国内 2022.09.09

春の「悩み」を乗り越えて。早大・相良昌彦主将が重視する献身。

[ 向 風見也 ]
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春の「悩み」を乗り越えて。早大・相良昌彦主将が重視する献身。
夏合宿時の練習試合でボールキャリーする相良昌彦(撮影:福島宏治)


 主将だから苦しんだ。

 全国大学選手権で史上最多となる16度の優勝を誇る早大ラグビー部では、今季の船頭役を相良昌彦が務めていた。

 系属の早稲田実業高でも主将を務め、全国大会出場を叶えた相良は、高校よりも規模の大きな組織を束ねるのに難儀してきた。

「悩みは、多かったです」

 5月からの春季大会では、帝京大に26-52、東海大に29-38で敗れた。この時期は、スタッフが示した年間強化計画の関係上、防御システムの練習をしないまま試合に臨んでいた。背景がスコアに現れた。

 受難の時期だった。

「僕たち選手はうまくいっていないこと(防御)をすぐに治したい気持ちになりましたが、(首脳陣は)この時期、身体を作るという考えでした」

 試合で出た課題は、練習メニューに反映するより選手間での話し合いで改善することになっていた。相良は主将という立場上、チームで共有されたプラン、部員の内なる焦燥感との間に挟まれた。

 もっとも夏の菅平合宿に入れば、予定された通りに攻防のシステムをアップデート。取材に応じた8月19日の段階で、進化の途上にあると実感できているようだった。

「この1週間はディフェンスの練習を。それをこれからの試合で…という感じです」

 直後に組まれた帝京大との練習試合では、28-35と春よりも点差を詰められた。

 前年度の学生王者でもある帝京大は、加盟する関東大学対抗戦Aでも激突する相手。さらに全国の覇権争いでも最大のライバルとなる。相良は彼我の差をシビアに見る。

「帝京大はよくコミュニケーションを取っているいいチーム。(春季大会時の)ウォーミングアップを見ていると、セービング(ルーズボールの処理)の練習をしていた。細かい部分をしっかりしている点は、うちも見習わなきゃいけないです」

 重責を担うことは、悪いことばかりではない。有言実行の習慣がついた。

 チーム始動時、選手たちに「当たり前のプレーを要求し合いたい」と話していた。

 こぼれ球に反応する。突破を決めた味方をすぐに援護する。仲間が抜かれたらその穴をカバーする。そうした「当たり前」とされる無形のファインプレーを大切にすると宣言した以上、それを自らが遂行しなければならないと強く思うようになった。

 果たして夏合宿中の練習試合では、自陣ゴール前で相手のトライを防ぐシーンを作っていた。

「自分が一番やらないと(言葉に)説得力が生まれない。そこが一番、プレー面で変わったところかなと」

 身長180センチ、体重99キロでFW第3列に入る相良は、かねて粘りと泥臭さを信条としていた。

 早大OBで前監督の南海夫氏を父に持つ。その影響がある。

 息子は話の流れで、自身が重んじる献身的な動きを「それ」という指示語に込める。

「父には昔から『それ』だけはやれと言われてきていて、『それ』が一番、大切な部分だと思うし、『それ』がチームに一番、足りていないことだったとも感じます。去年は、『それ』が課題に挙がったのがシーズン中盤の11月になってからでした(大学選手権は準々決勝で敗退)。ただ今年は、シーズンの初めから『それ』を意識してやりたいと思ったんです。いまは結構、浸透してはいます」

 関東大学対抗戦Aは9月10日、各地で開幕。早大は同日、東京・駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で青学大とぶつかる。相良は8番をつける。信じた道を進む。

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