【フランス/TOP14】バイヨンヌはお祭り騒ぎ。昇格からのプレーオフ進出なるか
「バイヨンヌはお祭り騒ぎ」
フランスのラグビー紙『ミディ・オランピック』の今週号の一面の見出しである。
今季、2部リーグから昇格したバイヨンヌが開幕からセンセーションを起こしている。リーグの折り返し地点となった年末の第14節を終了した時点で、プレーオフ進出圏内の6位に入っていた。
開幕前に誰が予想できただろうか。
開幕戦、アウェーでのトゥーロン戦に負けはしたものの、その後ホームでラシン92、ボルドー、ラ・ロシェル、トゥールーズ、トゥーロンと強豪チームを次々と破った。
先週も現在2位と好調のスタッド・フランセに競り勝って、ホームでは9戦9勝。スタッド・ジャン・ドージェは不落の要塞となっている。
開始早々、スタッド・フランセが先制トライを挙げるも、すぐにバイヨンヌもSOカミーユ・ロペスのPG、さらにゴール付近ラインアウトからモールを押し込んでトライを返す。
その後も均衡した状態が続いた。
残り時間6分、26-21でバイヨンヌがリード、自陣ゴール前でのスクラムでバイヨンヌが2度続けてペナルティーを取られる。
3度目はフリーキック。スタッド・フランセはスクラムを選ぶ。
今度はスクラムからボールを持ち出してトライを狙ったが、ゴールライン前でノックオン。バイヨンヌのスクラムでのペナルティに戻り、再びスタッド・フランセボールのスクラムとなる。
5回目のスクラムでようやくスタッド・フランセがトライ、26-26となり、コンバージョンが決まれば逆転だ。
狙うのは、カミーユ・ロペスと昨季までクレルモンでHBを組んでいたSOモルガン・パラ。精度の高いキッカーだ。
ゆっくりと時間を使うパラ。タッチライン沿いでスタッド・フランセのヘッドコーチのゴンザロ・ケサダが微笑んでいる。
もはや無敗記録もここまでかと思われた。
しかし奇跡が起こった。
ボールの位置を直そうとしたのか、パラが前に出た。レフリーからOKの合図を出されたバイヨンヌの選手が飛び出してきた。
それを見たパラが慌てて蹴ったボールはゴールポストを外れて行った。
スタンドは熱狂の渦。スタッド・フランセが蹴り返したボールをバイヨンヌは丁寧に繋ぐ。80分のサイレンが鳴る。とうとう敵陣10メートルでペナルティを獲得、ロペスが落ち着いて決めた。
スタンドは総立ち、絶叫状態だった。
バイヨンヌは2015年に2部リーグに降格して以来、トップ14と2部を行ったり来たりしている。
しかし今回は、トップ14に定着するためのチームづくりを進めてきた。
まず、年間予算を1450万ユーロ(約20億8500万円)から2150万ユーロ(約31億円)に増額した。
そして元フランス代表SOカミーユ・ロペス(33歳)やSHマキシム・マシュノー(34歳)、元アルゼンチン代表HOファクンド・ボッシュ(31歳)のような経験ある選手をリクルートし、チームを補強した。
「新たに加入した30代の経験のある選手のおかげで、3年前に昇格したチームよりもミスが少ない。3年前にすでにいた選手もその間に経験を積んでいる」とバイヨンヌのフィリップ・タイエブ会長は言う。
さらに来季はクレルモンFLアルチュール・イチュリアとワラビーズBKリース・ホッジが加入することが発表されている。
タイエブ会長が何よりも評価しているのは、「昨季2部リーグで歯を食いしばって戦い、勝ち上がってきた選手と、今季新たに加入した選手、そして新しいスタッフとが見事に混じり合って団結した一つのグループができている」ことだ。
また、スタジアムの陸上トラックを取り除いて座席を増設し、グラウンドと観客の距離を縮めた。
ホームゲーム全9試合でチケット完売。次節のカストル戦も早々に完売と発表されている。
「『疲れ始めた時に、サポーターに支えられているのが感じられる』と選手が言います。サポーターのパワーもラグビーのパフォーマンスです」
さらにタイエブ会長は続ける。
「バイヨンヌでプレーするということは、肉屋、パン屋、機械整備士と、街中のみんなに知ってもらい、試合中だけではなく、週7日、1日24時間、常に見られ、人々の話題に上がるということ。それが分かれば、選手はこのジャージーに、カルチャーに、DNAに誇りを持つ」
ラグビーでもDNAは譲れない。
「バイヨンヌにはプレーのDNAがあり、それを守らなければならない。そのためにバイヨンヌのエスポワール(アカデミー)やU18のプレーを見ます。彼らは果敢にボールを回してプレーしています。それがバイヨンヌのエスプリで、そこに私たちが現代ラグビーのタッチを加えます。今のところ、そのバランスがうまく取れているようです」
そう話すのは、戦術を担当しているジェラード・フレーザー コーチだ。
現在も6位を守っている。このままの勢いなら、昇格即プレーオフ進出もある。2009-2010シーズンのラシン92以来のことだ。
しかし、チームの全員が口を揃えて言う。
「目標はトップ14残留。数字の上で確実になるまでは」
そうなるのも、そんなに遠くないだろう。