ウルグアイ代表戦の価値がわかるのはもっと先? 日本代表の肉声。
わかりやすい構図だった。
これまで約3週間の宮崎合宿をおこなってきたラグビー日本代表は、ウルグアイ代表と今夏初戦を実施。この相手は1週間前、自分たちの予備軍に屈していた。
かような前提条件が、43-7というスコアの背景にぴったりと符合したのだ。
14-0で迎えた前半の終わり頃、反則を重ねて長らく自陣に押し込まれた。ただ、失点は免れた。そもそも肉弾戦で優勢だったことで、見た目上は難なく急場をしのげた。
ハーフタイム直前にはハーフ線付近右で防御網を押し上げ、向こうがこぼしたボールをインサイドCTBの梶村祐介、WTBのゲラード・ファンデンヒーファーが順次、キック。相方のディラン・ライリーが弾道を追い、仕留めた。19-0。
攻守に奮闘のライリーは殊勝に述べる。
「彼らは先週、負けていてボールを動かしてくるのはわかっていた。できる限りのすべてをして相手を止めようとしました」
ほぼ勝負のついていた後半29分、この日好守連発の左PR、稲垣啓太がイエローカードを受ける。ハイタックルとの判定だ。
ただし以後の10分間を、7失点で抑えた。人員を15人に戻していたラストワンプレーの場面では、自陣ゴール前で耐えきった。
後半22分から登場した36歳、HOの堀江翔太は、冗談を交えて「久々の試合で…。ひとり少ない状態でディフェンスをしていて、大変やな、と思ったくらいです」と話す。稲垣は「すいません」と首を垂れる。
「相手の選手にも申し訳ないことをしましたし、チームにも迷惑をかけた」
裏を返せば、自分たちの首を絞めながらも締め落とされるまでには至らなかった。この夏からジョン・ミッチェル コーチが教える防御の肝は、ラインの一箇所を一気にせり上げてのタックル、機を見ての2人がかりでのジャッカルだ。
さかのぼって前半9分には、ハーフ線付近で稲垣が刺さる。リーチ マイケル、ベン・ガンターの両FLが絡む。ペナルティを誘い、5点あったリードを8点に広げる。この日いくつかあったモデルケースの一例となった。
HOの坂手淳史は「いい形で速くセットし、前に出ることはできた。コミュニケーションンを高めればもっと脅威になる」。終盤には接点周辺の穴を射抜かれる局面もあったが、ライリーは動じない。
「常に完ぺきではないのでミスが起こることもある。どうプレッシャーをかけられるかを見直し、改善したいです」
スペースへのキックを軸にした攻めも、概ね堅調だった。もっとも、攻め込んでからのミスが得点機会と総得点のギャップを生んだか。現体制下での初戦となるリザーブ組が投じられてからも、反則で流れを止めることがあった。
リーチは後半4分頃、約3年7か月ぶりの代表戦となる梶村とのパス交換で落球。攻めの勢いを断っていた。全体を前向きに総括しながら、反省も忘れない。
「(チームで)やろうとしたことが見られた。連続ペナルティとイージーなミス。そこを修正すれば、もっと日本代表のラグビーができると思います」
翌週に控える対フランス代表2連戦、さらに2023年のワールドカップ・フランス大会に向けての収穫と課題は。
ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは「ここが自分たちのスターティングポイント」とし、こう続ける。
「相手は1週間前から試合をして臨んできていました。それに対して私たちは各チームから選手が集まってきて、短い準備期間でこの試合に臨んだ。新しい選手との新しいコンビネーション(がかみ合わず)、最後の20分で自分たちがうまくできなかったことがあったのは小さな改善点です。とりあえずは来週のことを考える。その先は考えていません」
中長期的な視野で見れば、この一戦が頂上決戦でないのは確か。海沿いのスタジアムで過ごした時間の意味や価値は、今後の結果次第でいかようにも変わる。