国内 2022.12.12

新潟食料農業大が来季3部へ 【関東大学リーグ 下部入替戦】

[ 見明亨徳 ]
新潟食料農業大が来季3部へ 【関東大学リーグ 下部入替戦】
前半14分、新潟食農大ゲームキャプテンの尾沼尚樹が先制点を奪った(撮影:見明亨徳)


 関東大学リーグ戦、来季2023年シーズンの残留・昇格を争う入替戦。2部から5部の入替戦は12月11日、一斉におこなわれた。

 今季4部に昇格し7戦全勝優勝を遂げた創部3年目の新潟食料農業大は、国士館大グラウンドで3部8位の玉川大と対戦した。3年生が最上級生という新潟食農大がかつてリーグ戦2部にも在籍した相手に挑み、33-7で完勝し3部昇格を果たした。

 キックオフから新潟食農大は自慢のフォワードが玉川大ゴール前へ迫る。ブレークダウンでからむと玉川大が反則を犯す。手堅くPGを狙うかと思われたが「前半からフォワードで行く」(谷崎重幸監督)のプラン通りスクラムを選択。ここは得点機を逃したが、14分、右ラインアウトを得るとモールで押し込み、6番をつけたゲームキャプテンのFL尾沼尚樹(2年、常翔学園)が先制トライを奪った。

 その後もPGを狙わずにスクラムやラインアウトなど「自分たちの強み」(尾沼)でゲームを支配した。玉川大にノットリリースが課された21分、ハーフラインのスクラムから右WTB土居京将(1年、新田)がゲインしフォワードへ。パスを受けた尾沼が2本目のトライを左中間へ決める。「特に安心感はなかった。集中力を切らさず舞い上がらないようにチームをコントロールしました」とキャプテンは冷静だった。

 今年5月に重傷を負いチームを離脱した主将・石川智也(3年、桐生第一)も、「キックで敵陣へ入りディフェンスでペナルティを奪う」という自分たちのスタイルを体現した仲間を信じていた。1年生LO渡邉太気(石見智翠館)も愚直に前へボールを運び続けた。

 39分にはキッカーのCTB荒城侃汰(2年、郡山北工)が玉川大ディフェンスを振り切り3本目のトライ、自分でコンバージョンも決めて19-0で折り返した。

新潟食農大のCTB荒城侃汰が前半最後に3トライ目(撮影:見明亨徳)
玉川大の須崎信孝監督(撮影:見明亨徳)

 前半で実に8個の反則を犯した玉川大。試合前には須崎信孝監督が「ペナルティをしないように。ディフェンスから」と確認したが、新潟食農大の圧力が勝った。

 後半8分ころから玉川大が新潟食農大ゴール5メートル前に押し寄せた。しかし、ラインアウトから組んだモールではオブストラクション、11分までに3回組みなおしたマイボールスクラムでも得点できず。すると24分、久々に玉川陣へ入った新潟食農大、SO柴崎尋(1年、前橋育英)が右中間へキックパス、左WTB亀澤駿介(1年、松山聖稜)がキャッチしインゴールへ運んだ。

 34分にもWTB土居が快速を見せトライ。33-0と試合を決めた。
 玉川大は40分過ぎにスクラム起点でWTB浦瀬瑛紳(3年、茗渓学園)がようやく初トライをあげるも敗れ、降格になった。

 勝った新潟食農大の谷崎監督は、「すべて想定外の試合でした。(天候などで)2週間で2回しか練習できなかったが、バックスリー(WTB、FB)のディフェンスが良かった。入替戦で今年一番いいゲームをしてくれた。」と試合前の不安を打ち消した選手たちの成長を称えた。石川主将はチームの目標について「毎年、違うステージ、違う相手と試合をする」と話した。来季の3部リーグに向けて2部昇格を照準に準備を進める。

新潟食農大の谷崎重幸監督(撮影:見明亨徳)
創部3年で3部昇格を勝ち取った新潟食農大。次は2部を目指す(撮影:見明亨徳)

『2部・3部入替戦は2部の朝鮮大、国士館大が残留』

 2部・3部入替戦。2部7位の朝鮮大と3部2位の東京農業大は朝鮮大グラウンドでおこない、朝大が確実に得点を取り切り31-17(前半17-5)で残留を果たした。

朝鮮大の金慶生主将。「隙を見せない」がキーワードだった(撮影:見明亨徳)

 昨年、85-10の大差がついた同じカード。内容は異なった。
 朝鮮大は登録メンバーが16人。唯一のリザーブ尹湧志(ユン・ヨンジ、3年、愛知朝高)はフォワードで一度、退部していたが再び練習に参加した。 農大が「昨年負けたフィジカルを1年間強化してきた」(小野崎慧監督)通りプレッシャーをかける。「ロースコアの展開に持ち込む」は朝大、呉衡基(オ・ヒョンギ)監督のプラン。
 先制は朝大。10分、1年WTB文銘一(ムン・ミョンイル、大阪朝高)がトライを奪う。
 農大は16分、こちらも1年生FL岡安勇弥(東京)がファイブポインターに。5-5と同点にした。
 試合中、朝大主将のCTB金慶生(キン・ギョンセン、4年、大阪朝高)は「隙を見せないように」と呼びかける。
 22分、WTB文が2本目、インゴールへ運んだ。キッカーも兼ねるCTB金がコンバージョンを成功し、12-5と勝ち越し。前半終了前には左WTB高利光(コ・リグァン、4年、東京朝高)が左タッチ際を走り切った。17-5で後半へつなげた。

朝鮮大WTB高利光が後半最初のトライ(撮影:見明亨徳)

 後半5分には、スクラムから展開すると高が2本目のトライを奪った。コンバージョン成功で24-5とする。
 農大は9分、昨年度、全国高校大会準優勝メンバーの1年SO武藤倖吉(國學院栃木)が魅せる。敵陣へ入るとディフェンス網を破り右中間インゴールに持ち込んだ。
 朝大も2年前の全国高校大会4強メンバーが働いた。14分、NO8金智成(キン・チソン、2年、大阪朝高)が5点を奪った。
 農大もあきらめず、ラインアウトからモール、ラックでフェーズを重ね、主将のPR遠所泰良(4年、秋田中央)がポスト左へ運び、コンバージョンも決まって31-17。残り約20分間の勝負になった。

朝鮮大は前へ出るディフェンスで東京農業大に刺さる(撮影:見明亨徳)

 しかし勝利の女神は「待つよりも前へ出て低く突き刺さるタックル」(金主将)を続けた朝大に微笑んだ。けがで14人となり、残り3分にはイエローカードで一時退場者が出て13人となったが、耐えた。金主将は35分、37分と敵陣で仲間が勝ち取ったペナルティからPGを狙うも外し、得点差を広げることはできなかった。「今季はいつも16人、17人で戦ってきた。ほっとしています。キックは1本目のPGが外れて少し気持ちがゆらぎました」。高校時代の同級生、李承信(リ・スンシン)は今や日本代表キッカーとなっている。「僕は大学からキッカーに。スンシンがずっと上」とほほ笑んだ。

残留を果たした朝鮮大ファミリー(撮影:見明亨徳)

<関東大学リーグ戦 下部入替戦結果>
■2部・3部入替戦
・朝鮮大(2部7位) 31-17 東京農業大(3部2位) 朝鮮大が2部残留
・国士館大(2部8位) 46-14 駿河台大(3部1位) 国士館大が後半突き放し2部残留

■3部・4部入替戦
・千葉大(3部7位) 21-15 駒澤大(4部2位) 千葉大が3部残留
・玉川大(3部8位) 7-33 新潟食料農業大(4部1位) 新潟食料農業大が3部昇格

■4部・5部入替戦
・東京理科大(4部7位) 36-5 東京外国語大(5部2位) 東京理科大が4部残留
・横浜国立大(4部8位) 28-38 埼玉工業大(5部1位) 埼玉工業大が4部昇格

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