コラム
2022.12.16
【コラム】目撃せよ。第二、第三のコウタロウ、タクヤ、そしてリクを…!
まだ広くは知られていないとびきりの原石が、まばゆいほどの光を放つ瞬間に立ち会う。スポーツ記者の最上の喜びのひとつといえるだろう。
個人的に忘れられないのは2008年の1月2日、花園第2グラウンドで見た当時中学3年生の松島幸太朗の躍動だ。全国ジュニア大会準決勝、東京都スクール選抜のFBとして、圧倒的戦力を誇る大阪府中学校選抜の防御網を文字通り切り裂いた。ブカブカの短パン姿ではずむように駆ける走りの記憶は、今も鮮明に残っている。
2010年6月6日の関東高校大会、栃木県総合運動公園で隣のグラウンド越しに目撃した深谷高校1年生の山沢拓也の衝撃の100メートル独走トライの光景もよく覚えている。体の軸がまったくブレず、ステップを切っているのにまるでスピードが落ちない。試合後、関係者に「本格的にラグビーを始めて2か月」と聞いて、思わず「天才発見!」と胸がときめいた。
そしてこの12月。ひとりの大学1年生のプレーに心を奪われた。花園ラグビー場で行われた大学選手権3回戦。関西3位の同志社大学に挑んだ九州代表の福岡工業大学の背番号12、時任凜空(ときとう・りく)の才気あふれるパフォーマンスは、まさに際立っていた。
開始6分、ラインアウト起点の右展開で相手ディフェンスに接近しながら絶妙の位置へキックを転がし、いきなりあわやトライというシーンを作る。続く18分、糸を引くような鋭く美しい軌道のカットパスでWTB早田優生のビッグゲインを引き出すと、25分には長身の懐の深さを生かしたオフロードでCTB米村龍雅のラインブレイクをお膳立て。60メートル以上の飛距離を誇る滞空時間の長いロングキックでも、場内をどよめかせた。
全国レベルの強度とスピードに慣れてきた後半は、さらにいかんなく実力を発揮する。
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