国内 2022.11.08

トップイーストBで巻き起こる「桃太郎」旋風。第5節、CF山梨の大型FWでも止められず。

[ 鈴木正義 ]
トップイーストBで巻き起こる「桃太郎」旋風。第5節、CF山梨の大型FWでも止められず。
丸和運輸機関AZ-MOMOTARO'Sをけん引する主将の眞野拓也


 トップイーストB所属の「丸和運輸機関」は、企業名よりも「桃太郎便」という輸配送サービス名のほうがピンとくる読者も多いのではないだろうか。ちょっと可愛らしい桃太郎のマークのトラックをどこかで見かけたことがあるはずだ。
 その桃太郎便の丸和が「快走」を続けている。明治安田生命に敗れはしたものの、リーグ戦前半を終わって3勝1敗で勝ち点でも2位と、十分に優勝を狙える位置につけている。

 「100点満点で70点」とここまでの戦いを自己評価する内山将文ヘッドコーチは、「特にコンタクトのところで勝負できている」とみている。
 去る11月6日には第5節となるクリーンファイターズ山梨とのアウェー戦となった。第1節では45-7で丸和が快勝しているが、FW・BK共に大型の選手を揃えここ数試合勝利こそないものの状態が上向いている山梨との対戦は、まさにその「コンタクト勝負」が通用するかを問われる一戦となった。

 ここまで丸和の快進撃を象徴する選手がいる。フィナウ アモネ タイアラ・マカヴァハ(フィナ:トンガ-花園大)だ。好きな食べ物はたけのこご飯という一面も持つ187センチ、110キロのNO8は、第4節終了時で4トライとBグループの暫定トライ王だ。だがそのトライ王が前節の反則から出場停止となってしまった。
 「うちはキャプテン眞野拓也(京都産業大)を中心に。組織で戦ってゆく」という内山HCの言葉通り、序盤からエースの欠場の穴を感じさせない攻守でよいコンタクトを見せる。

 前半22分には同じトンガから花園大に進んだ同級生のシタレキ タウファ・マキシがCF山梨のディフェンス陣をパワーで切り裂いてトライ。
 27分には一転、父親もトップリーガーだったWTB栢本光(京都産業大)を走らせキックパスからの鮮やかなランでトライ。山梨もかなりの時間、敵陣で攻め続けるが、あと少しのところで丸和のディフェンスが立ちはだかりゴールラインを越えられない。結局前半は0-15で折り返す。

クリーンファイターズ山梨の初トライはミロ デビッド

 後半に入り、山梨の強力FW陣がようやく機能し始めゴールライン寸前にたびたび迫る。しかしそんな時に限ってノックオンが出てしまうなど、どうも山梨がここまでいい内容があっても勝ちを掴めないもどかしいパターンが出てしまう。それでも辛抱してフェーズを重ねると、後半13分、密集からようやくミロ デビッドが持ち込んで山梨はこの日初トライ。しかし20分にはすかさず丸和LO白川総哲(東海大)が同じように密集から持ち込んでトライ。

インゴールに突っ込む丸和運輸機関の白川総哲

 このあとも取られては取り返すという展開が続く。23分には山梨LO池田将大(天理大)がゴール前まで持ち込んだボールをオフロードパスでSO渡邊瞬(拓殖大)へつないでトライ。しかし直後の28分、丸和がモールを押し込んでこれがペナルティトライとなる。

オフロードパスからトライを決める山梨の渡邉瞬

 この後は山梨が敵陣でプレーする時間が長く続くが、ここも前半同様、丸和がトライまでは許さない。一進一退の展開のまま時計が進み、すでに40分を過ぎた頃、こぼれ球を拾った丸和の元ニュージーランド代表のベテランLOロス アイザックがトライ。ゴールも決まって12-36となったが、まだホイッスルは吹かれない。山梨は意地を見せるべくゴール前で何度となくフェーズを重ね、最後は丸和ディフェンス陣が密集に寄ったところを大きく展開し、NO8マパカイトロ パスカが意地のワントライを返した。42歳でありながら毎試合80分フル出場のベテランは、トンガ噴火救援募金の際も率先して街頭に立ったナイスガイだ。キックも決まり、19-36としたところでノーサイド。

 後半は得点でも19-21、トライ数も共に3本(丸和はうち1本はPT)と互角の戦い、前半の貯金を使って丸和が逃げ切った試合だったと言える。山梨としては後半のプレーが前半からできていれば、というところだが、そこは丸和・内山HCの評価する「コンタクトでの勝負」でそうさせなかったということだろう。

トライで存在感を示した丸和運輸機関のロス アイザック

 「優勝して上のリーグ(Aグループ)に昇格するためには、まだまだ成長しないといけない。リーグ戦の試合で一戦一戦成長している実感がある」。そう語るのは丸和キャプテンの眞野。チームの目標はBグループ優勝、そして入れ替え戦に勝ち、Aグループへの昇格だ。昨シーズンCグループだった丸和に勢いがあることは各チームわかってはいたが、ここまでBグループ各チームを苦しめることになった背景には、こうした試合の中で学んでゆけるチームの姿勢がありそうだ。今回の試合も、「体の大きい山梨の選手にどこまで通用するか、勉強のつもりで臨んだ」(内山HC)というように、またしても成長の手応えを掴んだようだ。

 丸和はこの後の対戦では、唯一黒星を喫している明治安田生命との試合も控える。試合を重ねるたびに成長する丸和だが、明治安田生命はやはり山梨同様にフィジカルも強いチーム。丸和が今回の山梨戦で明治安田生命戦へのヒントを得ていれば、結果が予想しづらい一戦になる。
 「桃太郎」の快走はいつまで続くのか、トップイーストBの後半戦もさらに熱い戦いになりそうだ。

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