各国代表 2023.03.18

「我々は世界でNO.1になりたいんだ」 W杯見据えるフランス、欧州6か国対抗最終戦に臨む

[ 福本美由紀 ]
「我々は世界でNO.1になりたいんだ」 W杯見据えるフランス、欧州6か国対抗最終戦に臨む
先週のイングランド戦で2トライを決めたダミアン・プノー(Photo: Getty Images)


「まさにこういうゲームがしたかった。今大会、ここまで満足できていなかったが、今日、選手たちは『これこそフランス代表だ』という試合をした」

 先週の土曜日、ロンドンのトゥイッケナムにて歴史的大差でイングランド代表に勝利(53-10)した直後、ファビアン・ガルチエ ヘッドコーチ(以下HC)は声を震わせながらフランスのTV中継局のレポーターに答えた。目には涙が溢れていた。

 先週のはじめに、「今大会、まだ偉業を成し遂げていない。今がその時だ。この土曜日の試合で記憶に残るようなビッグゲームをしなければならない」と選手に告げていた。

「ここまでのところ、はっきり言っていまひとつだ。悪くはないが、我々は世界でNO.1になりたいんだ」

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 指揮官の指示通り、選手たちは、「全員がゲームプランを守り、それぞれの役割をしっかり果たし」(ロマン・ンタマック)、今大会、ようやくファンもメディアも納得させる最高のゲームを披露した。

 「練習したことが全てうまく機能し、連携も取れ、戦術通りに試合を進め、雨にも対応でき、しっかりコントロールできた。4年前はこのスタジアムで、前半30分で30点取られ、ハーフタイムの後ロッカールームから出て行きたくなかった。これまでの努力が報われた。今日はこの勝利を喜びたい。でも、これは一つのステップで、このチームの道のりはここで終わりではない」と試合後会見でアントワンヌ・デュポンが述べていたように、選手の表情からは一つのミッションを終えた満足感が伝わってきた。

 そして今週はスタッド・ド・フランスでウェールズ代表を迎える。第2節のアイルランド戦でレッドカードを受けて出場停止になっていた右PRウイニ・アトニオが戻ってきた。ベンチには今回もシピリ・ファラテアが控える。

 LOポール・ヴィレムセの負傷により、ロマン・タオフィフェヌアが5番を着ける。ベンチには11月の日本戦に後半途中出場したバスチャン・シャリュローが入る。練習ではFLシャルル・オリヴォンがLOに入ってプレーをしていた。アクシデントがあればそういうシーンも見られるかもしれない。

 BKは前節から不動だ。今大会第1節のイタリア戦で、デュポンとンタマックがスターティングでハーフ団のペアを組む22試合目となり、それまでのフランス代表でモルガン・パラとフランソワ・トランデュックの最多記録21試合を超えた。その後も記録を更新し続け、この試合は26試合目になる。

 このように集団的経験値を優先して強化を進めるのがガルチエHCの方針だが、そのことにより「チーム内に定着した空気が生まれ、さらに勝利を続けていくうちに、『聖なる炎』と我々が呼んでいるものを無意識に消してしまっていたのかもしれない。世界第1位のアイルランドと試合ができて本当によかった。多くのことを得ることができた」とレ・ブルーの指揮官は言う。

 そのアイルランド対イングランドの結果にフランスの優勝の可能性がかかっているが、「まず優勝を狙える位置にいなければならない。そのためにはウェールズと互角に戦わなければならない。フランス代表は長年ウェールズに苦しめられてきた。ウェールズには100キャップ、150キャップの選手がいる。シックスネーションズで5度優勝している選手もいれば、3度グランドスラム(全勝優勝)を経験している選手もいる。まず自分たちのことに集中することが重要だ」。

「確かにトゥイッケナムでの試合では満足できる点が多かった。しかし、改善点も多く見つかった。この試合はさらに強くなるための扉を開いてくれた」

 今大会でも優勝をあきらめてはいないし、優勝は叶わずともポジティブなムードで終えたいところだ。

 今週の合宿には、ガルチエ体制1年目のシックスネーションズで華々しく代表デビューを遂げたFBアントニー・ブチエが久しぶりに招集された。

 さらに、トゥールーズ所属でニュージーランドとオーストラリアの国籍を持つLOエマニュエル・メアフーも『トレーニングパートナー』として初招集された。203センチ、145キロのフィジカルでパワーだけでなく、運動量も多くハンドリングもいい。「ジェローム・カイノやジョー・テコリが引退してしまった今、敵のディフェンスに打撃を与えることができる貴重な選手」とトゥールーズのユーゴ・モラHCの評価も高い。

 メアフーがフランスに来たのは2018年11月。ワールドラグビーの5年在住ルールを満たすのは、2023年12月と言われており、今年のワールドカップには間に合わないと考えられてきたが、ニュージーランドのフォラウ・ファカタヴァの例もある。もしワールドラグビーにテスト資格を認められれば大きな戦力になると期待されている。メアフー自身もフランス代表でのプレーを希望している。

 シックスネーションズ最終戦であり、ワールドカップ前、最後の招集だ。この試合に集中しつつも、半年後の大会に向けて本格的に動き始めていることが感じられる。


【フランス×ウェールズ】
3月18日(土) 15時45分キックオフ(日本時間23時45分)
▼フランス代表 ウェールズ戦メンバー

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