国内 2022.05.10

試合直前中止の経緯説明。リーグワン緊急会見。ブラックラムズは勝ち点5で入替戦回避

[ 編集部 ]
試合直前中止の経緯説明。リーグワン緊急会見。ブラックラムズは勝ち点5で入替戦回避
試合が行われる予定だった秩父宮ラグビー場。写真は別日撮影(撮影:松本かおり)

 リーグワンが5月9日18時に、オンラインで緊急記者会見を開いた。
 7日に開催予定だったNTTドコモレッドハリケーンズ大阪vsブラックラムズ東京の試合が、当日直前の中止となった経緯について説明。また、ブラックラムズ東京の勝ち点を「5」、NTTドコモレッドハリケーンズ大阪の勝ち点を「0」とすることも発表した。
 これにより10位のブラックラムズは9位のシャイニングアークス東京ベイ浦安と順位が入れ替わり、入替戦を回避。シャイニングアークスが2週後から始まる三菱重工相模原ダイナボアーズとの入替戦に進む。

 リリースや会見の中で東海林一専務理事は、「RH大阪、BR東京はあらかじめ定めたガイドラインに則り、検査・報告を実施しており、不明部分はリーグと協議して進めていた」と両チームに非はないことを説明した上で、「試合実行、中止判断の変更、中止判断の遅延の責任はリーグにある。新型コロナウイルス感染症の発生状況が多様化し、状況によって新たな対応が必要となる中、決定に至るまでのリーグのオペレーション、判断が後手に回り、直前での中止判断となってしまった。ファン、関係者、チーム・選手の皆さまに、多大なご迷惑をお掛けしましたことを、リーグとして心よりお詫びを申し上げます」と陳謝した。

 リーグワンのリリースで発表された、試合直前中止の経緯をもとにした下記の時系列に、東海林専務理事が質疑応答内で説明した追加事項やRH大阪、BR東京の関係者らに取材した話を加えた。

◎試合直前に中止となった経緯

●5月2日(月)
RH大阪は選手、スタッフ全員にPCR検査を実施。13人が陽性と発覚。リーグへ報告。*検査機関は、医療機関連携がないリーグ推奨の検査機関(検査①)

●5月3日(火)
保健所への報告のため、医療機関連携のある検査機関で13人の陽性者を対象に再検査を実施。7人が陰性と判定される。結果を踏まえて、再検査で陰性となったが体調不良等のある3人を含め、チームドクターが9人を陽性者に認定(検査②)。

【定時検査の考え方】
❶多くのチームは、医療機関連携がないリーグ推奨の検査機関での定時検査を1回のみ行う。それに基づき、チームドクターが判断する。

一方、RH大阪のように医療機関連携がないリーグ推奨の検査機関での検査(検査①)と保健所への報告のため、医療機関連携のある検査機関で再検査(検査②)を組み合わせて実施する定時検査は過去にもあった。これはチームドクターが感染症に対して直接的に判断するまでの知見・専門性を持っていない、またはドクター自身が判断しない方が良いと考えるケースだ。
1回目から医療機関連携のある検査機関で検査を行わないのは、その検査機関が大勢の人を一度に処理できない時間的な制約や費用面での課題があったから。今回はゴールデンウイーク期間というのも重なり、早くに結果の出る検査①を行った。

このプロセスは新型コロナウイルス感染症ガイドラインにこそ定めていないが、ガイドラインの主旨に則り、RH大阪がリーグに確認し、リーグも承認していた。

リーグとして検査結果の差異は、検査方法・環境の差異より生じていると認識
※しかし、検査①と検査②の検査結果に差異があったのをリーグが認識したのは今回のケースが初めてで、その場合の取り扱いに明確な事前定義をリーグはしていなかった。

⇒東海林専務理事は、「保健所の認定とドクターの判断を尊重していたこともありますが、このプロセスの見直しが後手に回った。事例がない状況が生じた時点で、その背景や取り決めを早期にやるべきでした。そこがコミュニケーション不足。もしかしたら、ここの時点で中止のアナウンスができたかもしれないし、陽性となった13人を早く隔離して別の選手で試合をすると言うオプションを選択できたかもしれない」と説明。

●5月5日(木)12時前
リーグとRH大阪は協議の上、検査①と検査②の差異は「通常ではない」と判断し、4人の陰性者に対して追加的な検査を実施。1人が陽性、3人が陰性となった。陰性となった3人はリーグも承認した上で5日、6日の練習に制限なしで参加した。
同時に他26人の選手に対しても追加的な検査を実施。全員陰性。*検査機関は検査①、検査②と異なる機関

●5月5日(木)12時
29人の陰性者で試合登録人数が充足することを確認し、リーグが試合実施を判断。

●5月5日(木)17時過ぎ
リーグがBR東京からの問題提起を受領。

⇒一度、検査①で陽性になった4人が検査②で陰性となったことから陰性として扱われたことについて、リスクがある方を選択しているとBR東京は問題提起。「差が生じている時は、13人の方(多い方)を陽性として優先させるべきではないかという提議でした」(東海林専務理事)。
さらに3回目の検査で陽性となった1人は「陽性→②陰性→③陽性」となり、毎回検査結果が異なる状況から、「陽性→②陰性→③陰性」だった3人についても安全上の疑念は深まった。
そうしたことからBR東京は安全性を担保するため、「4度目の検査をしてはどうか」と提案。東海林専務理事はRH大阪側とも議論したが、再検査をしてまた結果が異なった場合、その検査結果の解釈をして開催可否について適切な決断を下すまでの時間はないと最終的には判断した(判断は5月6日)。

●5月6日(金)午前および午後
上記BR東京からの問題提起も踏まえ、リーグが安全性に対するより慎重にプロセスの検証を実施。その際、RH大阪およびBR東京に事実関係を確認。ただし、東海林専務理事がこの問題をしっかりと把握し、検討したのは夕刻だった。

●5月6日(金)20時
RH大阪にBR東京からの問題提起並びに論点を連絡。

●5月6日(金)20時30分から22時
リーグとBR東京で、論点について議論。中止の可能性を提示。

●5月6日(金)22時
リーグとRH大阪で、論点について議論。中止の可能性を提示。

●5月6日(金)23時過ぎ
リーグ運営責任者(東海林専務理事)およびマッチコミッショナーにて中止に係る協議を行い、両チームの確認をもって中止することを確認。

⇒議論の結果、他試合と同様の安全性を担保するためには、検査①での陽性者13人を全て陽性認定し、隔離対象とすべきであったと、リーグが当初の判断を変更した。東海林専務理事は「検査①→検査②の差異が起こったことを許容してしまった部分がある。ここに判断ミスがあった。もう一度リスクについて考えた場合、その差異には一定のリスクが含まれていると、判断をあらためた」と説明。
ただすでに「陽性→②陰性→③陰性」となった3人がチーム練習に合流していたため、RH大阪における試合参加予定の選手が陰性であること、安全であることが、他試合と同様の水準で合理的に担保されなくなったと、リーグが判断した。
そして、リーグとしてRH大阪に他ケースと同様の安全性(陰性)を確保した上での、必要な登録者人数の確保が難しいと判断するに至った。

●5月7日(土)6時30分
主管者であるBR東京と協議。中止を仮決定。RH大阪との協議結果に基づき本決定する旨を合意。

●5月7日(土)8時30分
RH大阪と協議。中止理由を説明。規則に基づくものとして了解を得る。9時30分をもって、中止決定が確定した。

⇒発表を前日までにできなかったのは、「前日23時過ぎに仮結論は出したが、問題が急に出て、チーム側とも急な話し合いとなったために、翌朝に再度合意形成をしてから最終決定という流れになってしまった」と東海林専務理事は説明。

●5月7日(土)9時30分から10時30分
RH大阪チームへの事情説明。

●5月7日(土)11時過ぎ
試合会場で、リーグ、BR東京およびRH大阪より、試合中止に係る告知を開始。

●5月7日(土)11時50分
中止決定のプレス発表。10時30分以降、中止の理由を正しく伝えるための内容をリーグとRH大阪、リーグとBR東京で協議した結果、同時刻で発表となった。

 東海林専務理事は「リーグの判断が遅れ、3人の陽性疑いのある選手がチーム練習に参加していた環境を作ったのはリーグの責任」とした一方で、勝ち点における帰責は「キックオフ予定時間の100分前までに試合登録に必要な選手が揃わなかった」NTTドコモレッドハリケーンズ大阪にあるとし、ブラックラムズ東京に勝ち点5が与えられた(NTTドコモレッドハリケーンズ大阪は0)。

 これは公式戦実施要項・第4条に、「エントリーを充足しないチームについては理由の如何を問わず、責に帰すべき事由があるものとみなす」とあるからだ。レッドハリケーンズにとっては到底納得のいかない結論だが、東海林専務理事は「一定の期間内で結論を出して前に進んでいかなければならない時、立ち戻るのはルールしかないのが現実です。納得できないのは重々承知した上で今回の判断に至りました。運営上のルールとはいえ、申し訳ないと思っております」と話した。

 再試合の可能性についても検討を図ったが、スケジュール調整の難しさやスタジアム確保の困難性、一部海外選手の帰国など、7日のコンディションとは大きな差があるとして実現しなかった。

 またリーグワンは今後、すでに来場していたファンの交通費を補填するなど、チームと相談しながら「可能な限り経済的な面での責任を果たしていく」としている。 

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