【コラム】スタイルを信じ切る――トンネル脱出のカギは。
ラグビーはボールゲームだ。そしてラグビーはコンタクトスポーツでもある。
試合では激しいコリジョンが連続する中、心身両面で重くのしかかるプレッシャーを跳ねのけ、あるいはかいくぐって、ボールをつなぎ前進するチームとしての力が求められる。うまい。速い。大きい。強い。賢い。どれも大切だがそれだけでは勝利に届かない。そこが競技の難しさであり、醍醐味であると思う。
この冬、日本一の栄冠を手にした帝京大学と東福岡高校は、ともに球技的スキルと格闘技的支配力を高い次元で兼ね備えたチームだった。存分にボールを動かして相手を振り回しつつ、圧倒的なフィジカリティによってスクラムやブレイクダウンをねじ伏せる。ディフェンスにプライドを感じさせるのも共通点で、球を持たない時にも厳しく体を当てて圧力をかけ続けた。だから他校はつけ入る隙がなかった。
高校生ばなれしたアタッキングラグビーで旋風を巻き起こした花園準優勝の報徳学園も、同様の強さがあった。FL三羽了、NO8石橋チューカ、CTB炭竈柚斗の象徴する一人ひとりの推進力こそは、ほれぼれするようなオープンスタイルの源泉だ。おもしろいようにパスをつないで走り回るチームは、ぶつかり合いでもたくましかった。
どれほど優れたテクニックを有していても、コンタクトのバトルで対抗できなければ持ち味を発揮させてもらえない。ボールゲームの要素だけでは勝負できないラグビーの困難なところだ。実際、ゲームのレベルが上がるほど接点のせめぎ合いは激しさを増し、その優劣がダイレクトに試合展開を左右するようになる。
1、2回戦で思い通りに攻めまくって快勝したチームが、対戦相手が強くなる次の試合では手も足も出ず完敗を喫する。そうしたケースは高校、大学いずれの大会でもしばしば起こる。前に出られていたところを逆に押し戻され、ボール争奪局面を支配されて攻める機会を作れなくなるからだ。その結果、オセロの白と黒が反転するように、内容も勝敗もまるきりひっくり返ってしまう。
できていたことができなくなると、自分たちの戦い方に自信を持てなくなる。今季よりリーグワンのディビジョン1に昇格、ここまで5連敗と苦しい戦いが続く花園近鉄ライナーズの現状もそう映る。ディビジョン2なら敵なしだった自慢の攻撃力が、上位リーグでは突出した強みとはならない。同じ昇格組ながら、運動量とタックルを軸にしたディフェンシブなスタイルで好成績を残している三菱重工相模原ダイナボアーズとは対照的だ。
どのエリアからでも果敢にボールを動かして仕掛けるラグビーは魅力的だ。やるほうも観戦するほうも楽しい。ただしそこには、表裏一体の危うさもひそんでいる。ゲインラインの攻防で差し込まれると、途端にシステムが機能しなくなるからだ。ボールを保持する時間が長くなるぶん、コンタクト回数と走行距離が増え、ダメージもかさむ。