ワールドカップ 2022.12.01

【Web版 キンちゃんのRWC2023フランス見聞録】第1回トゥールーズ編 その1

[ 木村卓二 ]
【Web版 キンちゃんのRWC2023フランス見聞録】第1回トゥールーズ編 その1
ナビゲーターの大野均さん。日本代表キャップ98を持つレジェンド。現在、東芝ブレイブルーパス東京のアンバサダーを務めている。



 ラグビーワールドカップ2023年フランス大会への緊張と興奮のカウントダウンが進む中、元日本代表のレジェンドが現地視察に赴いたのは、今年の6月だった。ラグビーマガジン誌上で展開した『キンちゃんのRWC2023フランス見聞録』のWeb版を掲載する。
 愛称「キンちゃん」。日本代表最多キャップ98、東芝ブレイブルーパス東京アンバサダーの大野均さんが、ジャパンのプール戦会場3都市と、その周辺の魅力ある街を紹介する。第1回目は「ラグビーの街」トゥールーズ。その街の全体像をご覧ください。

◆バラ色の街、ラグビーの街

 2023年ワールドカップ(以下、W杯)、ジャパンのプール第1戦と第3戦の会場となる、フランス南西部オクシタニー地方の首府、オートガロンヌ県の県庁所在地トゥールーズ。
 ジャパンのベースキャンプ地ともなるこの街は、ユネスコ世界遺産のサンセルナン大聖堂を始め、赤褐色のレンガ造りの建築物が連なり、「バラ色の街」と呼ばれている。
 キンちゃんにとっても思い出深い場所だ。

「私自身にとって初めてのW杯となった2007年大会、トゥールーズでフィジーと戦いました。終盤はスタジアム中に『ジャポン!』コールが響き、日本代表の背中を押してくれました。惜しくも4点差で敗れてしまいましたが、オフだった試合翌日、リラックスしに街へ出てみると、街中の人が試合を讃えてくれ、温かく迎えてくれました」

トゥールーズの街並み。© Rémi Deligeon
サンセルナン大聖堂
中世イタリア出身の神学者トマス・アキナスの遺体が安置されるジャコバン修道院の中庭。©︎Nathalie Casado – Agence d’attractivité Toulouse Métropole.

 トゥールーズは、フランスを代表する「ラグビーの街」。そのことは、空港に降り立った瞬間から伝わってくる。航空宇宙産業の街として知られるトゥールーズの顔でもあるその空港には、地元のクラブ、スタッドゥ・トゥールーザンのオフィシャルショップが出店しているばかりか、一般の土産物店に市の紋章入りラグビーボールが陳列されているほどだ。

 街の中心に位置するキャピトル広場にも、ラグビーの熱気が渦を巻く。市庁舎がそびえ立ち、レストランやカフェが並び、露店の市も軒を連ね、洗練された雰囲気と活気が共存するこの広場は、サポーターが大挙集う場所でもある。パブリックビューイングが開催されることもあれば、市庁舎のバルコニーから、スタッドゥ・トゥールーザンの選手たちが、サポーターに優勝報告の挨拶をすることも。なお、同クラブは、現在のTOP14、フランス選手権で、史上最多21回の優勝を達成している。

空港にあるスタッドゥ・トゥールーザンのオフィシャルショップ
キャピトル広場にはレストランや露天市が並ぶ。©Arnaud Späni
市庁舎内を訪問するキンちゃん。「トゥールーズには、歴史を感じる建造物が多く、それらが人々の暮らしに溶け込んでいます。街に緩やかな時間が流れていて、とても心地良く感じます」

◆熱戦のスタジアム

 W杯の会場となるのは、スタッドゥ・トゥールーザンがホームゲームを戦うエルネスト・ワロンではなく、ガロンヌ川の中州に位置する、市所有のスタジアム・ドゥ・トゥールーズ。公共交通機関の利用で、空港からは1時間弱、鉄道駅からは30分程度でアクセス可能。サッカーのトゥールーズFCが間借りする格好となっているこの競技場、サッカーの聖地、イングランドのウェンブリー・スタジアムと似ていることから、“プチ・ウェンブリー”と呼ばれることもある。
 現役時代、献身的に体を張り続け、試合後には最高で8キロ体重が減っていたキンちゃんだが、初めて医療処置を受けたのは、他ならぬこのスタジアムだ。

「割と自分は汗っかきなので、夏場だと4、5kgキロ減るのは当たり前でしたが、試合後に動けなくなって点滴を受けたのは、2007年W杯フィジー戦が初めてでした。あの時は6kg減っていました。それでも勝てず、W杯の厳しさを思い知らされたのが、このスタジアムです」(キンちゃん)。

 すみれの産地でもあるトゥールーズ。香水、紅茶、お菓子など、すみれを使用した、様々な製品が作られているが、場内にもすみれ色があしらわれている。配色、構造、距離、これらがあいまって、良い雰囲気が醸し出されている。
「観客席とグラウンドが近く、選手と観客が一体感を感じることができるスタジアムです」(キンちゃん)。

熱戦の舞台となるスタジアム・ドゥ・トゥールーズ。©Rémi Deligeon
スタジアムで子どもたちのサイン攻めにあうキンちゃん

◆この人も大会をサポート

 組織員会が任命した、9人のディレクターと2人の特命責任者が任に当たっているが、そのうち4人が元選手で、トゥールーズ担当のセドリック・コルさんもその1人。2008年にフランス大学選抜の一員として来日し、三上正貴、伊藤鐘史、リーチ マイケル、山田章仁ら、後のW杯2015年組が名を連ねた日本選抜との試合に、FBとして出場している。
 インターンシップや社会的統合の推進など、様々なレガシープログラムが取り入れられる今大会。元選手を起用する人事からも、組織委員会の将来を見据えた戦略が垣間見えてくる。

2008年にフランス大学選抜の一員として来日したセドリック・コルさん

◆行政を挙げて日本人サポーターを歓迎!

 航空産業や自動車産業など、27の日本企業が進出するなど、日本との結びつきが強いオクシタニー地方。2007年大会に引き続き、トゥールーズがジャパンのベースキャンプ地に選定されたのは、偶然ではなく、熱心な誘致活動の賜物だ。2019年W杯大会の時点で、地域圏議長キャロル・デルガさん自ら日本を訪れるなど、非常に早い段階で行動を起こしてきた。

 オクシタニー地域圏副議長、スポーツ部門担当カメル・シブリさんは、日本歓迎の気持ちを、以下のように述べる。
「ようこそ、オクシタニーへ、トゥールーズへ。日本の皆さんをトゥールーズ、そしてオクシタニー地域圏へお迎えできることを、非常に光栄に感じていますオクシタニーは、フランスで最もラグビーが盛んな所です。また、日本代表と地元クラブのスタッドゥ・トゥールーザンには、ハンドリングラグビーという共通点があります。皆さんの滞在が素晴らしいものとなるよう、全力を尽くします」。

 ジャパンの2試合の会場にして、ベースキャンプ地でもあるトゥールーズ。ジャパンが多くの時間を過ごすこの街、日本から数多くのサポーターが訪れることが期待されている.

 さあ、行こう、フランス楕円球界の中枢、トゥールーズへ。

カメル・シブリさん。繰り返し日本を訪問してきた。©Atout France
ライトアップされたキャピトル広場

◆RWC2023トゥールーズ会場開催試合
9月10日 ジャパン×チリ
9月15日 ニュージーランド×ナミビア
9月23日 ジョージア×ポルトガル
9月28日 ジャパン×サモア
10月8日 フィジー×ポルトガル

◆取材協力
フランス観光開発機構 https://www.france.fr/ja
トゥールーズ観光局 https://www.toulouse-tourisme.com
オクシタニー地方観光局 https://www.tourisme-occitanie.com/
東芝ブレイブルーパス東京 https://www.bravelupus.com/



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