コラム 2023.01.15
【コラム】ギョーザ耳の司令塔が遺したもの

【コラム】ギョーザ耳の司令塔が遺したもの

[ 野村周平 ]

 あまりタックルのイメージがなかったので聞くと、「1年生の終わりか、2年生の始めのころにわきました」と答えた。

「スキルがうまい選手はほかにもいる。チームのために体を張れる選手になりたい、みんなの信頼を得たかった。だからタックル練習をいっぱいやりました。やはり、試合に出たかったので」

 先輩のSOには北村将大(現トヨタヴェルブリッツ)がいた。彼と競争する毎日があり、常に向上心を刺激された。自他の強みも弱みも知ることができた。だから、高本はスキルフルかつ体を張れる司令塔に成長することができた。

 そのサイクルのバトンは、高本が「下級生であんなに強気なリードはできなかった」と評価する1年生の大町佳生(長崎北陽台)らへと引き継がれていく。

 高本はいう。「帝京の歴代の10番は(卒業後も)いい結果を残している。僕も出来ることや知識をなるべく後輩に、と思ってやってきました」

 一人ひとりの主体的な行動を促す様々な仕掛けが帝京にはある。それが日々の小さな積み重ねにつながっている。「正しい努力」こそが、帝京の強さの根幹なのだ。

「新」が外れる相馬監督は、どんな言葉を紡ぐのか。「優れるな、異なれ」の蔵森はどんな青年に成長するのか。生粋のリーダー気質の3年生にやんちゃな気配漂う2年生もいる。多彩な個性の成長が、王者の懐を深くする。

大学選手権準決勝、唯一の失トライ場面でも、最後までカバーに走った高本幹也。深く踏み込みにいく(撮影:松本かおり)
【筆者プロフィール】野村周平( のむら・しゅうへい )
1980年生まれ、東京都出身。慶應義塾大学卒業後、朝日新聞入社。大阪スポーツ部、岡山総局、大阪スポーツ部、東京スポーツ部、東京社会部を経て、2018年1月より東京スポーツ部。ラグビーワールドカップは2011年大会、2015年大会、2019年大会、オリンピックは2016年リオ大会、2020東京大会などを取材。自身は中1時にラグビーを始め大学までプレー。ポジションはFL。

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