勝ちたい気持ちを強く。佐藤明善氏が変えた横河武蔵野アトラスターズのラグビー精神
佐藤氏は華麗なラグビー歴の持ち主だ。
代表歴は、U23、日本代表A、日本選抜、7人制日本代表。1993年全国高校大会優勝(相模台工)、1997年関東大学リーグ戦2部・優勝(山梨学院大)、1997年東日本社会人リーグ優勝(三洋電機)、2003年アジア4ケ国対抗優勝(日本選抜)、2007年トップイースト11優勝(横河電機)と、各カテゴリーで優勝メンバーになっている。
それぞれの優勝決定戦の日、佐藤氏の中にあったのは『勝ちたい』という強い気持ちだけ。アドレナリンでスイッチが入って興奮状態になり、円陣で誰が何を言ったかさえ全く覚えていないそうだ。
優勝したチームの成分になっていたのは、本気のハードワーク。
「どの優勝チームも、個々のメンバーが本気でハードワークしていた。全員が優勝という一つの目標に向かっているからまとまりがあって、信頼し合って団結していた」
なおかつ優勝した年に居合わせたメンバーには、ケミストリーを感じたという。
「個々の才能が化学反応を起こして強くなるようなイメージです。やっていくうちに、『このメンバーなら行ける』っていう感覚がありましたね」
山梨学院大3年時、関東学生代表に選ばれた。関東大学リーグ2部から呼ばれたのは1人だけだった。そこで得た感触を持ち帰り、1部との差は思っているほど大きくないとメンバーに伝えた。
「マインドチェンジが起きたんですね。『だから俺たちは絶対に1部に行ける』となって、翌年優勝できて1部に初めて昇格しました」
2007年にも同じことが起きた。
「三洋電機から横河に移籍した当時、選手の補強もしっかりするし、レベルの高い選手がいたし、しかも一生懸命だったので勝算があると感じました。『みんなならトップリーグに行ける』と話しました」
佐藤氏のラグビー精神は、トップイースト界だけでなく、若い世代にも広く受け入れられた。
日本代表として国際大会出場の経験を持つ佐藤氏の手法が、将来の日本トップクラスや世界で活躍する候補生の育成を目指す、ジュニアクラスの基本スキルの向上に用いる方法論に極めて有効だったからだ。
横河武蔵野スポーツクラブが運営する『ラグビーアカデミー』で、中学生を対象にコーチを務めている。
「ラグビーアカデミーは、ラグビーが好きで、楽しくラグビーをしたい、学びたい子供たちに、ラグビーができる場を提供するためにあります。ただ、僕自身が一番強調したいのは、ラグビーを通じて自分の可能性を広げ、人間力を磨く場所だということ。基本スキル向上を目指し、どのカテゴリーでも必要とされる基礎トレーニングに注力し、拘りをもって指導しています。アトラスターズJr.アカデミーから日本を代表する選手が出たら嬉しいです」
横河武蔵野の練習計画は髙島大地ヘッドコーチ、佐藤&小笠原和徳FWコーチ、松村表BKコーチが中心となって立案し、深堀敏也監督の許可を得て実施という流れになる。
練習の目的、具体案がしっかり検討されていないと、コーチたちもオーバーワークせざるを得ない。選手だけでなく、スタッフにも緊張感を伴うハードワークが求められる。
今年の秋に開催される2022年のリーグ戦で、横河武蔵野がどんな戦いを見せるか。
そこにもまた、佐藤氏の影響を見ることができるだろう。
※詳しいチーム情報は横河武蔵野アトラスターズ公式ホームページでご確認ください。