日本代表 2022.06.06

車いすラグビー日本代表 地元カナダに敗れるも4勝1敗で決勝進出!(2022 Canada Cup)

[ 張 理恵 ]
車いすラグビー日本代表 地元カナダに敗れるも4勝1敗で決勝進出!(2022 Canada Cup)
オーストラリアのライリー・バットと競る島川慎一(撮影:張 理恵)


 世界トップランキングのチームが集う車いすラグビーの国際大会「2022 Canada Cup」は4日(現地時間)、予選ラウンド最終日を迎え、ここまで3戦全勝の日本(世界ランキング2位)はライバルのオーストラリア(同4位)、そして日本と同じく3勝のカナダ(同6位)との2試合に臨んだ。

 午前10時ティップオフの1試合目。
 日本を迎え撃つのは、ロンドン、リオとパラリンピック2連覇を果たし、東京2020大会では史上初の3連覇を目指したオーストラリア(※ 東京パラリンピック当時、世界ランキング1位)。
 オーストラリアは新型コロナのパンデミックによる国内の厳しい行動制限により、東京パラリンピックまでの1年半の期間、代表合宿をおこなえたのはわずか2回。メンバーの体調不良も重なり4大会ぶりにメダルを逃す結果となった。
 このままでは終われないと、オーストラリア代表キャプテンを務める世界No.1プレーヤー、ライリー・バットは引退を撤回、グリーンとゴールドのユニフォームを再び着る決断をした。

 試合は、日本の激しいプレッシャーからスタートした。
 車いすラグビーには攻撃側は12秒以内にフロントコートにボールを運ばなければならないというルールがあるが、センターライン手前のエリア(バックコート)で日本はオーストラリアの攻撃を押さえこみバイオレーションを誘う。

 これまでの3試合より確実に強度は増しているが、日本の堅い守備でリードが続く。
 それでも、2重、3重と日本ディフェンスを突破し、緩急を使い分け、時には片輪でトライを奪うのがライリーというプレーヤー。
 前半にオーストラリアが挙げた得点のほとんどがライリーのトライによるものだ。

 25-28で迎えた後半、オーストラリアはライリー以外にボールを集める。
 一方、日本のプレーに目を向けると、チーム最長の出場時間でディフェンスを支えるハードワーカー・長谷川勇基の姿。どんなラインナップにもフィットさせ、チーム最年長の島川慎一にも物怖じせず意見をする。
 「東京パラリンピックを経験してコミュニケーションの重要さを知った」と長谷川。
 島川も「年齢や経験に関係なく、遠慮せずにお互いに思ったことを言い合える関係性が大事」だと語り、そういうコミュニケーションがチーム内でできているからこそ、自身の入るラインナップに伸びしろを感じているという。

 その長谷川、島川が組むラインでスタートした最終ピリオド。
 日本は立て続けにターンオーバーを奪い、一挙に10得点を重ね42-58で試合終了。
 4連勝で予選ラウンド最終戦への弾みをつけた。

橋本勝也(撮影:張 理恵)

 午後6時。この日2試合目に対戦するのは、同じく全勝のカナダ。
 土曜日の夜とあって会場にはカナダチームを応援しようと多くの地元ファンが駆けつけた。

 試合開始早々、日本の「らしくない」ミスがベンチに緊張感を走らせた。
 積み上げてきた自分たちのラグビーを見失いつつあったところに、ケビン・オアー ヘッドコーチ(HC)の檄が飛ぶ。
 その間にもカナダは冷静に得点を重ね、日本が追いかける展開に。
 開始から2分半、日本はメンバーチェンジをおこない、チーム最年少・橋本勝也のアグレッシブなプレーで息を吹き返し、ようやくテンポを取り戻す。
 しかし、スペースをぬってクールにするりとトライするエースのザック・マデルや熟練したローポインターを擁するカナダが主導権を握る。

 オアーHCは2012年のロンドン、2016年のリオパラリンピックではカナダ代表のHCを務め、ロンドン大会では銀メダルを獲得した。
 10代だったザック・マデルを世界トップレベルの選手にまで成長させるなど、カナダHC時代の教え子、言わば“オアー・チルドレン”も今回のメンバーに多く含まれている。
 ゆえに、彼らは日本がやろうとしているプレーを自身の経験からお見通しなのだ。
 「世界のどのチームにも勝てるほど強いラインナップ」とオアーHCが認めるラインナップに、日本は苦戦を強いられる。

 20-25の5点ビハインドで試合を折り返すも、カナダのスピードは落ちることがない。
 日本はローポインターも積極的にトライに絡み、ボールプレッシャーをかけターンオーバーをとるも、カナダのハイポインターの高さやスピードへの対応に追われ、49-53で試合終了。
 日本は4勝1敗で予選2位。この結果により翌日の決勝進出が決定し、予選ラウンド5戦全勝のカナダと再び対戦する。

 この大会で初めての敗戦も、試合後の円陣で聞かれたのはポジティブな発言。
「ここからどう修正すればいいのか、負けた経験をどう生かすのか。学ぶチャンスだ」

 日本の照準は、あくまでも今年10月の世界選手権連覇。
 代表歴の長い今井友明は「負けて学ぶことは勝ちより多い。当然(今大会の)優勝は目指しているが、どれだけこの1日で修正できたか、今日より明日の結果がどれだけ優れているかという、内容の部分にこだわっていきたい。世界選手権という大きな舞台でより良い結果を出せるよう、次につながる試合にしたい」と意気込みを語った。

 日本とカナダ、両者ともに勝った方がCanada Cupでの初タイトルを手にする。
 地元カナダが初優勝を果たすのか、はたまた日本のリベンジなるか。
 決勝は、現地時間の5日、午後1時ティップオフだ。

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