ハマーさん[サンウルブズ初代HC]は現在、母校・セントトーマスカレッジで指導者に。「日本の若者を待っています」
現在の日本代表の第一歩となったのは、サンウルブズのスーパーラグビー参入だ。
その2016年、初年度の同チームの指揮(ヘッドコーチ)を執ったのがマーク・ハメットさんだ。ハマーさんの愛称で知られる同氏は現在、母校・セントトーマスカレッジのラグビー部門の成長に尽力している。
ディレクター・オブ・ハイパフォーマンス&ウェルビーイングの役職に就いている。
国内をはじめ、日本や世界各国からやって来た、ラグビーに夢を見る若者たちのサポートに力を注ぐ。
同校はニュージーランドの南島、クライストチャーチにある(空港から10分ほど)。
コロナ禍の影響で海外からの留学生は少なくなっていたが、多くの顔が戻ってきた。
それに合わせ、新たなラグビープログラムの展開も始まった。
それがチームに与える影響の大きさは明らかで、チームはこれまで上位に進出したことがなかった地域の大会で4強入りという好成績を残した。
セントトーマスのラグビープログラムの特徴は、同プログラムが学校のカリキュラムに組み込まれていることだ。
13歳から18歳の500人が学ぶ同校。その数は他校に比べて少ないけれど躍進した。プログラムの影響力が伝わる。
学校の時間割に練習が組み込まれてラグビーに触れる時間が大きく増えた。
2時間枠も週に2回あり、例えば月曜日の3、4時間目、水曜の5、6時間目がラグビープログラムなら、木曜日の放課後の練習時間も加えると相当な時間が確保される。
提供内容もバラエティーに富んでいる。戦術やスキル、メンタルスキルを学べるほか、アナリストがスポーツコードというソフトを使ってゲーム分析。知識は増える。
フルタイムのS&Cコーチもいて、アカデミック科目のサポートをする教員もいる。日本人スタッフの存在も心強い。
これらは留学生だけのものではない。S&Cに興味のある生徒、通訳を目指す生徒、コーチングを学びたい生徒など、現地の在学生にも提供していく予定だ。
2月から11月までが、留学生に提供される基本的な期間ではあるが、ラグビーシーズンの6か月(3月から8月中旬まで)、3か月や2週間という短期での留学も受け入れる。
ハマーさんは、ラグビープログラムの提供内容の考案,指導の中心。
また、学校には優秀なコーチ陣がいるから、質の高いプログラムを受けることができる。
「プログラムに参加して、選手として成長してほしい。人として成長してほしい。ニュージーランドの文化の違いやハカを学ぶこと、友人を作るとことも大切なことだと思っています」とハマーさんは話す。
「クライストチャーチは、私のホームタウンです。私は、高校、カンタベリー代表、クルセイダーズと、すべて地元のチームでプレーしてきました。この街は、日本の人たちに気に入ってもらえると思っています。文化こそ違いますが、この街の人は勤勉で謙虚。日本の人たちと似ていますから」
ハマーさんの指導は丁寧だ。サンウルブズの指揮を執ったときにシャイな日本選手と交流したことは、いまも役立つ。
「私という人間を理解してもらい、一人ひとりと人間関係を構築することで、お互いを信じられるようになると、その瞬間にシャイではなくなります」
ハマーさん自身、多くの指導者に影響を受けて成長の階段を昇り、オールブラックスに辿り着いた人だから、コーチングの重要性を知っている。「私はたくさんの素晴らしい指導者に会えて、とても幸運でした」と笑顔を見せる。
「高校時代はフランス人のコーチにハードワークの大切さを教えてもらいました。その後、ウェイン・スミス、ロビー・ディーンズ、スティーブ・ハンセンなど、多くの指導者からたくさんのことを学びました。クルセイダーズから多くの指導者が輩出されているのは、優れた指導者の歴史があるからでしょう」
そんな場所で青春時代を過ごしたら、一人ひとりの頭の中にある成長のロードマップも現実味を増すに違いない。
学校には白人にマオリ、アイランダー、アジアの若者たちが学び、国際色豊か。ラグビー部でも、白人、マオリ、アイランダー系、日本の選手がプレーしている。
現地在学生と留学生がともに活動し、それぞれが自分に合ったグレードで活動できる。
高校チームには4チームあり、1軍の留学生の枠は2枠(それ以外のチームには規定なし)。
仲間との競争は人生の宝になるだろう。