国内 2022.11.29

【金沢大学ラグビー部】もっとやれる。全国地区対抗大学大会出場を逃すも、挑み続けた80分

[ 編集部 ]
【金沢大学ラグビー部】もっとやれる。全国地区対抗大学大会出場を逃すも、挑み続けた80分
後半17分、金沢大はモールを押し込んだ後、NO8福島彩矢(右)がインゴールに駆け込んでトライ。(撮影/早浪章弘)
金沢大は、前へ出てプレッシャーをかけ続けた。(撮影/早浪章弘)



 毎年好勝負が繰り広げられている。
 一昨年は名城大と戦って22-22。抽選の結果、全国行きの切符を手にした。
 昨年は愛知学院大と12-13だった。

 全国地区対抗大学大会東海北陸地区代表決定戦は、ここ数年熱戦が続いている。
 2019年こそ名城大に7-87と大敗するも、翌年から好ゲームを続けているのが「キンダイ」だ。

 北陸の大学ラグビー界の雄・金沢大学は、親しみを込めて地元の人たちにそう呼ばれている国立大学だ。
 試合中、黒地の胸に赤ラインの選手たち自身から、「キンダイ!」の声が聞こえてくる。

 11月27日、パロマ瑞穂ラグビー場(愛知)でおこなわれた東海北陸地区代表決定戦にも金沢大は出場した。
 今年の相手は中部大(東海学生Aリーグ)だった。

 前半5分、金沢大は相手反則で得たPKで前進し、ラインアウトからモールを押し込む。トライラインを越えた。5-0と先制。
 リードを奪うと前へ出るディフェンスを続け、中部大に思うようにプレーさせなかった。

 LO増川晴斗(3年/福島・橘)の出足がいい。
 20分、ラインアウトからのサインプレーで攻める相手に対してジャッカルに成功したNO8福島彩矢(群馬・高崎)は大学院1年生だ。

 28分、2年生の山田颯真(愛知・名城大付)が詰めのディフェンスでトイメンに突き刺さる。ノックオンを誘った。
 大学院2年生の12番、丸山真広(石川・金沢二水)は幅広く動いた。左足からのキックで相手との蹴り合いにも負けない。
 一人ひとりが力を発揮した結果、リードを保ち続けた。

 35分にはスクラムからのムーヴでトライを許し、コンバージョンキックも決められて5-7。
 しかし、逆転された直後のリスタートのキックオフでFL本間晴人(1年/愛知・旭野)が好タックルで相手を押し出した。
 気持ちの入ったプレーは途切れなかった。

 2点ビハインドのまま後半が始まる。
 5分、中部大に大きく走られた時も途中出場の2年生、川口陽彩(静岡・清水東)が必死に戻って反則を誘った。
 10分にキックカウンターからトライ、ゴールを許して5-14と差を開かれるも、その10分後にはモールからトライを返す(Gも成功)。
 ふたたび2点差にして粘りを見せた(12-14)。

 後半30分にまたもキックカウンターからトライを許し、試合終了間際にはPGで失点。
 最終的には12-22と敗れた。しかし、80分のほとんどの時間を7点差以内で戦った。
 敗れたものの、サイズとパワーで上回る相手に立ち向かった。気持ちが伝わってくる80分だった。

 1949年創部。全国地区対抗大学大会への出場を年間の最大ターゲットに活動している。
 一昨年、抽選の末に全国地区対抗出場を果たしたのは、同部にとって27年ぶりのことだった。

 主将のSO土田琢真(4年/富山・砺波)は試合後、「悔しい」と第一声を発した。
「敵陣で戦い、相手のミスを誘って攻めようと思っていました。ボールを持つ時間もありましたが、ゴール前に行った時にトライを取り切れなかったのが痛かった」

 大学院生も合わせて部員は24人。トレーナー、マネージャーも合わせて31人の部だ。
 大学からラグビーを始めた部員も4割超。この日の試合登録人数は22人だけだった。

 キャプテンは、「メンバーが少ないことは言い訳にはできません。力不足」と自分たちにベクトルを向けた。
「苦しい時間帯にもっと頑張れた。ふっ、と抜けた瞬間にトライを取られてしまいました。全員のスキルと意識の統一が足りなかった」

 元法大監督の山本寛さんがトレーニングコーチとしてチームを支えてくれている。活動に携わってくれるOBたちの存在もありがたい。
 それでも基本は自主運営。「(強豪と比べれば)フィジカルで劣るところは、コミュニケーション、人と人とのつながりを大事にして対抗しようとしてきました」と話す。
 主将は大学院に進学し、このチームでプレーを続けるつもりだ。

 キックを巧みに使った12番の丸山は、2年前に全国大会へ出場した時にキャプテンを務めていた。
 その時は1回戦で大体大と戦い5-106と大敗した。「悔しかった。リベンジしたい」と決意し、大学院でもプレーすることにした。

 丸山はふたたび全国の舞台に立つことはできなかった。
 しかし6年間を振り返り、「やり切った。悔いはない」。所属学類は物質科学。研究に割く時間も多かったものの、文武両道を貫いた充実感はある。
 ラグビーを愛したまま卒業する幸せよ。電子部品メーカーで技術者として働きながら、地元クラブでプレーを続ける予定だ。

 チャレンジを続ける後輩たちにエールを送る。全国地区対抗に出るだけでなく優勝を目指し、高いところを見つめて日々を過ごしてほしい。
「人数も少なく、強いチームと試合する経験もなかなか積めないけど、もっとやれる。今日の試合も糧にして、頑張ってほしい」

 6年間情熱を注ぎ込んだ人の言葉には嘘がない。力がある。
 新チームのエナジーになる。同じ境遇にある全国の地方公立大学の励みになる。


PICK UP