国内 2023.01.13

イーグルスの田村優が味方を勇気づけるわけ。「自分たちの力を、僕は、信じている」

[ 向 風見也 ]
イーグルスの田村優が味方を勇気づけるわけ。「自分たちの力を、僕は、信じている」
イーグルスの田村優。前節、ファフ・デクラークがシンビンの間、SH役をしている場面(撮影:松本かおり)


 大丈夫。大丈夫。過去に日本代表として2度のワールドカップに出場した田村優は、所属する横浜キヤノンイーグルスのメンバーを声で勇気づけていた。

「いろいろな中(グラウンドレベル)でのことが起きていたので、皆、80分を通して『アップ、アップ』していて、自分たちがやろうとしていたことができていた時が少なかった。そこが、できるように、と」

 1月7日、東京は味の素スタジアム。加盟するリーグワンの第3節で、昨季準優勝の東京サントリーサンゴリアスに挑んでいた。司令塔のSOで先発した。

 序盤こそ複層的な仕掛けを機能させ、前半2分には速攻から先制トライを挙げた。

 2点差を追う18分には、相手の1人が危険なプレーで退場した。イーグルスは相手よりも1人多い状態となり、直後のペナルティゴール成功で8-7と勝ち越した。

 ところが、その後が続かなかった。接点への援護が遅れて球を獲られたり、守りで反則を重ねたりし、前半を8-13とビハインドで折り返してしまった。

 前半36分以降の10分間、後半37分から試合終了後は、イーグルスの選手にも10分間の一時退場処分が出た。数的優位を有効活用できた瞬間は、後半17分、23分のトライシーンなど一部に限られた。

 田村が「キヤノン、大丈夫!」と繰り返していたのは、そのためだ。昨季まで主将も務めた33歳はまず、味方を我に返らせたかった。

「プレッシャーがかかった時に規律(が乱れた)。なかなかきょうは、10番(SO)にとってラグビーをするのがハードでした。まぁ、それもしょうがないかな、とは思うんですけど」

 結局、23-32で屈し、戦績を1勝1敗1分とした。

 立ち上がりこそ好調に映っていたことを指摘されても、田村は「試合は80分、ある」。2連勝となったサンゴリアスについて聞かれ、再度、試合全体の流れを振り返る。

「(サンゴリアスは)14人の時の方が、圧力を感じました。やることがより徹底されて、それに僕たちのペナルティがついてきて、14人に対して苦戦する自分たち(イーグルス)に自分たちがフラストレーションをためて…という感じになった。もうちょっと落ち着いてやれればよかったかな、とは思います」

 2018年度は前身のトップリーグで16チーム中12位と苦しんだチームは、一昨季から沢木敬介監督を迎えた。前年度のリーグワン初年度では1部で12チーム中6位と、4強に迫った。

 着実に進歩してきたが、この日は沢木がかつて率いたこともあるサンゴリアスに跳ね返された。

 田村は改めて、「(かねてチームが目指している)トップ4って、なかなか簡単じゃない」。ただ、掲げた目標からは逃げない。

「僕たちのやることを信じる。そこしかない」と、勝負に挑む前提の心構えを改めて強調する。今季から現役南アフリカ代表SHのファフ・デクラークが仲間になったのを踏まえ、さらに続ける。

「自分たちの力を、僕は、信じている。ここからどう向かうかが大事。あきらめるか、また頑張り直すか…。ファフみたいないい選手が入っても、本質のところは自分たち(既存の選手)で変えなきゃいけない。いい方向に行き続けるしか、ないと思う」

 自身は好調を保つ。秋のプレシーズン期間には日本代表活動へ参加しなかったことで、身体のメンテナンスに時間が割けた。

 万全の状態で12月18日の開幕節を迎え、持ち前の判断と正確なキックに加え、防御でも際立つ。

 14日には東大阪市花園ラグビー場で、初白星を目指す花園近鉄ライナーズとの第4節へ出る。統率力とパフォーマンスで、組織としての自信を取り戻す。

PICK UP