国内 2023.02.23
元トップリーグチームの主将が迫る「エンジョイラグビー」の真髄。茗溪学園の芥川監督×流山ラグビークラブの川合代表

元トップリーグチームの主将が迫る「エンジョイラグビー」の真髄。茗溪学園の芥川監督×流山ラグビークラブの川合代表

[ 多羅正崇 ]



■怒るのは「意図のないプレー」

川合代表:芥川さんが生徒だった頃から茗溪学園は変わりませんか?

芥川監督:そうですね。とりあえずミスをして怒られた記憶がないです(笑)。教員になってみて分かることですが、教員の間でも新しいことにチャレンジできる雰囲気があり、助けられています。後輩の教員に対しても「とりあえずやってみよう」と言うようにしています。

——チャレンジできる風土の中で自主性を発揮した生徒たちは、卒業後にどう成長している印象ですか?

芥川監督:キャプテンやリーダーになる子が多い印象はあります。たとえば明治大学でキャプテンをやった福田健太(現トヨタヴェルブリッツ)ですね。自分で発信しなければならない環境なので、社会に出ても、いろんな場面でリーダーとして活躍する子は多いと思います。

川合代表:私は選手時代から現在まで、人事の仕事をしています。採用面接や社員との面談など、今まで数多くの人と接する機会がありましたが、決められたことをやる人は多いのですが、失敗を恐れずチェンレジする人は少ない傾向があると言えます。茗溪学園さんのように若い頃から積極的にチャレンジして、ミスをして、それを糧に成長していく環境、プロセスを多くの人に経験してほしいです。

芥川監督:ウチの場合は、僕が「これにチャレンジしよう」と提案しても、選手の側から「やってみたけど全然ダメですね」と突き返されることがあります(笑)

川合代表:関係がフラットなんですね(笑)。

芥川監督:今年から高校の監督もさせて頂いていますが、監督として一番上にいるというよりは、チームのリーダー陣の1人です。キャプテンやバイス、FWリーダーといったリーダー陣の中に自分も入っていって、「導きはするけれど一緒にチームを作っていこう」と伝えています。

——芥川監督も怒るときはあるんですか?

芥川監督:怒らないというわけではないです。怒るとしたら、意図がないプレーですね。その時は、あなたの意志は何ですか、あなたのプレーの意図は何ですか、と問いかけます。プレーに意図があれば、たとえミスをしても、厳しく指導することはないです。

川合代表:チーム・組織で行動する以上は、どうしてもヒエラルキーがあること自体はやむを得ないことと思いますが、上の立場の人が下と言われる立場の人に寄り添うことは、そうできないと思います。実践されているのはとても凄いこと。こうした環境だからこそ、選手はエンジョイできるんだろうと思います。ぜひウチのクラブにも採り入れたいです。

■ミニラグビーにGPS導入? 千葉・流山に誕生する「楽しむ」チーム

——川合さん達は2023年4月、千葉県流山市でコンタクトありのミニラグビーチームを創設されるそうですね。

川合代表:2020年に流山市で、5歳から小学生を対象にしたタグラグビーチームを立ち上げました。約2年半が経って本格的なミニラグビーを求めている子ども達が多くなってきたので、小学3年からの中学生を対象にしたミニラグビーチームを流山市で立ち上げます。グレイトホークスと同様、「子どもたちが楽しむ」ことを生命線にしています。

——勝利は二義的なもの、ということでしょうか?

川合代表:勝利も目指しますが、「楽しい」の先に勝利がある、と位置づけています。クラブメッセージとして「BE YOUR OWN COLOR」を掲げています。それぞれの個性を認め、讃え合う中で、一人ひとりの色を出してほしい。個性を認め合いながら切磋琢磨するチームにしたいです。

——練習にGPSを導入するそうですね。ミニラグビーチームでは珍しいと思います。

川合代表:自分の成長に目を向ける手段としてGPSを採り入れて、定量的に成長を確認してもらえたらと思っています。他者と比較するのではなく、自分自身と向き合ってほしいです。成長を確認する方法として、小学校で行われている体力測定も年3回実施します。また、私たちと似た価値観をもっているチームとの定期戦も予定していて、定期戦を通じてお互いの成長を確認して、認め合うことができればと。そして、自己肯定感を育んでほしいと願っています。

——ラグビーの伝統でもある「定期戦」は成長を確認する手段にもなりますね。

川合代表:最終的なゴールの一つとして、グレイトホークスのステートメントである「ラグビーのある風景を日常に」を流山市につくりたいと思っています。是非、日常的にラグビーがある茗溪学園さんと、今後ともお付き合いできればと思います。

芥川監督:確かに日常的にラグビーはありますね。日常にあるからこその「茗溪あるある」でいえば、生徒の多くがラグビーを経験しているので、「ペットボトル取って」と言われると、ラグビー部以外の生徒もスクリューパスで渡します(笑)。もちろん手渡しがよいですが(笑)。

川合代表:まさにそれです(笑)。普通の子どもたちがペットボトルでスクリューパスができる——そんな状況が、目指している光景のひとつかもしれません。ラグビーが日常的にある風景を流山市につくるために、そして、流山市からトップアスリートを輩出する日を夢見て、これからも様々な挑戦と失敗を繰り返しながら、「楽しむ」を追求していきます。

■2023年4月創設予定のミニラグビーチーム「グレイトホークス」
https://www.greathawks.com/

■2020年から千葉県流山市で活動するタグラグビークラブ、チーム名は同じ「グレイトホークス」
https://www.nagareyama-rugby.com/

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