ベン・スミスの教え。先発定着へ、井関信介[コベルコ神戸スティーラーズ/WTB]
スティーラーズの盛り上げ隊長は、この日も大きな声を出し続けた。
対するダイナボアーズのSOジェームス・シルコックに圧力をかけるためだ。
「10番を中心に戦ってくることは分かっていたので、とにかく声でプレッシャーをかけました。彼を抑えられれば必ずゲームの流れも傾くだろうと」
2月5日。井関信介が2試合ぶりに先発に復帰した。14番でフル出場。カウンターアタックの起点として何度もぶち当たり、49-30の勝利に貢献した。チームは3試合続いた連敗を脱した。
「先発を外れてしまった週にトヨタとの練習試合があり、そこでしっかりパフォーマンスを出せた。今日もとにかくボールを持って、一番の強みであるボールキャリーでアピールしようと。前半から積極的にいけたと思います」
1点差に詰められた直後の後半11分には、相手の反撃の芽を摘むトライをアシストする。右サイドを駆け抜け、WTB山下楽平につなげた。
「自分で(トライ)いきたかった」と悔しい表情を浮かべたが、「チャンスがあるところをしっかり見て、そこにボールを要求できた。それができたことが今日一番の収穫」と成長も感じられた。
練習試合の前週におこなわれた東京サンゴリアス戦では、そのボールキャリーができなかった。FW同士の短いパスやFW・BK間の連携でミスが起こり、外側までボールが回らなかったことも原因のひとつではあったが、井関はあくまで自分にベクトルを向けていた。
「自分とは反対にボールが展開される中でも、右(14番側)でずっと待ってしまった。9番の横や10番の後ろに顔を出したり、運動量をもっと増やさなければいけませんでした」
声を張り、動き回る役割は、グラウンド外にも及ぶ。
コロナ禍で開催は難しくなったが、それまでチームの飲み会の仕切り役は必ず務めた。週始めにおこなう、チームビルディングを目的としたアイスブレイクゲームの企画、MCも担う。
人前で話したり、場を盛り上げることは、昔から得意だった。「高校時代(天理高)は、先輩に言われて寮で毎日、一発芸をさせられていた。たぶんそこで鍛えられました」と笑う。