コラム 2022.06.01
【ラグリパWest】好きな道を歩む。江藤友紀 [九州龍谷短期大学]

【ラグリパWest】好きな道を歩む。江藤友紀 [九州龍谷短期大学]

[ 鎮 勝也 ]



 辞退の決断を聞いた時、吉瀬も無理強いはしなかった。監督より、教員が顔をのぞかす。大西に謝りの電話を入れる。大西もまた大学教授だった。報告を受け入れた。

 トモノリが保育士に憧れたのは母・智美の存在が大きい。母もまたこれを天職とする。
「同じ園に通っていました。子供の目からもおかあさんは楽しそうに映りました」
 なによりトモノリ自身、子供が好きだった。
「無邪気な分、本音を言います。そこがかわいい。それに、少し教えたら悪いところが直ります」

 短大での学びは3年目に入った。この修学年数を選んだのは理由がある。
「奨学金を受けず、自分で稼いだお金で学費を払うことができます。2年よりゆっくりできて、授業を分散して入れられます。だから、アルバイトができます」

 学費は造園会社で稼ぐ。中学を卒業する頃からお世話になっている。週4日ほど働かせてもらう。時給で換算すると1000円以上はもらっている。会社は自宅から自転車で20分ほどのところにある。トモノリは運転免許を未取得である。雨が降れば社長が車で迎えに来てくれる。よい職場である。

 トモノリは植生のことも詳しくなった。住まう浮羽地区とその周辺は農業が盛んだ。米や麦はもちろん、みかん、梨、柿、ぶどう、栗など果物も多く産する。
「果物は甘みを増すために接ぎ木をします。でも、それをすると土の栄養が吸い取られます。なので、次の年は米を植えて、もう一度栄養を蓄えます」
 この業種でも即戦力でいける。

 ラグビーを続けていたらどうなっていたか、と考えることはある。京産大は昨年度の大学選手権で8回目の4強入り。10回目の優勝をする帝京を30−37と追い詰めた。
「やっていたら、自分はそれに少しは関われていたかもしれません。まあでも、この選択でよかったと思っています」

 来春には念願の保育士になり、保育園での勤務が始まる。
「子供の気持ちが理解できて、一緒に成長できる先生になりたいと思っています。子供はまだ自分の気持ちを言葉で伝えられません。そういう子たちに手を差し伸べ、ひとりひとりの個性を尊重してあげたいです」

 今でも時間があれば母校に顔を出す。130キロは後輩たちの格好の練習台になる。ラグビーは趣味程度。それもまた人生である。先々もこの選択が正しかった、と思えるような人生を歩いて行く。


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