだ。でもそのチャレンジの準備はできている」

 ラ・ロシェルの連覇の夢は実現するだろうか?

 また、チャレンジカップでは、トゥーロンがベネトン(イタリア)を満員御礼となったスタッド・マヨールに迎え、開始6分でキャプテンのシャルル・オリヴォンがレッドカードで退場になったものの、23-0で勝利、決勝でグラスゴー(スコットランド)と対戦する。

 トゥーロンは優勝という目に見える結果を獲得して、今の世代の自信に繋げたいところだ。


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