国内 2022.10.02

勝利を引き寄せた2本のタックル。安井拓馬[立命館大/FB]、選手権出場への決意。

[ 明石尚之 ]
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勝利を引き寄せた2本のタックル。安井拓馬[立命館大/FB]、選手権出場への決意。
ディフェンスも持ち味だが、少しでも前に出るボールキャリーも魅力(写真中央/撮影:早浪章弘)
試合終了間際、必死のバッキングで相手を捕らえた(撮影:早浪章弘)

 ラストイヤーの開幕戦、わずか13分の出場で流れを変えた。

 立命館大の安井拓馬は、同志社大を相手に迎えた関西リーグの初戦でリザーブ入りする。出番は後半27分に訪れた。
 19-15と逆転に成功した直後のタイミングで、左WTBのルーキー、御池蓮二に代わりピッチに入る。鬼束竜太HCは4年生のディフェンスリーダーに逃げ切りを託した。

 果たして安井は2度のビッグタックルを決めて、指揮官の起用に応える。無失点に抑えて開幕戦を勝利で飾ったのだ。

 1本目は後半35分頃。パスを受けた直後のFB大森広太郎に強烈なタックルをお見舞いした。両足をがっしりと掴み、向こうに返す。ノックオンを誘った。

「狙ってました。大森くんと外側にもう一人いたと思うけど、こちらもFBの吉本(匠希)くんが(外側に)上がってくれたので、僕もしっかり前に上がれてプレッシャーをかけられました」

 2本目は試合終了間際だった。今度は数的不利の状況で、まさにピンチを救う。一度は飛び出していたが、相手の大外への飛ばしパスに反応。トップスピードで戻り、ライン際を駆ける選手を背後から止めた。

「(相手が)1枚余ってる状況でした。ですが、しっかり前に出てプレッシャーをかけることで、外に放る時にどうしてもボールは浮く(到達時間が遅くなる)。外にスペースはできたけど、しっかりバッキングで帰って止めるところまで考えられてました」

 いずれも予想通りに仕留められた会心の出来だったわけだ。試合前のジャージー渡しでも、仲間に対して「流れを変える」と宣言していた。有言実行だった。

 1年時から主力だった安井がこの日、リザーブに回ったのはケガ明けで復帰してまもなかったから。関西大学春季トーナメントの初戦(対IPU環太平洋大)で左膝半月板を負傷していた。すぐさま手術を受け、復帰したのは8月末だった。

「(同志社戦は)ぶっつけ本番でした。不安もありましたが、選ばれたからには少しでも役割を果たそうと」

 チームは今季、ディフェンスの強化に一番注力してきた。同志社戦も安井のタックルをはじめ、複数人がジャッカルを決めるなど、好守の連発が勝因だった。

 ブレイクダウン、タックルの質が向上した実感がある。1人目の強さ、2人目の反応、寄りの速さなど、細部までこだわってきた。

 練習でディフェンスに割く時間こそ、昨季と大きく変わらないが、「佐藤さんが来て、ディフェンスの考え方が浸透してきた」と安井は言う。
 鬼束HCは今季から元同志社大HCの佐藤貴志氏を招へいし、ディフェンス強化を任せている。安井も複数人いるDFリーダーのひとりとして、佐藤コーチとコミュニケーションを重ねてきた。

「自分たちが考える機会をくれたことが、成長につながってます。選手同士で日頃のミーティングや練習から発信できていました」

 京都・藤森中でラグビーを始めた。先輩の松木勇斗(現横浜E)がいたこともあり東海大仰星へ。
 2年時は長田智希主将(現埼玉WK)がチームを率いて日本一を成すも、3年時は全国の舞台にすら立てなかった。花園予選の決勝で常翔学園に7ー54と完敗だった。

 この悔しさを糧にして、立命大では1年時から先発機会を多く得た。
「自分の代だけ花園に出られなかった。花園で何もできなかったという悔しさがあり、1年生からどうしても出たいと」

 そして4年前同様、チームの最上級生となったいま「結果」に強くこだわる。
「4回(生)になったので、後輩たちに残せるものは何かというのは考えました。僕が入学してから大学選手権に一度も出られてない。だから絶対に大学選手権に出て、結果を残す結果を出さないと過程も見られません」

 プレーでチームを引っ張りたい。3年前のキャプテンだった片岡涼亮(現花園L)と自分を重ねる。1年生の時、ミスを恐れていた自分によく声をかけてくれた恩人のひとりだ。
「片岡さんは『自分はキャプテンのキャラではないけど、なったからにはチームを引っ張らないといけない。だから自分はプレーで示す』と言ってました。自分もそう(いうタイプ)だなと。リザーブには1回生が多いですけど、彼らにプレーで見せたいと思います」

 10月2日の第2節、安井は背番号15で先発に復帰する。
「強い相手なので気合入ってます。次もしっかりディフェンスします」

 対する天理大には出場した3年間で、一度も勝ったことがない。
 4年ぶりの大学選手権出場に向けては大事な一戦。勝利にはもう一度、安井のビッグタックルが必要だ。

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