「勝たないと評価されない」。稲垣啓太、今秋初戦で役割全うへ。
ラグビー日本代表の稲垣啓太が、戦列に戻った。復帰戦を前日に控え、練られた言い回しで意気込みを明かす。
「ひとりが変わって何かが変わるほど簡単ではないと思うのですが、自分の役割をどれだけの精度でできるか(を意識する)」
10月14日、大阪・ヨドコウ桜スタジアムでオーストラリアAとぶつかる。代表チームによる「JAPAN XV」の左PRで先発する。
チームは同カードへ1、8日にも臨んだが、いずれも終盤の失点が響いて2連敗。その間、稲垣は出場がなく、当時のコンディションを聞かれれば「答えづらいですね。…察してください」。秋の初勝利へ、責務を遂行する。
「試合に出られるということは、自分のコンディションが整ったということ。しっかり、結果を出したいです。全員が効果的に役割を果たせないと、結果は伴ってこない。いままでも皆の頑張りは凄かったと思いますが、大事な場面でのディテール、役割の遂行力にほころびが出た瞬間が、結果として現れた。自分の役割をまずしっかりやる。それを(グラウンドに立つ)15人で…とできればいいと思います」
テーマは「セイムページ」。フィールドに立つ選手が同じビジョンのもと動けるようにしたい。そのために、これまでの敗戦からも素直に学ぶ。
「試合をレビューした結果、『自分たちのなかで同じ画を見ていたと思っていたけど、FW、BKでそれが違っていた』という部分が確かにありました。ここに対して強がるのではなく、(改善点を)認めることが重要ですよね。できていると思っていたのに、できていなかった。それを受け入れることは選手ひとりひとりにとって難しい、苦しいことではある。(以前は)受け入れてなかった部分も、あったんでしょうね。ただ、いまはそこを乗り越えている。結果を出せる段階に入ってきていると思います」
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ率いる日本代表は、来秋のワールドカップフランス大会を最大のターゲットとする。その前哨戦として、この秋はニュージーランド代表などとのテストマッチも実施。現在おこなっている3連戦およびその事前合宿は、「ベースキャンプ」と位置づける。地固めに注力する。
しかし稲垣は「落としていい試合はひとつもない」。あくまで結果にこだわる。
「ベースキャンプ。自分たちもその意味合いを理解しています。ただ、負けていいということは絶対にない。勝たないと応援してくれる人に評価されないですし、誰も見てくれない。チームのやりたいことはうまくできているとは思います。進むべき方向、プランニングをスタッフがしっかり示してくれていて、僕はそこを100パーセント、信頼している。あとは、そこで選手が結果を残すだけです」
ワールドカップ2大会出場の左PRのカムバックを受け、HOの坂手淳史主将も「グラウンドで違いを見せてくれる。いつも通りにプレーしてくれれば頼りになる」。チームで定めた通りに「(プレーおよび組織的な判断の)正確性」を高めるのを第一義としながら、白星を掴みたいと語る。