【コラム】若者に時間と機会を――高校ラグビーへの期待。
勝つか負けるかわからないからこそゲームはおもしろいのであり、力が接近した相手と拮抗した戦いを経験することでより成長は促される。可能な限りケガのリスクを抑える安全対策も、競技発展の重要なテーマだ。プレーレベルが均衡すれば、おのずと安全にもつながる。
現状はどうか。花園の1、2回戦は大差試合になることが少なくなく、昨冬の第102回大会では35試合のうち30点差以上のゲームが17試合(約49パーセント)、一昨年の第101回大会では22試合(約63パーセント)あった。日程を見ると、大会初日の12月27日に1回戦があるチームを除きすべて中1日の連戦で、決勝進出校は9日間で5試合を戦っている(一昨年は決勝のみ中2日だったため10日間で5試合)。昨今の高校生のフィジカリティとゲーム強度の上昇を考えれば、「危険」ともいえる状況だ。
選抜と7人制の開催時期を入れ替えるアイデアを最初に教えてくれたのは、ユース世代のエキスパート、元日本代表の野澤武史さんだった。日本協会ユース戦略TIDマネージャーとして全国各地で高校ラグビーの現場を回る野澤さんは、かつて花園に関してもこんな構想を語っている。
「カップ、プレート、ボウルのように実力ごとにカテゴライズして、負けたチームも試合ができるようにしつつ、中2日あけながら全チーム最大で4試合までに抑える。同じレベルのチームと勝つか負けるかわからないゲームを数多くやったほうが選手たちも絶対におもしろいし、負けから学んだチームが最終戦で勝利を収めるなんて素敵じゃないですか」
大会開催の準備から現場での運営まで奔走されている実行委員、スタッフの方々の尽力にはいつも頭の下がる思いだ。実現する上でさまざまなハードルがあることも重々承知している。一方で、これまでのやり方を続けるのが限界にきているのも間違いのない事実だろう。未来を担う若者たちのための英断を期待したい。