ワールドカップ 2022.11.11

【RWC2021】因縁の対決再び! ブラックファーンズ2連覇&6度目の優勝に向けてイングランドに挑む!

[ 松尾智規 ]
【RWC2021】因縁の対決再び! ブラックファーンズ2連覇&6度目の優勝に向けてイングランドに挑む!
決勝前日の練習で最終調整するブラックファーンズ(Photo: Getty Images)


「その瞬間(最後の試合)を受け入れて、楽しみたいです」

 11月12日のラグビーワールドカップ2021(RWC2021/第9回女子大会)の決勝を最後に引退する34歳の大ベテランSHケンドラ・コックセッジが、感情をこめて語った。
 テストマッチ67キャップ(ニュージーランド女子で最多)、過去3大会出場したワールドカップで2度優勝経験をしている。レジェンド、コックセッジは、引退試合で有終の美を飾ることができるか。

 初の自国開催となったニュージーランド(以下、NZ)の女子代表“ブラックファーンズ”。準決勝のフランス代表との大激戦(25-24)を制して決勝まで上り詰めたことによりNZ国内は、更に盛り上がっている。

 準決勝直後に決勝のチケットを買い求める人が続出し、翌朝には完売、後日追加でチケットを販売するも数分で完売となった。これにより、開幕戦の3万5000人より多い4万2000人を超える観客がラグビーの聖地イーデンパークに集まることになる。

 ブラックファーンズの決勝の相手は準決勝でカナダ代表に26-19で勝利したイングランド代表。2大会連続同じカードとなった。

 なんと、この両チームはワールドカップで5度目の決勝対決になる。過去4度の対戦は、2002年:19-9、2006年:25-17、2010年:13-10、そして前回大会の2017年:41-32と、全てブラックファーンズが勝利して優勝を勝ち取っている。いずれも10点差以内の接戦で、まさに「因縁のバトル」と言えよう。

 イングランドは決勝を前に、練習中に“Fワード”が出るほど殺気立っているシーンが見られた。打倒ブラックファーンズの念いは大きいようだ。

 上記のデーターだけ見ているとブラックファーンズが有利に思える。
 しかし、昨年末の遠征でブラックファーンズはイングランドに2度も大敗している(12-43、15-56)。今回はイングランドの優勝を予想する声が多い。

NO8で先発することになったシャーメイン・マクメナミン。9月の日本戦でもプレーした(Photo: Getty Images)

◆ブラックファーンズのメンバー変更は1人のみ。注目のバックスリーは据え置きへ

 準決勝の前半で退いたNO8リアナ・ミカエレ・トゥウの親指のけがが癒えず決勝は欠場、ニュースでも大きく取り上げられた。その穴を埋めるのは、けがから復帰後、調子を上げている共同キャプテンのケネディー・サイモンが入る見方もあったが、30キャップを持つベテランのシャーメイン・マクメナミンが8番に抜擢された。 
 マクメナミンは、開幕戦で6番、プールステージのウエールズ戦でNO8で先発出場している。前回大会の優勝経験者でもあり心配は要らないだろう。変更はNO8のところだけで、その他はベンチも含めて変更はなし。

 注目されたバックスリーは、キッキングゲームに長けているイングランド相手と言うこともあり、スペシャリストのFBレニー・ホームズを準決勝に続いて15番に抜擢した。

 NO8に入ったマクメナミンをはじめ、先発メンバーに名前があるFLサラ・ヒリニ、SHコックセッジ、CTBテレサ・フィッツパトリック、CTBステイシー・フルーラー、WTBポーシャ・ウッドマンらが前回大会の決勝を経験している。この経験は決勝の大舞台でチームに大きな力を与えてくれるに違いない。

◆ブラックファーンズの勝利のカギは、FW戦

 現在テストマッチ30連勝中のイングランドに勝つことは容易ではない。
 なんと言っても、昨年の大敗の試合でセットピース(スクラム、ラインアウト)でイングランドにボロボロにやられ、全くゲームを組み立てることができなかった記憶が大きい。
 イングランドの安定感抜群のセットピース、そしてイングランドの得点源のひとつでもある、ラインアウトからのモール攻撃に対抗できるかを見極める必要がある。 

 次に、セットピース同様に大事になってくるのがブレイクダウン。
 イングランドFWのサイズは、準決勝で戦ったフランスよりも大きい。フィジカルバトルは更に厳しくなることは間違いない。ブラックファーンズは、準決勝でブレイクダウンで何度もボールを取られた。このブレイクダウンの修正なしには勝機は見えてこない。ボールキャリアーへの2人目の寄りが重要になってくる。とにかくFW戦がカギを握る。

 ブラックファーンズのBKに決定力があるだけに、FW戦が五分であれば十分勝機が見えてくるだろう。
 そして、準決勝同様に、後半からウェイン・スミスHCが動いて、ベンチにいるインパクトプレーヤーを投入するタイミングも注目される。

 FW陣のベンチに控えるPRクリスタル・マレーをはじめ、PRサント・タウマタ、HOルカ・コナーの3人はボールキャリーで前に出れる選手だ。BKでは、爆発力のあるWTBアイシャ・レティ・イイガがいる。これらの選手たちが、後半相手が疲れたところで投入してインパクトを与えられるか。

◆ブラックファーンズの敵は天候も
 
 ラグビーは天候でゲームプランが変わる。
 もし雨が降ったら、ボールが滑ることからパスで展開するより必然的にキックそしてFW戦が多くなる。すなわち、キッキングゲームに長け、強力FW率いるイングランドが圧倒的に有利となる。
 イングランドの準々決勝の試合は大雨だった。オーストラリア相手にイングランドは、スクラムをまっすぐ押してスクラムトライ、モール攻撃からも簡単に何度もトライを奪っている。
 速いテンポの展開ラグビーをするブラックファーンズには、天候も重要になってくる。
 あいにく当日の天気予報は良くない。変わりやすいオークランドの天気は、当日どうなるだろう。

 イングランドの2大会ぶり3度目の優勝か、それともブラックファーンズが2連覇&6度目の優勝を勝ち取るか。
 因縁の対決は、準決勝以上の激しいバトルとなるだろう。
 ブラックファーンズが欠点が見当たらないイングランド相手に、どんな戦いを見せてくれるかワクワクする。

ファイナルゲームに臨むケンドラ・コックセッジ(Photo: Getty Images)

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