日本代表 2022.07.30

2017年ワールドカップ組、進化を勝利で示す。FL長田いろは、CTB山本実の覚悟

[ 編集部 ]
2017年ワールドカップ組、進化を勝利で示す。FL長田いろは、CTB山本実の覚悟
FL長田いろは(左)とCTBを務める山本実。23歳と26歳。(撮影/松本かおり)



 ワールドカップ(以下、W杯)への準備を進めるサクラフィフティーン。10月に開幕するその大舞台で輝くため、チームは急ピッチでスタイルの確立やディフェンス強化、コンビネーションの確認などを試合、練習の中で重ねている。

 7月24日の南アフリカとの第1テストマッチ(釜石)には15-6と競り勝った。
 同30日に熊谷でおこなわれる第2テストマッチにも勝ち、さらに自信を深めたいところだ。

 第2テストに出場するFL長田いろは(アルカス熊谷)、SO山本実(みのり/三重パールズ)は、ともに2017年にアイルランドで開催された前回W杯への出場も経験しているメンバーだ。
 それぞれ13キャップ、18キャップを持つ。

 長田は第1テストで7番を背負って先発、後半29分までハードワークを繰り返した。
 本人は「(南アフリカは)フィジカルが強く、タックルを弾かれるところもあった。肩を当て、バインドをしても引きずられた。ボールキャリーの強さ、速さ。一人ひとりの能力が高かった」と初戦を振り返る。

 ただ、「個人的には満足いくパフォーマンスではありませんでしたが、組織ディフェンスでそこをカバーできていたと思います」と、チーム力の高まりを感じたようだ。

 自身は2017年のW杯当時、CTBだった。その後FWへ転向して体作りに励み、体重も増やした。
 5年前の経験を思い出し、「世界との差を感じた大会でした」と話す。
「(若かったし)相手の強さを、ただ感じた印象です。でも、そこから経験を重ねました。いまは相手に関係なく、自分と、自分たちがやるべきことにフォーカスできるようになりました」

 現在のサクラフィフティーンについて、「全員が発言したり、意見を持つことを大事にしているチーム。レスリーさん(マッケンジー ヘッドコーチ。以下、レスリーHC)は、自分の考えを強く持ちながらも、選手の意見を採り入れてくれる芯の通った人」と話す。
 長田自身はリーダーなど役職はないが、「ハードなプレーでチームにモメンタム(勢い)を与えるようなプレーをしたい」と誓う。

 第2テストに12番を背負って先発する山本は、第1テストでは後半14分からピッチに入り、勝利に貢献した。
 戦況を読んでキックを使うなど、経験豊富なところを見せた。

 昨夏に渡英した。英プレミアシップのウスター・ウォリアーズでのシーズンを過ごした後、今回のサクラフィフティーンでの活動に参加している。
 ウスターでは試合出場を重ね、12番で起用されたこともあれば、SOで出場した後、試合途中から12番に移ることもあったという。

 そんな経験があるからインサイドCTBでプレーすることに不安はない。しかし、169センチ、72キロと、決して大きくない。相手のハードランナーが突っ込んでくることは多い。
「それに負けないように体を張ります。(首脳陣に)テストされているとも思うので、絶対に止める」と気合いを入れる。

 10番の大塚朱紗と並んで相手と対峙する。
 司令塔が隣り合うことに関し、「ゲームメーカーが並ぶメリットを出したい」と話す。
「例えばペナルティキックを蹴っていない方がラインアウトリーダーとコミュニケーションをとって(次の展開に備えるなど)、円滑に回していきたいですね」

 3歳年下のライバルのことを、「とても落ち着いたゲーム運びを見せる選手。心強い。尊敬しています」とリスペクトする。
 高いレベルでの競争が、それぞれを進化させる。

 海外でのプレー経験は自身を大きくしてくれた。
 その力は南アフリカとの初戦でも出た。「ゲームのモメンタムを読んで大切な判断をしていく。前回の試合では後半から出て、それをうまく出せたと思います」と自己分析する。

 ウスターでは日本人選手は一人だった。そんな状況に語学力も高まった。
 帰国後、サクラフィフティーンに加わって自身の変化に気づく。レスリーHCやルイース・ダルグリーシュ アシスタントコーチの言葉が以前より直接頭に入る。
「コーチが話す単語の意味を解釈することで、伝えたいことを、より深く理解できるようになりました」

 レフリーとのコミュニケーション力も高まっている。
「ウスターでは最初、試合中に言いたいことも言えませんでしたが、試合後にもう一度考えたり、教わったりしました。(レフリーには)『サー』と呼び掛けるとスムーズにいくと分かったのも、学びのひとつです」

 南アフリカとの第1テストでは前半をベンチから見つめ、もっとスペースを攻めた方が、FWもチームも楽に前に出られると気づいた。
 後半、自分がピッチに出ると実行。勝利に貢献できた。
 熊谷の戦いでも、チームを前に出す力に期待がかかる。

 勝利を重ねるチームについて、「一つひとつが偶然じゃない。ディテールを突き詰めています。一人ひとりが、その状況がなぜ起こったのか答えられるようになっています。詳細にこだわっている」

 仲間への信頼感は、チーム力が高まる過程に不可欠なものだ。
 パワー全開で向かってくる相手に連勝し、さらなるエナジーを産みたい。


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