日本代表 2022.06.04

【車いすラグビー日本代表】パラリンピック後初の国際大会(2022 Canada Cup)で白星発進!

[ 張 理恵 ]
【車いすラグビー日本代表】パラリンピック後初の国際大会(2022 Canada Cup)で白星発進!
車いすラグビー日本代表のキャプテンを務める経験豊富な池透暢(撮影:張 理恵)


 カナダ・バンクーバーに隣接するリッチモンドで6月2日(現地時間)に開幕した車いすラグビーの国際大会「2022 Canada Cup」。
 会場のリッチモンド・オリンピック・オーバルには日本を含む世界ランキング上位の6か国(*)が集結し、昨年の東京パラリンピックを彷彿とさせるハイレベルな戦いが繰り広げられている。
 6月2日から4日まで全チーム総当たりの予選ラウンドをおこない、予選ラウンドの順位をもとに最終日に決勝と3位決定戦がおこなわれる。

*現・世界ランキング1位のアメリカが出場を辞退(チーム内に新型コロナ陽性者がでたため)し、当初予定していた7か国から6か国に変更。

 東京2020大会で銅メダルを獲得した車いすラグビー日本代表にとっては、パラリンピック以降初の国際大会となり、2019年9月のアジア・オセアニア選手権(韓国)から実に2年9か月ぶりの海外遠征となった。
 今年10月に開催される世界選手権での連覇を目標に掲げる日本は、今大会を経験の浅い若手選手の強化の場と位置付けており、初の日本代表入りを果たした壁谷知茂と白川楓也を含む3選手が東京パラリンピックメンバーから替わって出場している。

壁谷知茂(撮影:張 理恵)

 大会初日の2日におこなわれた日本の初戦、対するは東京パラリンピック予選ラウンドで対戦したデンマークだった。
 パワーとスピードのあるハイポインター(比較的障がいの軽い選手)が揃い、近年めきめきと成長を遂げているチームだ。

 日本は長時間の移動による疲労こそあったものの、初戦の硬さは見られず、アグレッシブなジャパンラグビーを展開する。
 池透暢、池崎大輔、今井友明、小川仁士。ハイポインターとローポインター(障がいの重い選手)の組み合わせによる“ハイローライン”と呼ばれるラインナップでスタート。
 コート内の4人がコミュニケーションをとりターンオーバーを重ねながらじわじわリードを広げる。
 ベンチからの「プレッシャー!!」という声に押され、粘り強いディフェンスが相手のトライラインを遠ざける。

 オフェンスでは池、池崎が得点を重ねるなかローポインターの小川がスペースに走り、みずからトライ。パワーとスピードが持ち味の小川だが、「東京パラリンピックに出場して(自身の)スキルの低さを実感した」と語る。
 2024年のパリパラリンピック出場を目指し、東京大会以降は、車いすの“漕ぎ出し”に磨きをかけてきた。トップスピードにより早く到達し、攻守において積極的に絡んでいく考えだ。
 フィジカルで上回る海外選手を相手に手応えを感じたことで「自分らしいプレーができた」と自信をのぞかせた。

小川仁士(撮影:張 理恵)

 2点リードで迎えた第2ピリオド。今大会出場の全選手のうち最年少・20歳の橋本勝也がパワー全開でコートを駆け回る。デンマークのハイポインターにも走り負けしないスピードに加え、池崎への鮮やかなロングパスが光った。
 そして、ハイポインター陣を献身的に支えるのは、今井、長谷川勇基の頭脳プレーだ。

 前半残り12秒、日本ボール。
 最後のトライをさせまいと池崎に相手の厳しいマークがつく。コーナーから池が投げ入れたボールをフリーになった乗松聖矢が冷静にキャッチして後ろ向きにトライ。息の合った連係プレーで点差を5点に広げ、33-28で試合を折り返した。

 後半、日本はメンバーチェンジを繰り返し、日本のリズムに持ち込む。
 車いすラグビーでは選手交替の回数に制限がなく、交替のタイミングや、交替でコート上4人の組み合わせを変えることで戦略や試合の流れを変えることが可能となる。
 ケビン・オアー ヘッドコーチの采配が冴えわたる。
 メンバーチェンジを巧みにおこない、相手が日本のディフェンスに対応する前にリズムを変え、システムを変え、ミスを誘いターンオーバーを奪ってリードを広げた。

 そして第4ピリオドでは、白川がコートに送り出された。
 同じクラブチームに所属する池からのボールを受け取った白川が風を切ってトライ。日本代表での初トライに、ベンチから仲間を祝福する大きな拍手が送られた。
 日本はメンバー12名全員が出場し61-53で勝利を収め、初戦を白星で飾った。

 キャプテンの池は「(移動の疲れで)体の動きはよくなかったが、メンバーチェンジを繰り返すことで自分たちの強みを出しながらリズムを作ることができた。強化合宿で取り組んできたディフェンスを出すことに集中して臨むことができたので、コミュニケーションをとりながらディフェンスをより完成形に近づけていきたい」と試合を振り返った。

 大会2日目の3日、日本は、東京パラリンピックで金メダルを獲得したイギリス、そして今年2月のヨーロッパ選手権でそのイギリスを破り優勝したフランスとの2試合に臨む。

白川楓也(撮影:張 理恵)

<2022 Canada Cup 日本代表出場メンバー>
倉橋 香衣 Kurahashi Kae
長谷川 勇基 Hasegawa Yuki
今井 友明 Imai Tomoaki 
小川 仁士 Ogawa Hitoshi 
乗松 聖矢 Norimatsu Seiya  
壁谷 知茂 Kabetani Tomoshige 
菅野 元揮 Sugano Motoki 
白川 楓也 Shirakawa Fuya
池 透暢 Ike Yukinobu 
池崎 大輔 Ikezaki Daisuke 
島川 慎一 Shimakawa Shinichi
橋本 勝也 Hashimoto Katsuya

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