大東大が劇的勝利で好調・東洋大を下す! ラストワンプレーの逆転PGで今季初白星。
大東大に先にPGで追加点を許すも、後半に強い東洋大が徐々に本領を発揮。「後半は強みにしているので、ボールをたくさん動かしてどんどん攻めていこう」という福永昇三監督のプランどおり、テンポアップした球出しからスピードのある杉本海斗、モーリス・マークスの両WTBを中心に勢いのあるアタックが機能し始め、ディフェンスも前に出て体を当て、大東大のアタックの足を止めた。
そして19分、相手陣ゴール前ラインアウトからモールを押し込み、変わったばかりのPR小川雄大が左隅にトライ挙げると、徐々に流れは東洋大に。29分にはFWとBKがつないでゴール前に迫ると、最後はタテに走り込んだNO8梅村がもぐって連続得点を挙げた。
こうなると試合の流れは東洋大ペース。大東大は東洋大のスピードのあるアタックのまえに完全に受けに回り、34分には東洋大が自陣ラインアウトからディフェンスのギャップを突いてWTB杉本がスピードに乗って抜け出し、FB石本拓巳につないで中央にトライ、ゴールも決まって19-24と追い上げた。
「後半10分くらいから敵陣でプレーする時間が多くなり、その辺から流れが作れたのかなと思います。後半は本来の自分たちのラグビーができるようになりました」(齋藤主将)
さらに勢いに乗る東洋大は、中盤ラックからSH神田悠作が抜け出し、CTB大島につないでゴール前まで迫る。後半40分過ぎからは大東大をゴール前にくぎ付けにし、PKを得るとゴール前のスクラムを選択。「スクラムが自分たちの強みだと思っているので、自分だけでなくFW全員がここで絶対取って逆転するんだという気持ちで臨みました」(齋藤主将)
そしてスクラムを一気に押し込みNO8梅村がボールをインゴールで抑え、WTB杉本のゴールも決まった。東洋大が連続4トライでついに逆転に成功した。開幕から2連勝、好調の東洋大を象徴するような鮮やかな逆転だった。
しかし、ドラマはここで終わらなかった。
大東大のキックオフで試合が再開、10メートルライン付近に高く上がったボールをLOサイモン・ヴニランギがキャッチ、大東大がボールをキープし攻め続け、最後はゴール正面30メートル付近で東洋大のノットロールアウェイの反則を誘った。
PGが決まれば大東大の逆転。外れれば東洋大の勝利。勝負の行方はこの日すべてのキックを決めて好調のCTB戸野部の右足に託された。
「場面的には去年の同志社の試合(大学選手権4回戦。終了間際に大東大がトライで2点差に迫り、コンバージョンキックが決まればトライ数で大東大が準々決勝に進出だったが、右端からのゴールは決まらず大東大は敗退)と似ていたんですけど、チームメイトも“思いっきり蹴れ”とアドバイスしてくれて、蹴りやすかったです」(戸野部)
そして思い切り振り抜かれた戸野部の右足から蹴りだされたボールは、ゴールポストの真ん中に吸い込まれていった。
ゴール成功の笛に続いてノーサイドの笛。グラウンド中央には抱き合って喜ぶグリーンのジャージーの輪ができた。
「勝つことがこんなに難しい物なのかと痛感しています。最後まで諦めずに頑張ってくれた選手たちに感謝したいと思います」と大東大・日下唯志監督は選手たちを称えた。
前半にケガでピッチを離れた青木主将も「しんどい時間帯は80分の中で絶対にある。みんなで我慢して、独走されてもみんなが帰ってギリギリのところで倒す場面もあったので、そういうところでみんな気持ちは切れてなかった。選手ひとり一人がリーダーになって声を掛け合って戦っていたので不安はなかったです」と後半の苦しい時間帯を振り返った。
チームは開幕から2連敗。選手が中心になってミーティングを開き、自分たちの目指すところを再確認して東洋大戦に臨んだ。青木主将は「法政、流経と負けて、これから一戦一戦大事にしよう話し合い、チーム全員のそういう気持ちが今日80分間グラウンドで発揮されたんじゃないかと思う。目指すところは大学選手権なので、この勝利をしっかり次につなげたい」と価値ある勝利を総括した。
一方、一度は24点差まで離されたが、後半は自分たちの持ち味をいかんなく発揮し試合をひっくり返した東洋大。最後の最後で逆転を許し開幕3連勝とはならなかったが、試合後、福永昇三監督は「残念な結果になりましたが、リーグ戦なのでこういった敗戦が経験になり、チームが一回りも二回りも成長できればなと思っています」と悔しさをにじませつつ選手への期待を口にした。「我々はあくまでチャレンジャーの身。何も恐れず、前を見て一つひとつ丁寧に進めていきたいと思っています」。
齋藤主将も「今日の試合は率直に悔しいですけど、僕たちの目標である日本一というのは簡単に獲れないものなんだなと改めて感じました。だからこそ価値のある目標だと思います。これからもシーズンは続くので、この負けを自分たちの成長に生かしていきたいと思います」としっかり前を見据えていた。