国内 2022.12.02

【全国大学選手権】日本代表・竹内柊平の刺激を受けてプロップ成長中。奮闘のIPUを破り、福工大3回戦へ

[ 編集部 ]
【全国大学選手権】日本代表・竹内柊平の刺激を受けてプロップ成長中。奮闘のIPUを破り、福工大3回戦へ
福岡工業大は試合の入りが良かった。(撮影/早浪章弘)
福岡工業大のスクラメイジャー、3番の鍋島秀源。(撮影/早浪章弘)
IPU・環太平洋大も常に競り続けるパフォーマンスを見せた。(撮影/早浪章弘)



 31-25の勝利はFWの力強さで引き寄せた。

 11月27日、パロマ瑞穂ラグビー場でおこなわれた第59回全国大学選手権の2回戦。1回戦で八戸工業大学(北海道・東北地区代表)に57-0と完勝した福岡工業大(九州学生リーグA1位/以下、福工大)は、IPU・環太平洋大学(東海・北陸・中国・四国地区代表/以下、IPU)に6点差で勝って3回戦へ駒を進めた。
 12月11日、関西大学Aリーグの3位と戦う。

 先制点を奪ったのは福工大。ハーフタイムは19-18で同チームが僅かな差でリードする試合展開だった。
 勝者は前半11分、FWが力強かった。相手反則からPKで前進し、ラインアウト後のモールでトライを奪う。CTB時任凛空のゴールキックも決まり7-0とした。

 20分、IPUにモールでトライを返されるも(7-5)、その5分後には福工大も再びモールを組んで押し切る。時任のキックも決まって14-5とした。
 31分、PGで差を詰められた(14-8)。しかし35分、WTB讃井良太が巧みなボディコントロールから力強く走り切ってトライを奪った。

 福工大は19-8 と差を広げるも、前半終了間際にIPUに1T1G1PGを追加されて19-18とされてハーフタイムを迎えた。

 後半13分、IPUのNO8ティエナン・コストリーにこの日2つめのトライを奪われて(SO前坂梨空のGも成功)一時は19-25とリードされる時間帯もあった。
 しかし福工大は、FWのセットプレーで優位に立っていたから慌てなかった。

 苦しい状況でも失点を続けることはなく、31分にモール、スクラムから好機を作る。
 WTB宗貞良武がインゴールに入り、時任がゴールキック成功で26-25と逆転。38分にもNO8ハラホロ・トコラヒがトライを奪い、ファイナルスコアを刻んだ。

 試合後、宮浦成敏監督は「IPUが強みを出した。留学生を中心とした彼らのモメンタムをひとつずつ消すことが大事でした。守りから攻めよう、と。しかし反則も出てしまい、思ったようにはいかなかった。修正点を直して次の試合を戦いたいと思います」と80分を振り返った。

 勝因について語ったのはPR今村彰吾共同主将だ。
「今年のチームの強みはFW。セットプレーで負けず、留学生の、特に3番、8番の選手をマークし、当たり負けないことを心がけました。スクラムでペナルティを取り、ラインアウト、モールからもトライをとれたので勝てた」

 もうひとりの共同主将、SH福山浩太郎も「前半はいい形で入れたが、不用意なミスが出てしまった」と反省を口にした後、「(苦しい状況で)我慢できた」と話した。
「相手は重い選手も多かったので、テンポを上げ、外を攻めたらいける自信がありました」

 指揮官も選手たちも、実力を蓄え、初めて全国大学選手権に出場したIPUに敬意を払っていた。
 宮浦監督は、「IPUのようなチームが出てくるのは、地方が盛り上がるためにもいいこと」と話した。

 福工大の中にも、地方発の力に勇気づけられている選手たちがいた。
 現在日本代表に入り、活躍しているPR竹内柊平(浦安D-Rocks)は九州共立大学出身。同じ九州学生リーグでプレーしていた選手だ。

 同じPRの今村主将は、「大学ラグビーは関東、関西が強い中で、九州(学生リーグ)から日本代表になった。練習を積み重ねていけば上でも戦えることを証明してくれた。もっと頑張ろうと、励みになりました」と話した。
 自分が1年生のとき、竹内は4年生だった。「当時の九州共立大はFWが強かった」と回想する。

 宮浦監督も竹内のことを覚えている。
「当時はLOで機動力があった。セブンズでも活躍し、馬力のある、いいペネトレーターでした。性格も良かったのがその後の飛躍につながっていると思います。LOで積み上げたものが、いまにつながっているのではないでしょうか。彼が(トップ選手として)出てきたことで、(九州の)多くの選手たちが刺激を受けています」

 この日3番として、スクラム、ディフェンスで働き、勝利に大きく貢献した鍋島秀源(ひでとも)も、竹内に大きな影響を受けている一人だ。
 176センチ、115キロ。トイメンを押し込み、低く、激しいタックルを何度も繰り返した。

 自身のパフォーマンスを振り返り、「相手の留学生をキーマンとしてマークしていました。1人で倒せないなら、2人で倒す。それを徹底したから勝てたと思います」

 鍋島自身、気持ちが表に出るプレーぶりだった。
「留学生をひとりで止めて、周りを生かせないかと考えてプレーしました。自己犠牲の精神」
 いつも熱い。気持ちを前面に出して動く。

 日本代表の竹内を「自分の目標」とする。
「一歩でも近づけるように、と思っています」
 自分が1年生の時、竹内はLOだったから直接組み合ったことはない。しかしいまはSNS経由でつながり、「スクラムで分からないことがあったら教えてもらっています」という仲になった。
 向上心は高い。

 福岡・八女にある輝翔館(県立の中等教育学校)の中学1年生の時、ひとつ上の兄に続いてラグビーを始めた。
 最初からPRで1番としてプレーしていた。大学2年から3番にポジション移動。フィジカリティの強さには自信がある。

 よく食べ、よくトレーニングし、頑丈で大きな体躯を手に入れた。「人の3倍は食べる」と話す。
「焼肉なら飽きるまで食べ続けられます」
 好物は牛タン。食べ放題に出かけ、食欲を満たしているという。

 卒業後はリーグワンのチームでプレーすることが決まっている。
 竹内柊平が歩んだ道を辿り、大きく飛躍したい。



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