女子 2022.08.13

たったひとりの山口ラガール。和田陽子[山口高校/LO・PR]

[ 明石尚之 ]
たったひとりの山口ラガール。和田陽子[山口高校/LO・PR]
ヘッドキャップも石見智翠館のものを被り出場(撮影:福地和男)

「たぶん自分だけだと思います」

 山口高校の3年生、和田陽子はおそらく山口県内で唯一の高校生ラガールだ。

「去年は1学年上に他校の先輩がいたのですが、コロナの関係でセレクションにはいませんでした」

 和田の言うセレクションとは、コベルコカップの中国ブロックのメンバーを決める選考会のこと。コベルコカップは今年、7月29日から31日に3年ぶりに開催された。

 中国の選抜メンバーは和田以外全員、石見智翠館の選手だった。
「去年もオッペン(カップ)に一緒に出たり、(中止になる前まで)コベルコに向けた合宿もやっていたので、馴染めてるとは思います。今回でより打ち解けられたかな」

 コロナ禍の影響で、和田だけでなく多くの高校生ラガールが、このコベルコカップが初の15人制の試合だった。
 和田はフィジカルの強さを買われ、右PRやLOに入る。5試合中3試合に出場。力強いゲインを見せ、スクラムも押した。

「女子だけの15人制が初めてなので、めちゃくちゃ楽しいです。なかなかない経験でした。いつも男子とやっているので自分の力が通用しないときもあるけど、女子(が相手)だと結構いけるので嬉しいなと(笑)」

 ラグビーは幼稚園の時から始めた。ラグビーマガジン10月号に掲載される、女子名鑑のアンケートに書いたラグビーを始めた理由は「母にラグビースクールにいれられた」から。
 母・崇子さんは内科の開業医。山口県の下松(くだまつ)にある「さんふらわあクリニック」の院長だ。関西協会の医務委員も長く務めているから、ラグビーは身近な存在だった。

 5歳から周南ラグビースクールに通い、中学は山口ジュニアラガーズに在籍。中学3年の妹・慶子も同じ道をいく。
 姉はそのまま高校でも競技を続けることを選んだ。

「ラグビーがそもそも好きというか、ヒットするのが楽しくて」

 進学した山口高校では、2020年に創部90周年を迎えたラグビー部で初の女子部員になった。男子部員は2016年度に64年ぶりに花園(96回大会)に出場している。
 和田は普段、男子部員に混ざって同じ強度で練習をおこなう。あるメニューだけ抜けたり、分けたりということは一切しない。

「完全に一緒です。だって女子一人ですから。(コンタクトとか)気を遣える連中ではなかったですね、うちの男子は。アハハ」

 部員は3学年で20人程度。和田の同期は12人と半分を占める。仲が良いから、彼らの話になるとジョークも交じる。
 交流試合や練習試合にも何度か一緒に出場できた。

「普通にFLとかで出ます。それなりにできるんです。山口県はそんなに強くないんで(笑)」

 ラグビーは高校で最後と決めている。最後に花園の舞台に立ちたい。コロナ禍で2年間おこなわれていないけれど、「U18花園女子15人制」の出場を目指す。

「高校でも続けるとなったときは、(出られる公式戦が)花園のエキシビションマッチしか知らなかった。今年はなんとか出たいですね」

 コロナのせいで試合機会には恵まれなかったけれど、終わりよければすべてよしと言えるラグビー人生でありたい。

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