コラム 2022.12.06

【ラグリパWest】ナガタク、冬のセレクション [炉ばた ワコー/大阪市中央区]

[ 鎮 勝也 ]
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【ラグリパWest】ナガタク、冬のセレクション [炉ばた ワコー/大阪市中央区]
山海の珍味を安価で提供する「炉ばた ワコー」のオーナー店長、「ナガタク」こと長澤拓哉さん。この冬の主力商品、タラ白子(左)と灰干しさんまを持ってご満悦。焼き場の上には下仁田ねぎが乗っている。長澤さんもラグビーマン。店内には3年前のW杯のポスターがいまだに貼ってある



 冬の美味しいもの。廃墟の中と思わせる「炉ばた ワコー」で食べられまっせー。

 この炉端焼きの店は「食いだおれの街」、大阪の中心にある。任しとき。

 オーナー店長の長澤拓哉はん、メニューの説明してよ。
「はいよー」
 このナガタクが来て、キムタクが来ると期待されたコンパが大荒れになった。嫁に言わすと「うちのカピバラ」だとか。

 まずはタラ白子。北海道産やで。
「価格高騰の中で狙い目です。魚屋も安い商品を作って、息抜きせなあきません」
 さすが魚屋出身。よくわかってはる。

 湯引きした白子は濃厚でクリーミーな味わい。割りばしがくっつくねっとり感や。それを地元・八尾名物の旭ポンズでいただく。尖っていないまろやかなすっぱさ。歌手のやしきたかじんはんも愛した一品や。

「このポンズ、学校の横で作ってましてん」
 ナガタクは縁を大事にする。ラグビーを始めた高校は八尾南(現・八尾翠翔)。黄緑と深緑の段柄ジャージーでしたな。しんどいだけに優しくなれるフロントロー出身ですわ。

 続いてはさんまの灰干し。和歌山産。
「開いて、火山灰をまぶして一夜干しにしたものです」
 味に深みが出て来ますな。塩っけがええ感じ。これもサクサク入るなあ。

「数が少ないので、本当は僕の所には回ってこないんですが、コロナで閉めた店が出て来て、卸してもらえるようになったんです」
 花も嵐も乗り越えて。継続は力、やね。

 さらに下仁田ねぎ。これも本場、群馬産。この時期、甘みが増して美味しいなあ。焼肉用をベースにした秘伝のタレでいただく。

 さんまの灰干しも下仁田ねぎも備長炭を使って焼くんか?
「大阪ガスでーす」
 火力安定。調節自在。正しい選択やね。

 なんか、このもずくもちゃうなあ。腰があってこりこりしてるで。
「日本一の漁師と言われてはる森脇さんからのおすそ分けです」
 島根にいてはる森脇康之さんやな。アワビやサザエでは特に名が通っている。

「アワビなんて、人の顔くらいの大きさですわ。こんなんいるんや、って感じです」
 それ、ここでいただけんの?
「無理でーす。みんな三ツ星レストランに直行でーす。ウチやったらこれくらいかな」
 人差し指と親指をちょっとだけ広げた。

 ナガタクは八尾南を卒業後、魚市場で働いた。その時、名仲買人の三坂英明はんを知る。この人のサポートが大きい。森脇はんもそっからの紹介やな。人に可愛がられる。さすが、カピバラ、もといナガタクやな。

 旬の海鮮は白はまぐりもあり。焼いて醤油を差す。チゲ系の鍋は甘辛。丁寧に処理した牛すじ、こんにゃく、豆腐が入っておる。
「芋も時期。寒い方がいいです」
 じゃがいもは「インカの目覚め」、さつまいもは「安納芋」。肉類もスペアリブ、牛ハラミ焼き、牛ホルモンなど充実や。

 大阪では希少価値の日本酒「日本城」(にほんじょう)も健在。切れのある中辛。飲みやすいで。ビールは料理に合うキリンや。

 カウンターのおっさんがうなってはるで。雄山先生ばり。やばい雰囲気や。
「あるじを呼べ」
 はいはーい、カピバラでーす。
「なんや、これらの料理は?」
 へっ、どないかしましたか?
「全部、うまい。うま過ぎるやないかい。少しはまずいもんを出さんかい!」
 これ、実話です。

 美味しいものまみれのナガタクは48歳にして、またラグビーまみれでもある。指導員を兼務。阿倍野ラグビースクールとNPO法人「大阪狭山スポーツクラブ」やね。土曜は大阪狭山、日曜は阿倍野の図式ですわ。
「子供に付き合うのは楽しいです。それに地域貢献にもなります」
 商売だけやない。奉仕の心もある。

 次男の星映(しょうえい)もラグビーマンや。高校は東住吉。部員は1年生のみ3人ということもあって、主将をつとめている。
「僕は一列しか無理やけど、息子はバックスやったらどこでもできます」
 器用で素直、コミュニケーション能力も高い、と言ったあたりで嫁がかんで来た。
「全部、私の血ですの。おほほほほ」
 嫁は接客担当としてナガタクを支える。

 お店は父・義弘はんから始まってナガタクで3代目。今年店を継いで26周年になる。その感謝も込めて、ささやかなお返しや。
「ラグリパWestを見た、と言ってもらえれば、振舞い酒をさせてもらいます」
 ひとり小グラスで一杯。日本酒でまずは乾杯や。未成年はみかんジュースね。

 年内は30日が最終営業日。振る舞い酒はここまで。花園の2回戦を見てから、一杯やれまっせ。東花園駅と真逆の北にある近鉄吉田駅まで歩けば、電車1本で行ける。

 肝心の値段やが、まあ、ひと通り飲み食いしてひとり5000円もあればいけるはず。元々、メニューに値段は書いてないが、ビビることなかれ。ワコーでよい2022年の締めくくりをやって、さらによい新年を迎えたりやー。

◆炉ばた ワコー◆
■住所 〒541−0054 大阪市中央区南本町3−4−9 本町センター街内
■電話 06−6252−2757
■営業時間 17時〜深夜2時
■定休日 土日祝(土曜は貸し切り時のみ開店、メニューはコースのみ、要相談)
■座席 46席(カウンター9、テーブル37)
■予約 可(ただし、食材が見える人気のカウンター席は不可。開店前に並びましょう)
■最寄り駅 大阪メトロの本町駅。7番出口から徒歩2分。
■喫煙 可(カウンターは広めにとってあるので、煙は気になりません。念のため)

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